第29話 雷光・渦

最速のタイムで家の補強を終えた私達は、謎の振動の原因を探しにバスを走らせていた。

そして、その正体は、探すまでもなく、図書館へ続く道の途中にて姿を現した。



それは、蒼と白が特徴的な、巨大な蜥蜴トカゲの様な姿をした――セルリアン。

背中から突き出た結晶状の鉱石は、バチバチと音を立て帯電している。


「何あれ……?あんなセルリアン見たことないよ」



初めて見るセルリアンに怯えてか、落ち着きがないサーバル。



――ああ、アレはきっと私と同じく星の記憶サンドスターから生まれたもの。

なら、都合が良い。

サーバルちゃんが戦意喪失してるのも、巻き込まなくて済むから悪いことじゃない。


「ここは私に任せて。片付いたら、すぐ行くから、先にビーバー達のところに戻っててね」


走行中のバスの窓から飛び降りる。

意識を集中し、サンドスターで、自分の身の丈より長い太刀を生成する。

視線をバスの方にやると、心配そうな二人の顔が見えた。


――大丈夫。

真面目に戦うべき相手ではあっても、到底、本気で戦うに値しない程度の相手だから。



のそのそと近付いてくる異形のセルリアンに、こちらからも接近し、頭部に太刀を振り下ろす。


バキィッ!


鈍い音が響き、セルリアンの角が砕ける。

出会い頭の一撃に怒ったのか、十数メートルはある身体を鞭の様にしならせ、タックルをしかけてきた。

これを大きく飛び退き回避する。

丁度、目の前で止まった胴体に、袈裟、逆袈裟、唐竹の三連撃を浴びせる。

これに怯んだセルリアンは転がる様に後退し、背中の鉱石からの放電を強める。

更に、口に溜めた雷球を放つ。

雷球は地面に着いた後も、弧を描き、こちらに向かって来る。


それは、一般的なフレンズにとって、死を覚悟する程の攻撃なのだろう。

しかし、今、対峙している者にとっては、目の前の脅威を追い払う程度の、機械的な攻撃にしか見えない。


当然、圧倒的な実力差に加え、セルリアンを滅ぼす意志さえ見せるフレンズリンに――





    パッカーン!!





――その雷撃が届く事は無かった。

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