第71話 暖かいお湯、冷たい水、熱いバトル

「ふあぁ――……」


温泉に肩まで浸かりゆっくり寛ぐアノン。

お湯は白く、透明度が低い為、水面下の様子を伺い知る事は出来ない。残念でしたね。


……健全な小説なので基本的にサービスシーンは無しですが、どうしてもという方は水風呂までどうぞ。

水の透明度が極めて高く、ちょうど今なら見られても気にしないリンの無防備な姿が拝めるでしょう。


一方、アノンは異様なまでに警戒心が強く、タオルを駆使して隙を見せることなく入浴を済ませようとしていた。

T H E 両 極 端 !




「あー、スッキリしたー♪」


お風呂から上がるとすぐに、しっかりと体を拭いて、乾かす。

頭の羽をパタパタと動かしている様子は、誰の目から見ても明らかに上機嫌だった。

浮わついた気分で歩いていると、未だに真剣勝負中の二人のところに戻って来た。


「なんとか間に合った……。最強の布陣、インペリアルクロス完成だよ」


「うっ!もう残りの戦力じゃ崩せないわね……

私の負けよ」


敗北を悟ったギンギツネ。

熟練者の二人には常人では読み切れない終局図が見えているのだろう。

そもそも常人はルールすら知らないのだが。


「ギンギツネー、お腹すいたー」


キタキツネは勝負が終わるとすぐにだらけはじめた。

三食キッチリ食べて尚、お腹がすくほど熱中していたようだ。


「もう!だから早くお風呂入って寝なさいって言ったじゃない。

それにボスだってこんな時間にじゃぱりまんを配りに来ないわよ」


「あのー、それなら私が何か作りましょうか?」


「あら、貴女はもしかして最近噂の……?」


小夜鳴鳥サヨナキドリのアノンです。

さすらいの料理人やってます」


そんな大層なことはやっていないが、名乗ったもの勝ちである。


「私はギンギツネ。この子はキタキツネ。

一応、二人でこの宿の管理をしてるの。

何か困った事があったら出来る限り力になるわ」


「はやくー、ごはんつくってー」


「こら、作って貰うんだから急かさないの!」


二人のやりとりに思わず苦笑しつつも食材を確認しはじめる。


「きつねうどんかな、やっぱり」


作れる料理の中で最も適したものを考え出した。

少々安直なのはご愛嬌。

今回は時間帯が遅いので調理している間に念入りにカロリーを確認しておく。


きつねうどんがきつねうどんたる理由の油揚げ、これは狐である二人にとって自身の一部と言っても良いのでカロリーはゼロ。

出汁は透明で見るからにカロリーゼロ。

麺はコシが強く、カロリーを弾き返してくれるだろう。よってカロリーゼロ。問題なし!


完成品を二人に差し出すとすぐ美味しそうに食べきった。

お腹がすいていたキタキツネよりギンギツネの方が早く食べ終わったのはここだけの秘密。


「さて、自分の分に取りかからないと」


先程の理論では油揚げのカロリーがゼロにならないアノンは、自分用のレシピも考えていたようだ。



―――― 警 告 ――――

今すぐ食事できないならこの先を読まないでください。

あまりに美味過ぎて、ほぼ100%その場で食べたくなってしまいます。

――――[CLOSE]――――


茹でたてのうどんの麺に溶いた卵をかけ、砂糖醤油で味付けし、かき混ぜる。

そして、熱いうちにバターを溶かせばすぐ完成。

夜中に食べるには不適切なカロリー。

故に美味。旨さとはカロリーの向こう側にあるものだ。


そんな高カロリーもカロリーマイナスの春菊を食べて解決する。

出た!アノンさんのクッキングコンボだ!




無理矢理カロリーをゼロにしたところで胃に食べ物が入った以上、そのあとしばらく寝るに寝れなくなってしまったのは自業自得である。

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