第90話 「

~Q&Aのコーナー~


Q.フルルーツって何なの?

A.伝説の祖龍ミラルーツ装備一式で固めた状態。特に強くはない。


Q.伝説って?

A.あぁ!




   *




「行くよ、つなぎちゃん!

そして全ての世界を私の色に、オレンジに染め上げる!」


「くっ……このままでは不味いですね。

防いでみせます!俺やばいぜバリアー!!」


林檎の被り物を被ってみかんジュース化を防ぐ つなぎ。

激しい戦闘の最中さなか、異変に人一倍敏感なアノンが違和感を覚えた。


「あれ?リンさんが林檎でつなぎさんがみかんだったと思うんですが」



逆だったかもしれねェ…


――って感じの流れでふざけた理由の戦闘を終わらせて元の世界に帰る方法探さない?」


聡明な読者の皆様はお気付きだろう。

サブタイトルからここまで全てリンの台詞だったのである。

何を言っているのかわからねーと思うがこっちも何を言ってるのかわからねーから大丈夫だ!



「飽きてきたんですね、わかります」


「いやー、飽きてはないんだけどね?

次元の歪みが大きくなってるから帰れなくなる前にどうにかしとかないと、って思ってね」


「リンさんが呼び出したんですから帰すのは簡単なのでは?」


「最初は私もそう思ってたんだけどねぇ……試してみても整備士のつなぎちゃんが帰って行っただけだったよ。

オイナリちゃん、どんなことでも良いから何か異変が起こってるとか知らない?」


油断していたところに突然話を振られたオイナリサマは慌てて答えた。


「えっ……そうですね、特に変わった様子は――いえ、一つ気掛かりなことがありましたね。

先日火山のフィルターが弱まっていた時期がありました。何者かの手によって石板の位置が入れ替えられていたようで、それが関係しているかもしれません」


真剣な面持ちのオイナリサマがそう告げるや否や何かを思い出したような表情を浮かべるリン。

小さく「ヤバッ」と洩らしたことを聞き逃さなかったアミメキリン達はコッソリと相談を始めた。


「怪しいわね、貴女はどう思う?」


「今回に関しては間違いなく黒ね」


「何が黒なんですか?リンさんの下着なら白でしたよ。赤いリボンが付いてる子供っぽい感じの」


顔を近付けて話していた二人の間からニュッと現れるつなぎ。

合体した際に分かったと思われるリンの下着の色に関する情報を提供して行った。


閑話休題今さらそんな情報が何だと言うんだ!。現在の情報で最も有力な壊世コラボの原因はフーフーと口笛を吹いている(吹けてない)リンである。


「思い当たる節があるようですね、リン」


「えっ、まぁ、その……ねぇ?人事異動ってあるよね。

同じ方角ばっかり守護してたら癒着とかあるかもだし?配置転換をね……?」


「そんな理由でパークの危機を招くようなことを?」


ゴゴゴッ という効果音が聞こえて来そうな程の引き攣った笑顔のオイナリサマ。

残念でもなければ当然の結果である。


「いや、先の事もちゃんと考えてたよ?

危ないかもしれないけど、その先には素敵な出会いが待ってるんだって分かってたから、これで良いんだって思ったんだ」


「リンさん……流石にこの状況から良い話っぽく持って行くのは無理があると思います」


「だろうね。こうなる事は占いで分かってたよ。

こうなったら仕方ないね、林檎のお告げキィーック!!」


とりあえずオイナリサマを倒して二人を元の世界に帰し何事もなかったかの様に振る舞えばなんとかなる、と考えたリンは強行策に走る。

手に持っていた林檎を抱きかかえ、助走をつけ地面を強く踏み切って飛び蹴りを放つ――いわゆるドロップキックである。

林檎の必要性だとか別の誰かの持ちネタけものミラクルだとかツッコミどころは少なからずあるだろう。

しかし、前者はともかく後者はフリーダム芸人であるリンにとって何の問題にもならない。

強力なドロップキックがオイナリサマに直撃――ガシッ――しなかった。


「「四神に手を出したのは失敗だったわね。この事件の犯人は守護けもの探偵のアミメキリンが成敗するわ!!」」


何かパワーアップしたアミメキリン達に防がれたのだ。

四方を司る四神と中央を司る麒麟は切っても切れない関係である。当然その麒麟とアミメキリンは全くの別物であるが。

しかし、誤認される事も珍しくなく、ヒトの認識を反映するサンドスターの性質上こういった現象が起こってもおかしくない。

そして何より、誤認においてアミメキリンに勝る者はそう多くないのだ。プラシーボ効果ってスゲー!!



「あっ、これ詰んだパターンじゃない?」


けも級がアップしたアミメキリン二人と守護けものであるオイナリサマ、最強フォームである みかんフォームのつなぎ、全員同時に相手にするのはあまりにも分が悪すぎると悟ったリン。

ちなみにだが、アノンは攻撃力が皆無なのでこの際戦力として数える必要はない。



「これだけは使いたくなかったけど、仕方ないね。

最終奥義・猛虎落地勢!!」



猛虎落地勢とは、猛々しい虎が崖から落ちた痛みに耐える姿から編み出された古くから伝わる奥義である。

両膝を地につけたまま両手の平で三角を作り地面に置く。そしてそこに顔を近付けるように身を投げ出す。

これぞ相手の怒りを受け流す究極の構え――要するに土下座である!

ただの土下座といえど今この場においてこれ以上有効なものはない。

予想もつかない行動にオイナリサマは怯んでしまった。

その隙を見逃すはずもなくリンの追撃が入る。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

良い子にしますから、ご飯も貰えなくても文句言いませんから……痛く、しないで……」


泣き顔のリンという貴重なシーン。

これによりオイナリサマが虐待しているかのような雰囲気が生まれる。完全にリンの狙い通りである。


「何ですかこの空気は!?虐待も何もリンの保護者になった覚えはありませんよ!

というか貴女、自分が何千年生きていると思っているのですか!?」


「記憶が共有できてるだけで私自身は生まれてそんなに経ってないし……

さっきから怒鳴ってばっかりオイナリちゃんこわい!助けて、つなぎお姉ちゃん!!」


つなぎの後ろに身を隠し、肩越しにオイナリサマの様子を伺っている。


「もう大丈夫ですよ。お姉さんに任せてください!」


お姉ちゃんと呼ばれた途端に目を輝かせたつなぎ。実にノリノリである。

その様子を見た三人は「チョロいわね」「テンションがおかしいのはいつものことよ」「つなぎさんが楽しそうで何よりです」と、それぞれが無責任な感想を呟いていた。我関せずの精神も時として必要なのだろう。


この後「世界中のいなり寿司をみかんジュースに変えられたくなければ妹に手を出すな(超意訳)」という交渉おどしによってこの場は収まった。みかんフォームは最強なんだから!


こうしてみかんフォームの圧倒的強さを見せつけたつなぎ達が元の世界に戻るのは次回更新分に持ち越しとなったとさ、めでたしめでたし――









いや、めでたくはないな

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