第82話 自由な少女と幻想獣②

~前回のあらすじ~

「また会おうね、コウちゃん?」

あの感動的な別れから24時間もの時を経て、ついに二人は再会を果たした――




   ……書き溜めとか全然してないのに勢いで再会させちゃってごめんなさい(小声)




   *




チュンチュン――

夜の間に冷え込んだ空気が朝日に暖められていく感覚と共に俺は目を覚ました。

小鳥の鳴き声が聞こえる爽やかな朝だ。


……ん?雪山なのに小鳥の声?

それに妙に規則的だな。この違和感はなんだ?


何かがおかしいと思い、声が聞こえてくる方を見やる。


――あぁ、なんだ、そういうことか。


なんということはない、そこにあったのはラッキービースト型の目覚まし時計だった。

7時ジャストを示すそれは、チュンチュンと可愛らしい音声(CV.内田彩)を流し続けていた。


目覚ましを止め、起き上がろうと手をついた時、何か柔らかい物に触れた感触があった。


フニッ。


慌ててそちらの方を見ると、そこには少女の姿……ではなくキングペンギンのフレンズを模した抱き枕があった。


「まったく、朝からこんな手の込んだ悪戯を……誰の仕業だ」


そんな悪戯をするのは一人しか居ないが、念のために言ってみる。


「当然!私だよ!!

本物と間違うぐらい良い感触だったでしょ?

キングペンギンちゃんが彼女だったら良いなぁって思わない?」


「(キングペンギンルートは)ないです。

そもそも本物の感触なんか知らないし」


「それはそうだろうね、触ったことあったら問題だからね。

コウちゃんが女の子だったら問題なかったけど――いや、か……」


「リンさんが困る、というと?」


「あ、ううん。こっちの事情だから気にしないで。

それよりも!朝ごはん食べてからデートの続き、しよ?

私、今日は海に行きたいなー」


一瞬悲しそうな表情が見えた気がしたが、どうせノリで意味深な言動をしてみたかっただけなんだろうと思いこれ以上の追及はしなかった。




   *




……なんだかんだで海に来てしまった。

俺は元の世界に戻る方法を探したかったのに多数決(一票の格差 大)で却下された。理不尽だ。


「はい、という訳で海までデートに来てる訳なんだけど、最初はいつも通り皆からのお便りを読み上げていくよー!」


「相変わらず自由にやってるなぁ……」


何かの動画撮影でもしているかのようなテンションだが本人曰く単なる癖らしい。じゃあそのカメラは何なんだ……

そんな調子でぼんやりと眺めていると思わぬ不意討ちを受けた。


バシャッ!


「ぐわあぁぁぁー!!?」


顔面に海水をかけられ思わず叫んでしまう。

遊園地に引き続き視界を奪われるのはこれで2度目。

黄金ゴールド聖闘士セイントに同じ技は通用しないが黄金聖闘士でも同じ技でもないので普通に通用してしまった。


「……エクストリームかりごっこだな?

逃がさんぞー!!」


「そんなに怒ること!?なんで!?」




\フハハハ クハハハ ハー↓ハー↑/




砂浜で走る二人の姿はまるでイチャつく恋人を早送りしたかのようだったとか。

なお、この後両者の空腹により昼前には無事に事態は終息に向かった。



~もぐもぐタイム~


「コウちゃん、じゃぱりまん一個でそんな簡単に機嫌直してたらチョロいって思われるよ?……実際チョロいけど」


「一個で許すとは言ってない……倍プッシュだっ……!」


「二個でも大差ないからね?

それにしても、水着も持って来れば良かったね。

やることなくなっちゃったよ」


「俺が元の世界に戻る手段を探すのはどうなったの?」


「……ごめんね。本当は帰り方なんてとっくに分かってる。

だから海に来たのも私のワガママでしかないんだ」



……リンさん、急に汐らしくなったな。

気のせいかもしれないけど、モテないだの何だの言われない程度には紳士的な対応しておくか。



「なんだ、だったら最初からそう言ってくれても良かったのに。

別に今更ちょっと遊びに行ったってバチは当たらない……と思うよ」



実際のところ帰り方が分かってるならそんなに問題ないしな。



「なんか珍しく紳士的な反応だね。

やっと女の子の扱いが分かってきた?それとも偽物のコウちゃんだったりする?」(←超絶失礼)



訂正、全然汐らしくなかった。

……って、うお!?それどころか銃まで突き付けてきたぞ!?

このシチュエーションは――アレか?


「何の真似だ、リンさん。誰に向かって銃を突き付けている?」


「誰に?笑わせないで。

二人きりの時、コウちゃんは私のこと “ママ” って呼ぶのよ」


「チッ!あんたらそういう仲かよ!……とはならないからな!?そんな呼び方する訳ないダルォ!?」


残念ながら偽物ではなかったので、「引っ掛かってくれてありがとう」というハイセンスな皮肉は聞けなかった。はやくリメイクされると良いですね



「ごめんね!私、茶番が大好きで……

あなた、あんまり話の腰を折るのが得意じゃないけものなんだね?

どのくらいのウデマエ?ナワバリは?」


怒涛のパロディーで畳み掛けるリン。

今回は敵とか事件とは無縁なので少々多めにボケないと尺が余ってしまう(ネタバレ)


「さっきからどうしたの?テンションが高いのは普段通りとしても情緒不安定過ぎない?」


「それは脚本と演出が良くないせいだよ。

向こうの準備が整うまで時間を稼ぐとしか決めてなかったからね。

それでもなんとか時間は稼げたし、そろそろ図書館に行こっか?」


「時間稼ぎ?図書館?どういうことだ……まるで意味がわからんぞ!」


「いーから、いーから。みんな待ってるよ!

あ、そうだ!せっかくだから手を繋いで行こうよ♪」


強引に指を絡ませる――所謂、恋人繋ぎの状態になった二人は仲良く(?)図書館に向かう。申し訳程度のラブコメ要素だ、やったぜ!


歩くこと数分ないし数十分あるいは数時間後、いや歩いたんかな?歩いてないかもしれんわ、描写すんのやめとくわ、確信がないわ。


過程こそ省かれたが、華やかな飾りが付けられた図書館に到着した。


「コウさん……」

「コウ……」

「コウちゃん……」

「「「(お)誕生日おめでとう(ございます)!!ハッピーバースデー」」」


「そこは統一しておいて!?」



そもそも今日は誕生日なのか、ガバガバ脚本が今まさに真価を発揮する――

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