第61話 料理人へのステップ
日が昇るより先に目覚め、食事の準備を行う。
それは朝食と呼ぶべきか、超食とでも呼ぶべきか――
いつも通りに起きようとすると、体が重い事に気付いた。
その原因は、多いか被さる様に眠るライオンだった。
不思議と肉食獣に襲われるという恐怖感は無く、頼れる姉に大事に抱きしめられているような安心感すら覚えていた。
誤って起こさないようにスルッと、腕という名の鳥籠から抜け出る。
辺りを見渡すと、足元一面に敷き詰めれた不自然な程に真新しい畳と、大型のネコ科が爪を研いだかのような傷だらけの壁や柱の対比が目に入る。
床の間には掛け軸が飾ってあり、「第2章連載中!当初はアイドルを目指す物語にする予定でしたが、なかなかPPPに会うところまで進まなかったので料理人ルートで進めて行きます!」と書かれている。
あまりにも見事な近況報告を行う作者の技量に、読書は思わず息を飲む。(問答無用)
空腹のアノンは掛け軸の事をそれほど気にせず調理場へ向かって行った。
途中、何もないはずのところで何かにぶつかったような感覚があったが、目に見えない忍者でも忍び込んでいる訳ではあるまいし、意に介す事でもなかった。
「わぁー……!!こんなにっ、こんなにたくさんあるなんてっ!」
調理場に到着すると思わず感嘆の言葉が零れた。
所狭しと並ぶ調理器具に多種多様な調味料。いずれも管理が行き届いており、図書館に置かれている簡易なものとは質も量も比べ物にならない。
その中から2つ、ごく一般的な調味料が入った容器を持ち上げる。
砂糖と塩――
「塩の方が粒が大きい、よね……?」
間違えれば大惨事は免れない。
これは、あらゆる手段を用いて、懸命に砂糖と塩を見分ける――壮大な物語である。
“砂糖と塩” 識別編 開幕!
ペロッ――
「あれ?こっちが塩だったみたい。
念のため舐めてみてよかったぁー……」
小難しい理屈なんて無かった。
“砂糖と塩”識別編 完!
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