第81話 自由な少女と幻想獣①

~注意事項~

『幻想の けもの』

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886189393

とのクロスオーバーです。

先に『幻想の けもの』番外編(?) 幻想獣と自由な少女⑤ まで読むことをオススメします。





   *




拝啓 大切な友人たちへ


皆さま元気にしているでしょうか


いつの間にここに来たのでしょうか


俺は今全力で追いかけてくる神獣から逃げ回ってないです


布団の中、何故か隣にいる見知らぬ少女に気付かれないよう行きを潜めながら脱出を図っています


正直、焦ってます


小中学生くらいの子相手にここまで緊張してしまう耐性の無さが非常に残念です


さて、何故このような事態になってしまったか気にする前にこの場を後にしようとした訳ですが……


「あ、目が覚めたんだね!」


気付かれたー

終わった……オワタ……

完全にカナダの首都……(←それはオタワ)


「雪の中で倒れてたけど大丈夫?

つらかったらまだ寝てて良いんだよ?」


グイグイと近寄り顔を覗き込んでくる少女に対し、冷静を装いながらこう言った。


「とりあえずは大丈夫。

ただちょっと状況を整理したいので時間をください」


少女の「うん、いいよー」という快諾を受けて思考を巡らせる。


まずここは雪山にある旅館だと思う。

雪の中で倒れてたとも言ってたしまず間違いない。


それから今の俺の姿は……フードと蛇の尻尾だけか。

羽も犬耳も出てないなら蛇のフレンズと思われてるはず……

雪山に来たつもりは無いけど何の対策も無しでこんなに寒い所に来る蛇のフレンズがいたら心配もするだろうな。


で、一番の謎がこの子が何者か、だよな。

動物的特徴は見あたらないが、



……3つノルマを達成するチャンスだったって?

今はエンタメってる場合じゃない!


「OK、だいたい理解できた。

ただいくつか聞きたい事があるんだけど」


「聞きたい事?私の下着の色ならピンクだよ」



ピンクかー、似合いそうだなー(錯乱)


・・・。


いや、何想像してんの俺!?

この子もこの子で急に何言い出してんの!?

……良く考えたら同じ布団に入って来るような子だったわ、そこまで急にでもなかったな!


きっとこの子はそういう習性のフレンズ……

誰が何と言おうとそういう習性のフレンズなんだっ……。


「俺が聞きたかったのはそういうのじゃなくて――「なんでこんな状況になってるのかと、私が何者か、だよね?」



台詞の途中で遮られた。わざとか!わざとなのか!?



「今すぐそれを説明するのはちょっと面倒なんだよねぇ……。

一応、異世界に迷い込んでるってことぐらいは気付いてるんでしょ?」


「いや、全然気付いてなかったんだけど」


「えっ?」


「えっ?」


「・・・。

私はリン、見ての通りチーターのフレンズだよ。

よろしくね!」



ごまかした!

強引に話題を変えるのはヤメロォ!(建前)

ナイスゥ!!(本音)


というか俺の知ってるチーターと違うんだけど!?

イヌ科っぽい耳はまだ良いとしても羽とかフードはおかしいよね。ペアルックのつもりか?(←不正解)

さては俺のファンだな?(←ある意味正解)



この感じからして俺のことを全く知らないとは思えないけど一応自己紹介ぐらいはしておくか。


「俺の名前はk――」グウゥ-……


おいおい、また最後まで言えなかったじゃないか!

どうなってんだ?いや、今回は自分のせいだけども!

というかこのタイミングは良くない気がする。……変な呼び方とかされないよな?


「グウゥ-ちゃん?

ちょっと呼びにくいからコウちゃんって呼ばせてもらうね?」



これが腹の虫名乗りキャンセルというテクニック。

自己紹介中にお腹を鳴らすことで隙を消す小技だ!

もちろん今思い付いた冗談。普通に恥ずかしい。


それはそうと、やっぱり俺のこと知ってるよな!?

