第2章 外伝

第78話 アミメキリンと謎の茶番

おはこんばんちわー!

私、唯野 r……ん?

そういえば今回は『モフモフ!ハロー!JapariTube!』の更新じゃなかったね。素で間違うところだったよ。

気を取り直して2章外伝、はっじまるよー!!




    *



探偵が先か事件が先か、誰にも断じることはできない。

平和なはずのパークで、今日もまた事件の気配がある。迷探偵の勘がそう告げていた。


「今日は最新話の〆切の日……こんな大事な時に先生が居なくなるなんてあり得ないわ!これは事件よ!」


「どう考えても事件ではないのです」

「とんだ迷探偵なのです」


アミメキリンの思考回路に呆れ顔の二人

ちなみにだが、〆切日にタイリクオオカミが失踪することは珍しくない。


「博士達までシラを切るなんて、これは裏で何か起こってるわね。

まさか、何者かに拐われたとか……!?」


少し考え込んだ後に「そうに違いないわ!」と何故か確信し、次の行動に移った。


「こういう時は心理的に西に向かうと相場が決まってるわ。こっちね!」


基本的に彼女の行動には根拠がない。

分かれ道を選ぶ時に無意識に左を選んでしまうのと混合したかのようなガバガバ理論は日常茶飯事である。

だが安心して欲しい。

確かにこのような捜査をしていれば大半が空振りに終わるのだが、例外的に何かあった時だけを厳選して物語にしているので今回の話で全く何も起こらないなどということはない。


何かがあるであろう西へと向かっている最中、思わぬ方向から声がかかる。


「あら?アミメキリンさん。

そんなに急いでどちらへ行かれるんですか?」


振り替えってみるとキンシコウだけでなくヒグマとリカオンの姿があった。


「良いところに来てくれたわね!

実は、カクカクシカジカまるいムーブでうららケア――って訳なのよ。

もしかするとセルリアンが絡んでる可能性もあるわ。付いて来てくれるかしら?」


これまでの経緯と推理を小熟こなれた言い回しで説明した。


「私は構いませんが……」


「まあ、良いんじゃないか?

いつも空振りに終わるとはいえ、何か用事がある訳でもないしな」


気まぐれで付き合うかのように言っているものの、ヒグマが頼みを断る事は少ない。

所謂ツンデレというやつだ。

ヒグマが賛同したことによりリカオンの意見を聞くまでもなく賛成多数となった。

もっとも、彼女こそ反対などしないだろうが。


「このメンバーで西の方へ原稿を取りに先生を訪ねる……昔から言い伝えられている流れね!

私の推理は正しかったんだわ!」


自信満々に言い切った。

この面子だと西遊記なのか桃太郎なのか微妙なところである。

四人は西にあるセルヶ島(仮称)を目指した。




   *



その頃、セルヶ島では――


「カカナクテハ……

カキタクナイナ……

カカナクテハ……」


「さあ今すぐペンを取れー♪

押し寄せる〆切引き延ばせ!」


「くっ……一時間あたり10ページ描けばいけるか……?」


セーバル、リン、タイリクオオカミが三人それぞれ追い込まれたように漫画を描いている。

一人だけ余裕そうだが。


「よし!私の分の作業は終わったよ。

でも、もう無理じゃないかな?

セーバルちゃんも限界みたいだし最低限の仕事が終わったんなら欲張らなくても……」


「そうか……。ワガママに付き合わせて悪かったね。

できればこの作品が完成するところを見たかっt……ガクッ」


体力の限界なのか倒れ込むオオカミ。

ガクッという効果音まで自分で言うのはどうかと思う。


「そんなっ……。オオカミ……?

目を覚ましてよ、ねぇ!

目を……目を覚ましてよぉ……!!」


スヤスヤと寝息をたてるオオカミを揺すりながら無駄に高い演技力を発揮するリン。

茶番が大好きすぎる。


「短い間だったけど、一緒に作業できて楽しかったよ。ありがとう……」


目標こそ達成出来なかったものの、一緒に過ごした時間は本物だった。

描こうとした物語が世に出なかったとしても彼女達の中で大事にされ続けるだろう。

いつまでも、ずっと――





~完~






……。



…………。




「ちょっと待ったー!!」


ガシャーン!!という豪快な音と共に現れるアミメキリン。

自慢のマフラーで完の文字を叩き壊したのだ。

文字は分離、変形してしまっている。 ウ元←こんな感じ


地の文というだけあって完の文字は地属性である。

獣属性のアミメキリンの攻撃は等倍で通る。

全く必要ない情報だが、属性相性は以下の通り。


天→地→人→天   獣←→星



閑話休題それはさておき

偶然にもオオカミの元にたどり着いたアミメキリン。

事情は誰かに聞けば済む話だが何故か推理を始める。

なお、ハンターの三人は茶番を見た時点で何かを察して帰った模様。


「ここにある原稿……最新話分は完成してるみたいね。

それにもかかわらずまだ執筆を続けて倒れた……これはつまり……貴女達、先生のファンね!?

早く先を読みたいから続きを描かせたのね!

気持ちは分かるけど誘拐はやり過ぎよ!」


「全然違うよ。ねー?」


「セーバル達、お手伝いしてた。

だからオオカミはむしろ使用者」


「スヤァ……スヤァ……使用者……?」


(流行に)乗るなオオカミ!(睡眠に)戻れ!!


「ならなんでこんな事を?

もう一作品描くにしても今である必要はないはずよ!」


「私もそう言って止めようとしたんだけどね……

なんか他の漫画に人気を抜かれる夢を見たとかで今すぐ新作を発表したい気持ちになったんだって」


「先生……それで先生が倒れたら何にもならないじゃないですか!

みんなファンとして首を長くして待ってますから、ちゃんと最後まで描いてくださいよ!」


茶番フェイズ2に移行し、アミメキリンまで寝ているタイリクオオカミを揺すり始める。寝かせてあげて!

アミメキリンの無駄に上手い慟哭の演技はセルヶ島中に響き渡った――



つづかない

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