第1章 外伝

第44話 息もつかせぬ追跡劇(第41.5話)

――ボス、2人には心配いらないって伝えてあげてね?


小さく呟かれた声を、大きな耳が捉える。



リンちゃん?1人でどこ行くの?

それに何でそんなみたいな言い方なの……?


横になっていた姿勢から慌てて起き上がるサーバル。

慌てて声が聞こえた方を見たが、既に声の主の姿は見当たらない。

暑くもないのに汗が滲む。

方角だけでも分かるうちに、と行動に移った。


「かばんちゃん、起きて!リンちゃんが――




   *




同時刻、港に向かって爆走するバスを目撃した2人組が居た。


「あの光はバスなのだ!

こんな夜中にあのスピードでどこかに行くのは おかしいのだ……

何かあったに違いないのだ!!」


「おー、珍しいねー。今回は同じ意見だよー」


「フェネックもそう思うのか?

これは――パークの危機なのだー!!」


「そこまでは分からないけどねー?

まぁ、怪我しないように気をつけて追いかけようか?」



今までにない速度を出して走るバスと追いかける2人。

その差はどんどん開き、ライトの光が点の様に見える程となっている。


「いくらなんでも速すぎるのだ」


「うーん、これは追い付けそうにないねぇ?」



「おや、お困りのようだね?

バスに追い付きたいならコレを使うといい。

使い方は簡単。川に浮かべて乗っておくだけでいい。

それに、後々、コレが必要になるだろうからね」



白いフードで顔を隠した闖入者に声を掛けられる。

地面には大きめの丸太が2本転がっていた。


「誰だか分からないけど助かったのだ!」


「ありがとねー。これなら追い付けそうだよ」


2人がそれぞれ別の丸太に跨がり、川を下りはじめて振り返った頃には闖入者の姿はなく、白い花弁だけが残されていた。




    *




「やっと追い付いたのだ!」


「アライグマさんにフェネックさん!?どうしてここに?」


「こんな時間に凄いスピードで走ってたからねー。

気になって追いかけて来たんだよー」


「そうなんですか……

実は今、海の上で大変な事が起こってるみたいで、急いでそこへ行きたいんですが……」


遠くに望む、動く島を指差す。


「だったらバスを船に改造するのだ!

この丸太があればすぐ前にやった様に出来るのだ!」


「はい、是非お願いします!

それから、作業が終わったら2人で火山のフィルターを確認しに行って貰えますか?

特に問題ないとは思いますが、念のために」


「念のため、ねぇー?

仕方ないなぁ。今回はそういう事にしておくよー」


訝しげな視線を向けるフェネック。

少し、考える様な素振りを見せたが、ための発言だと気付いたのか、すぐに承諾する。




作業が終わるとすぐに2人と別れ、それぞれの目指す場所へと向かって行った――

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