第83話 自由な少女と幻想獣③

前回のあらすじ!

異世界に迷い込んでしまった少年のコウ。

聞けばここには自分以外の男は居ないという……

本能から子孫を残さんとする数々の美女達に求愛されるコウであったが、その中で唯一、気の置けない関係で居られる超絶美少女・リンに心惹かれていく。

キュウビキツネの手解きを受けている彼は夜のテクニックを武器に彼女を射止めようとするが……?




「なんだこのあらすじ……」


「え?コウさん、急に何言ってるんですか?」


「サプライズがあったから混乱しちゃったんだよね、コウちゃん?」


「は?これは俺がおかしい感じ?あらすじは見えてないていでいくのか?

あーそーゆーことね、完全に理解した」←わかってない


「まあまあ、そんな痛いところを突いてくるあらすじなんかより誕生日パーティーを楽しんでいってよ、ね?」

「あ゛?」

「うん?」


二人が夫婦漫才を繰り広げている間、アノンとオイナリサマは「息ピッタリですね!」「あれは阿吽の呼吸と言うよりは――……」などと話し合っていた。



なお、あまりにも二人の漫才が長かったため、アノン特製忖度御膳(※)を口に押し込むことで強制終了させた。


※じゃぱりまんの食べ過ぎを気にする人向けのヘルシーメニュー忖度≒空気を読む、空気=カロリーゼロ(強引)

ゴマ風味のスクランブルエッグは絶品であり、アノンがゴマすりザコバードたる所以でもある。



「……モグモグ。うん、やっぱりおいしいな」


「ありがとうございます!

ところでコウさん、今日で元の世界に帰ってしまうんですよね……良かったらこれを持って行ってください」


「そういえば帰る方法は分かってるんだっけ。

ありがとう、大事に使わせて貰うよ」


丁寧に作られた耳かきを受けとる。

梵天の部分がアノンの羽と同じ柄であることから手作りであることが分かる。

それに気付いたコウは「羽、抜くの結構痛いのに俺のために……」と呟いたが、実際は引き抜かずにちょっと切っただけなので痛くはない。……というかアノンが痛いことをするわけがなかった。でも好感度は爆上げ、流石アノンちゃん!


「私からはこれを」


以前より高級そうな飴を差し出す。

その銘柄はヴェルタース オイナリサマ。

何故なら彼もまた、特別な存在だからです。


「ありがとうございます、よく味わいます」


「私からは勾玉あげたばっかりだし特に何も用意してないから無しで!……と言いたいところだけど、これあげる」


そこら辺に落ちていた石を拾って差し出すリン。


「それはいらない」ポイッ


「期待通りの反応ありがとね!これでオチがついたよ。

でもそれと同じこと、ジェーンちゃんには絶対やっちゃダメだからね?」



ん?どういうことだ?ジェーンさんに限ってそんな嫌がらせみたいなプレゼントしてこないでしょ(フラグ)


「さて、そろそろ元の世界に帰る道も用意できた頃合いかな。

なんかゴメンね?アノンちゃんが何か渡したいって言ってたから誕生日を口実にしちゃって。

コウちゃんにとって誕生日が良い思い出ばっかりじゃないんだってことはなんとなく知ってるけど、これからは楽しい思い出を作っていけるよ。もしそれが何かに邪魔されるっていうなら私が絶対助けに行くから――元気でね、コウ



帰り道の方を指さすリン。

珍しく真面目なトーンというだけではなく今にも泣き出しそうな表情だ。


「リンさん……そんな表情、似合わないとかそういうレベルじゃないよ?」


「うるさいなぁ、これ以上別れが辛くなる前に行っちゃってよ」グイッ


顔を隠す様に下を向きながら両手でコウの背中を押す。


「ちょっ、そんな強引にっ!それがか弱い子がやること?

……ん?そういえばこの道――どういう状態になってんの!?」


いつの間にか目の前には規則があるのかないのか分からない数字やアルファベットの羅列が浮かんだ空間があった。


「良く聞いてくれたね。それはユーアールエルリアンの仕業だよ。

コウちゃんがこっちに来たのは多分あーいうのに触ったのが原因で元の世界に戻るにはそっちのに触ればOKだよ」



↓あーいうの

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886114045


↓そっちの

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886189393



「メタァ!!」


シリアスは長く続かない、それがこの世界の理である。

わりと多くの謎を残しながら彼は元の世界へ帰って行った。





   *




「今回もめちゃくちゃフリーダムだったなぁ……」


無事に元の世界に戻り安堵の声を洩らす。

どうやら今回は秘境スタートもセルリアンによる歓迎会もない様で、目の前にはガチな追いかけっこ中に急に消えたことを心配していたオイナリサマの姿があった。


「またあの世界で色々あったんですよ。聞いてくれますか?」


「えぇ、勿論です」


今度は自主的に話を切り出した。愚痴を言う様に、でも楽しそうに……

短い間に本当に色々あったことを。


忘れられないじゃぱりまんの味のこと、誕生日を祝って貰ったこと、異世界をつなぐセルリアンの亜種のこと、そして――


「石を渡されたから捨てた……?」


「えっ?」


余計なことまで言ってしまったことに気付いていない彼が「何かいけなかったですか?」と、つけ加える前に両肩をガシッ!と掴まれた。


「コウ、今すぐにでも乙女心を学ぶ必要がありそうですね?」



寛容なはずのオイナリサマに、これほど厳しい事を言わせる彼はいったい、何者なのだろう――






   *





「はっ!?何やら嫌な予感が……避難しないと……」



危険(大抵は危険ではない)を察知してどこかへ逃げようとするアノン。

今回の場合はキャッチコピーの回収方法がコウに失礼な気がして非難される前に避難、ということだろうか。

彼女は一体、どこに逃げるつもりだろうか――





~完~




クロスオーバー


みんな自由に生きている(アルミニウム)×幻想の けもの(遊士)


↓お相手様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886189393

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