第55話 破滅をもたらす一皿
~今回のあらすじ~
・初手から悪手
・そんな読者は多分2、3人しか居ない
・モブです よろしくおねがいします
*
親離れする事を決めたアノンは博士達から主に文字の読み書きとサバイバル術を教わった。
一文で説明を終わらせたせいで楽に習得したように感じるが実際は数日がかりである。
それでも早すぎると思うなら物覚えが良かったんだと解釈して欲しい。
\オシエカタモヨカッタノデス。ワレワレハカシコイノデ/
「さて、他にも色々教えても良いですが、どうせなら本業のフレンズから直接教わって来るのです」
「まずはじめにどこへ行くのか決めるのです」
島全体が描かれた地図を広げる助手。
地図上には各地方の主な施設が記されている。
「えっと、まずはサバンナに――「ダメなのです!」
親離れとは何だったのか、いきなり禁じ手を選ぼうとするアノン。
博士の鋭い指摘により、別の場所を選ぶ事になった。
*
結局選ばれた場所は、高山にあるジャパリカフェ。
意外ではあるが、不向きと言われつつも料理に挑戦しようとする程度には負けず嫌いであった。
是即ち、
そして現在、彼女はカフェを目指してロープウェイを必死で漕いでいる。
……が、途中で気付いてしまう。飛んで行った方が楽だという事に。
気付いてすぐ実行に移され、乗り物部分が中間地点で止まった状態で放置されることになった。
当然、乗り場まで動かす手段は限られてしまう。
飛べないフレンズからしてみれば、いとも容易く行われるえげつない行為であった。
※この小説を読んでくれてる鳥のフレンズのみんな!
絶対に真似しないでね!!
店内には、店主のアルパカ・スリと常連客のトキの他に白と黒の模様が特徴的なフレンズが居た。
「いらっしゃーい!よぉこそぉ!ジャパリカフェへー!」
最初にアルパカの声に迎え入れられる。
軽く会釈するとトキが会釈を返す。
紅茶を飲みながらじゃぱりまん(笹味)を食べていた白黒模様のフレンズはアノンに気がつくと立ち上がり、じっくり観察した後、一言二言発した。
「アノンちゃん、だよね?
面白い料理を作る子だって噂には聞いてるよ」
思ったより有名になっていることに戸惑いながらも頷くと、新メニューに出来ないかと考えたアルパカの勧めによって料理を振る舞う流れになった。……なってしまった。
完成した料理は今までと少しだけ違った。
その違いとは、外見。
今回の料理は、一見すごく美味しそうなサンドイッチである。
美味しい料理を作りたいという純粋な願いが、喜んで欲しいという祈りが、破滅へ至る料理を産み出してしまった――
不味そうに見えて不味いなら、耐えられるかもしれない。
しかし、今回のサンドイッチは美味しそうに見えて不味いのである。
滅びをもたらすものは、いつの時代も優しいものだ。
悪意による終焉には、必ず対抗する者が現れる。
ならば善意によるものならば――?
それはきっと、甘やかされた野生動物のように不幸な末路を辿るだろう。
この一皿はまさしく、料理であって脅威であった。
見た目に騙され、ほんの一口でダウンしたアルパカとトキ。
外見と違いすぎる味付けは天使のような笑みをみせる悪魔の手口そのものと言っても過言ではない。
皿の上に山積みにされたサンドイッチが導く先は、天国か地獄か――
だが絶望することはない。
「新メニューに加えるにはちょっと万人ウケしない味だよねー」
山積みのサンドイッチを全て食べ尽くす白黒模様のフレンズ。
何故彼女は無事なのか、その理由は意外なものであった。
進化の過程で食と味覚が一致しなくなった動物が居る。
例えば、パンダ。
パンダといえば笹を食べているイメージがあり、草食と思われがちだろう。
しかし、実際は肉の旨味を感じる事が出来ず、笹を好んでいる肉食動物である。
聡明な読書の皆様には何が言いたいか、もうお分かりだろう。
何を隠そう、白黒模様のフレンズの正体はジャイアントパンダのリンリンなのである!
不味い料理だろうと美味しそうに平らげることなど彼女にとっては容易いことであった。
全てを解決したリンリンは「今度会ったらまた面白い料理を作ってね?」と言い残し、クールに去って行った。
……ついでに例のロープウェイも彼女が乗り場に戻してくれていたのだが、どのような手段を用いたのかは全くの謎である。
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