第58話 目覚めを待つ星剣
「あ、あのっ……!
この度は本当にお世話になりました。
これ、よかったら皆さんでどうぞ」
ペコリと頭を下げ、ハチミツが入った小瓶を差し出した。
「別にお礼が欲しくて助けた訳じゃ――「そんなこと言わずに受け取ったらどうですか?」
キンシコウに発言を遮られたヒグマは、少し困ったような表情で小瓶を受け取った。
その様子を見ていたリカオンはヒグマに睨まれていた。
なかなか理不尽ではあるが、この3人の関係としてはこれぐらいの役回りで丁度良いのだろう。
(ハンターなら誰でもハチミツの有用性を知ってるとは聞いたけど、要らないって言われなくて良かったぁ……)
内心ドキドキしながらも再度一礼し、飛び去ろうとしたところをヒグマに「You、セルリアンハンターになっちゃいなよ!(意訳)」と呼び止められたが普通に断った。 こんな子が主人公で大丈夫だろうか?
思わぬハプニングを無事切り抜けたものの、不安が残る事は否めない。
そこで、少し予定を変更して、次に湖畔を目指すことにした。
*
「ここ……かな?」
地図を広げて目的の場所が目の前にある木造の建物である事を確かめる。
ここに来るまでに休憩を挟んだおかげで家を訪ねるには丁度良い時間帯になっていた。
コン コン コン
規則正しく間を置いて三度戸を叩く。返事は無い。
ドン ドン ドン
先ほどより強めに戸を叩く。
やはり返事はなく、中に誰かが居るという気配も認められない。
「留守なのかなぁ、それとも場所を間違えたとか……?」
少し悩んでいたところ、ギギィッと扉の開く音が聞こえた。
目の前の扉は固く閉ざされている。
ふと横を見ると、近くにあった目立たない小屋から
「なんか騒がしいね。
ビーバーとプレーリーなら遊園地の方に出掛けてるよ?」
「あわわっ!?ごっ、ごめんなさいぃー!!」
「別に怒ってる訳じゃないよ?
それよりも……ここに行ってみると良いよ」
騒がしくした元凶だったため、慌てて謝ったが全くの杞憂だった。
苦笑いしながらも地図上のある場所を指差し、アドバイスまでしてくれた。
そこは単なる海のようであったが「最近できた島だから地図には載ってないんだよねー」とのこと。
滞在時間5分足らずで湖畔を離れることが決定しまった。
ガバガバ旅行計画である。
*
「これは、凄い……!!」
隣人のアドバイス通りの場所に着くと、何とも形容し難い物が地面に刺さっていた。
荒廃した無人島に白銀の斧が!
\全てを叩き潰す巨大なる鎚/
サンドスター・ピュア――、純度100%のサンドスターで形作られたソレは、あまりに眩しく、持ち主の意思によって姿を変え、扱うには相応の素質が必要であることが一目瞭然だった。
そして、何の因果か目の前に居る少女こそが素質を持つ者である。
手を伸ばし、引き抜いてみるとソレは、取り回しの良い短剣へと姿を変えた。
「あれ?そういえば、何でこんなに都合良くあったのかな?」
しばらく星剣に見とれた後に気付いた。
護身用の武器をビーバー達に作って貰おうと湖畔を訪れたことは誰にも話していない、と。
かつて巨大な亀だったこの島に何故こんな剣があるのか、隣人のリンさん(仮称)とは一体何者なのか、全ては謎に包まれていた――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます