第10話
「何故、俺に任せなかった」
僕がやらなければならなかった。なんて、そんなことを言っても、先生は認めてくれない。彼は、酷く怒っていた。当然だ、僕は再び罪を重ねてしまったのだから。せっかく、先生が止めてくれたのにだ。あの時、先生は僕に次は無いと言った。
屋上は夜空が近くて、今日は雲一つ無い晴天、星が幾つも見える。夜風が心地好い。これは人を殺している時とは違う心地で、好きだ。そこで僕は今、先生と話をしている。会社帰りで連れ出されたんだろう、ビジネススーツ姿のまま、鞄すらその手に提げていた。そして一緒に、鞘に納められた剣が一つ。
抗う力は残っているかな、僕は杖代わりの自前の剣を捨てて、健在である鬼童の剣を右手に持ち上げた。そして先生も、鞘からその剣を抜いてくれた。もうどうしようもない。けれど先生は最後に僕と本気で向き合ってくれた。
「
最期に相応しい戦いだ。先生は一度も僕を殺そうとはしなかった。先生を殺そうとした時でさえ。けれど今は違う。剣を向けて僕は目の前の死へと向かう。他の誰のものでも無い、僕の死へ。
あやめ。嗚呼、愛しいあやめ。もし、もしまた君と出会えたなら、その時は――。
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