第76話 貴女はこのオイナリサマに何を願うのかしら?(震え声)

モフモフ。

モフモフ――


「折り入って話があるんだけど聞いてくれる?

オイナリちゃん」


「言動がまるで噛み合ってないようですが……まあ良いでしょう。

全く、相変わらず仕方のない人ですね、貴女は」


尻尾に抱きつかれようと顔を埋められようと気にせずに、字面だけなら真剣そうな話の続きを促すオイナリサマ。

尻尾をモフモフされるのが嫌なら消せば良いと思うかもしれないが、それほど単純には行かない。

確かに、けもプラズムで出来た耳や尻尾を消すなどオイナリサマからすれば容易い。

しかし、目の前の相手は一枚上手で、他人のけもプラズムにすら干渉し、無理矢理耳や尻尾を出現させることができてしまうのだ。

よってここは呆れながらも話を聞くことが最善であった。


「この前も話したけど近々パークが危機に晒される事件……まあ、言っちゃうと次の回には隕石が落ちてきて大変なことになるんだよね。

流石に私も見過ごしたりはしないけど念のためオイナリちゃんにも備えて欲しいことがあるんだ」


「備えて欲しいこと、ですか?」


やけに具体的な予測や次の回というメタ的な表現に内心引っ掛かりながらも追及を続ける。


「ちょっとした演出をね。

ほら、一応最終話だから盛り上げて欲しいんだよ。

BGMとかそういうのでさ」


※次回が最終話になりますがハッピーエンド確定ですので、お好みの勝利確定BGMで安心して茶番をお楽しみ下さい。(例:暴れん坊将軍のテーマ)


「最終話?BGM?

良く分かりませんが今まで何度もパークを守った貴女の頼みなら無下にはできませんね。不本意ですが」


頭上に“?”マークを浮かべながらも承諾するオイナリサマ。

比喩ではなく実際に、けもプラズムで作った“?”マークを浮かべている。お茶目。


「嫌がってるようで結局頼みは聞いてくれるオイナリちゃん大好き!

そんなオイナリちゃんに、今日は いなり寿司を持って来たよ」


オイナリサマの耳がピクリと反応する。


「もう残ってないけどね!」


階段を登る際に食べただけで持って来たのは事実。

嘘はついてない。


「ぬか喜びさせて何がしたいんですか!?」


「そういう可愛い反応が見れるだけでからかう意味はあるんだよ?」


この後、拗ねたオイナリサマの反応を楽しむだけ楽しんで特製ジャパリまん(いなり寿司風味)で機嫌を取るという典型的なマッチポンプが繰り広げられた。

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