第72話 六畳一間の神域
三人が夜食を楽しんでいる頃、とある一室での出来事――
「さっきから一体何が不満なの?オイナリサマちゃん」
「そうですね、強いて言うなら、全部です!
その呼び方も!お供え物も!!
昔から思ってましたが、ギリギリ怒るほどでもないラインを攻めるのはやめてもらえますか!?」
「え?そんなにダメだった?
サマの部分も含めて名前だよね?」
あくまでもちゃん付けで呼んだだけ。悪意はあまりない。
「普通に呼び捨てにするか、サマは抜いてください!
ギャグみたいじゃないですか!!」
堪忍袋の緒が切れたオイナリサマに対し、「ギャグみたいじゃなくてギャグだよ」と、言いそうになるが、そこは我慢。
空気読み選手権さばんなちほーベスト64に入ったり入らなかったりする実力は伊達ではない。
「はいはい、わかったよ、オイナリちゃん」
ちゃん付けは譲らない。
王様だろうと神様だろうとアグネス・チャンだろうと彼女は基本的にちゃん付けで呼ぶのだ。
「それで?お供え物の方にも不満があるみたいな事言ってたけど……」
「当たり前です!!
用意する時に何も思わなかったのですか!?」
二人の間にはジャパリチップス(うすしお味)とコーラ(1.5L)が置いてある。
「あー……。ごめんね?
コンソメ味があれば良かったんだけど品薄で……
でもあれだよ、原料のじゃがいもが高騰してるからちょうど今、原価率100%なんだよ?凄くない?
原価率100%ってことはカロリーは1%も存在しないから安心して食べて大丈夫ってことだよ」
カロリーゼロだから食べろと言わんばかりにジャパリチップスの包装をパーティー開けにして差し出した。
コーラのカロリー?知らん、そんなことは管轄外だ。
「あぁ……そんな開け方してしまったらもう食べるしか……」
食べ物を粗末にできないオイナリサマはジャパリチップスをパリパリと食べはじめた。むしろもっと怒るべき。
それに対し、リンの行動はというと――
「おまけのフレンズカードは何かなー♪」
「あ、光ってる。当たりだね。
えーと、 “ 広く信仰される神が一柱。現在では産業全般や交通安全を司るが、元来は農業の神として信仰されていた ” だって」
「?!!?!?!!?!ゴホッ!ゴホッ!!ゲフッ!!」
目の前で自分のカードを当てられたらむせるのも仕方ない。
「どうせ当たるならキュウビキツネちゃんの方が良かったなぁ……
Arts性能アップとか優秀だし。まあ、Buster3枚の私とは相性良くないんだけど」
いくら親しい(?)とはいえ普通に失礼である。神様やぞ!
「はぁ……それで、結局今回は何の用件ですか?」
やりたい放題なリンから早く解放されようとするオイナリサマ。
「何言ってるのオイナリちゃん。
友達を遊びに誘うのに理由なんて必要ない――でしょ?」
「“畑を荒らす野ネズミをなんとかして欲しい”という理由で、お百度参りRTAなるものを敢行した貴女が言うと説得力が違いますねぇ!?
確かに!それが本業といえば本業ですけれども!!」
「あったね、そんなことも。懐かしいなぁ……」
ちなみにだが、お百度参りRTAが行われたのは先週の事である。
都合の悪い事は遥か過去の話にして水に流させるスタイル。良い子は真似しないでね!
「あ、そうだ!
また近々パークの滅亡回避の為にお百度参りRTAやるから新記録更新に期待しててね」
「?!!?!?!!?!ゴホッ!ゴホッ!!ゲフッ!?」
律儀にコーラを飲みはじめていたオイナリサマが吹き出した。
そういう事は先に言え定期。
これから定期にしていくんやぞ(先手必勝)
本来なら畳がコーラまみれになるところだが、部屋中に結界を張っていたおかげで被害を免れた。
しかし、オイナリサマの苦難はこれからも続く。
悪友が傍に居る限り――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます