第65話 犯人はアイドルPPP

「こんなことがあるはずないわ……」


判断材料が少なすぎることを思い知らされたアミメキリンは再度現場を確認していた。

しかし、そこにあるはずの被害者マーゲイの姿は無かった。


「意識が戻ってどこかへ行っただけじゃないですか?」


ジェーンによるマジレス。

ワイトもそう思います。


「そんなこと言って捜査を撹乱するつもりね!?

抵抗しても無駄よ!全員の話を聞けばすぐに矛盾が見つかるわ!!」


今更聞き込みが始まった。

証拠より先に犯人を探すような探偵なので仕方ない話ではあるが……



~証言一覧~


「ちくわ大明神」

「ちくわ大明神」

「ちくわ大明神」

「そういえばコウテイと一緒にスピーカーの調子を確認してたわね……」

「ちくわ大明神」

「ちくわ大明神」


割合が逆ぅ!!


聞き込みの結果、プリンセス以外からはまともな証言を得られなかった。

アミメキリンが少し考えるような仕草をしたかと思うとまた何も考えてないようなことを言い出した。


「貴女達、目を閉じなさい。

そして、犯人は正直に手を挙げなさい!

今なら怒らないわ!」


ジャパリパーク内では案外有効かもしれない捜査方法だが名乗り出る者は居ない。


「だんまりという訳ね……

貴女達!この網目模様が目に入らないっていうの!?」


とうとう時代劇の様な事を言い出した。

当然ながら、全員が目を閉じているので目には入らない。


「それって保護色になるだけじゃなくて、体温調整にも役立つんだよねー?」


フルルからの有益な情報。

事件に関係ないことを除けば完璧だった。

捜査が完全に振り出しに戻った時、ある提案をする者が現れた。


「あのっ…… 少し、休憩しませんか?

軽く食べられるものを作ってきました」



【悲報】主人公、空気化したと思ったら空気を読まず料理していた



ちなみに今回のメニューは推理にピッタリなものである。

普通のじゃぱりまんにDHAをたっぷり加えた【じゃぱりまん~スターゲイジーパイ風味~】。

一緒に用意されているスープとの相性は抜群で、一時的に脳を活性化する効果があるらしい。

余談ではあるが、この組み合わせはDCSドーピングコンソメスープという別名で『ジャパリパークのイカれた料理10選』(著:タイリクオオカミ)の最終選考に残ったものの、他のイカれた料理に比べれば「普通に食べられる」という理由で落選した見た目のインパクト特化の一品である。




「――はっ!?そういうことだったのね!?

私の推理が正しければ、犯人はPPPの中に居るわ!」


もぐもぐタイムにより推理力にブーストがかかったアミメキリンが物凄く今更なことを言い出した。


「犯人は貴女ね!」


コウテイを指差すアミメキリン。

一方、コウテイは視線が集まるのを感じると同時に白目を剥いて気絶した。

なんとなく事態を察したアノンが「よいしょっ、よいしょ」と、近くにあった姿鏡を移動させた。

鏡に写ったアミメキリンが指差す先に居たのはマーゲイ。

まさかのセカンドチャンスである。


この後、アミメキリンに「自分で鼻血を出しておいて倒れてたのね!?」と詰め寄られたマーゲイがその事実を認めたことであっさりと事件は終息を迎えた。

「被害者が犯人だってことはすぐに分かったわ」と、誇らしげにしているアミメキリンであるが、事件をややこしくしたのが彼女であることと、姿鏡による不正が行われていたことを忘れてはならない――

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