第57話 セルリアンハンターGT
ある日森の中、
「おい、お前!まだ大物が残ってる。さっさと逃げろ」
確かに今なら十分安全に逃げることができるだろう。
しかし、「お嬢さん、お逃げなさい(意訳)」と言われて安易に逃げることを選ばなかった。
1人で逃げるより同行した方が安全と判断し、保身に走ったのだ。……それで良いのか、主人公。
同行する旨を伝えたところ「そうか、邪魔だけはするなよ」と、思いの外肯定的な反応だった。
(明らかに臆病な性格なのに着いてくる事を選んだのか、鍛えれば大物になるかもな)
肯定的というよりむしろ過大評価されていた。
逃げた方が安全となればすぐにでも逃げ出すのだが、ヒグマには知る由もない。
――モグモグ。
逃げ回って消耗した体力を回復させるべく自作のおにぎりを頬張るアノン。 オイオイ死んだわアイツ。
……一応断っておくが、このおにぎりは無害である。
しかも、見た目が気に入らないと10を超える数のリテイクを繰り返しリヴァイアサン以上に鮮明なグラフィックになったような状態である。
無闇矢鱈と細部まで作り込まれたおにぎりは、心なしか輝きを宿しているようにすら見える。 なぜベストを尽くしたのか。
「腹ごしらえは済んだようだな。そろそろ着くぞ」
腹ごしらえとは言うが、実際戦いに参加するつもりなど毛頭ない。
むしろいつでも逃げられるように周囲を伺っているのだが、それが益々買いかぶりを助長していた。 †認識を改めて†
「いたぞ!目撃情報より大きいが、特に問題はなさそうだ」
既にキンシコウが交戦しており、リカオンがサポートとして常にセルリアンの背後をとっている。
更にヒグマが加わったことにより討ち漏らす心配もなくなり全力で戦えるようになったといえる。
「いきます!」
宣言と共にキンシコウが巨大化した――とも思える程の強大なオーラを纏う。
先ほどまで如意棒でいなしていた触手攻撃を正面から受け止め、弾き返す。
バランスを崩したセルリアンの背後に素早く回り込みながら打撃を叩き込む。
ピキピキッ......パッカーン!
直撃させた訳ではないが、衝撃だけで石にヒビが入り、ついには砕け散った。
「ふぅ……。今日が満月で良かったですね」
当然ながら、この発言に “I love you” 的な意味は無い。
むしろ、「月は出ているか!?」といったやりとりがあってもおかしくないような意味だ。
ごく一部のフレンズは月が太陽の光を反射した場合にのみ含まれるブルーツ波を瞳孔から取り込むことによって大幅なパワーアップをすることができる。
ただし、そのための必要量である1700万ゼノを越えるのは、どういうわけか満月の時に限られる。
これさえ満たせば戦闘力は10倍以上に跳ね上がるが、未熟なフレンズでは暴走しがちで気軽に使えるものでもない。
これがキンシコウが使った
力づくでセルリアンをねじ伏せた後、安全が確認されると、元々住んでいたフレンズ達が呼び戻され、無事ジャングル地方に活気が戻った。
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