これは問い質さないとな。


「俺のこと知ってるみたいだけど、もしかして前に会ったことある?」


「まあね、会ったことがあるから知ってるし、知ってるから出会えた……そういう関係だよ、私達って。

でもその話は後でね。お腹、空いてるんでしょ?

良かれと思ってできたてのじゃぱりまんを用意してあるよ。さぁ、受け取って、私のLOVEじゃぱりまんを!」



おっかしいなぁ!!胡散臭すぎて逆に信用できる気がしてきたぞ?


おっと、せっかく貰えるんならじゃぱりまんを落とさないようにしないとな。




| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

|      Ⅲ        |

|      の       |

|              |

|      ♥️       |

|              |

|______________|




って、なんだこの渡し方!?

さてはアンテ民だな、オメー!?



モグモグ……ん、じゃぱりまん自体は普通に美味しいな。

というか、この懐かしい味は――

そうか、思い出したぞ!全部!!

それでまた異世界に来てる件について思い当たる原因といえば……


「リンさん!今度は一体何をやらかしたの!?」


「えっ、ひどくない?前のも今回のも私がやらかした訳じゃないんだけど!?」


「じゃあ何か異変でもあったってこと?」


「そっちの可能性を先に疑って欲しかったなぁ……

まあ良いけどさ。

今のタイミングで言うのもどうかと思うんだけど、異世界で現地の食べ物を口にすると元の世界に帰れなくなるって良く言うよね?

つまりはこれからもどうかよろしくね!」


「どうかよろしくねじゃないが?(半ギレ)」


本当になんで今言うの!?

じゃぱりまん食べちゃったじゃん!?

いや、この世界の食べ物ならもっと前にも……


「つまり俺はこっちの世界の住人と認められてしまったってこと?」


「理解が早くて助かるよ。

これからはレギュラーとしての活躍を期待してるよ」


「お断りします(AA略)」



即効で断った。

チートを貰える訳でもなくカオスな異世界で主人公などやってられないので無理もない。


「それにしても、じゃぱりまんの味だけで記憶が戻るのは想定してなかったよ。

前に行った場所をもう一度巡って、最後に貰った羽を見せた時にでも思い出してくれればそれで良かったんだけど……

まぁ、今日のところはしっかり食べてゆっくり休んでよ。

また明日から元の世界に戻るために色々やっていこうね」



少女リンの言葉を聞き流しつつチラリと外の様子を窺う。

短期間で鍛え上げられたリスニング力によって話の内容を頭に入れつつも、戸の隙間から入ってくる太陽を見てまだまだ寝るには早い時刻なのだと判断した。


よし、外の空気でも吸って来るか!などと考えている と


「あ、今寝るにはまだ早いから一人でどこか行こうとか考えたでしょ?ダメだよ。自覚はなくても世界間の移動で記憶があやふやになるぐらい疲れてるんだから。

でもまぁ、そんなに元気が有り余ってるなら “せ” ではじまって “す” で終わる気持ちいいこと……する?」


あぁ、これはまたからかわれてるな。

俺がヘタレると思って挑発したのが運の尽きだ。

ちょっと怖い目に遭って反省して貰おうか!(フラグ)


「リンさん、俺だって男なんだ、冗談のつもりでもそういう事を言うとどうなるか分かってる?」


どうこうするつもりはないが、わざと乱暴に手首を掴み押し倒した。



よし、少しは驚いてるみたいだな。すぐにネタバラシを――「聖なるバリア - ミラーフォース - !!」


「ゑ?」


壁のように捲り上げられた掛け布団が襲いかかってくる。

“せ” ではじまって “す” で終わる気持ちいいこととはミラーフォースのことだったのか!?


「底知れぬ、絶妙な羽毛に、沈めぇ!!」バッサァァ!!



追伸


どうやら女の子に対する耐性だけでなく破壊耐性も必要だったみたいです


非常に残念です





恐ろしい罠に嵌まった俺は、深い眠りについた――



いや、死んでないからな!?

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