第8話 その獣、最狂につき
薙ぎ払いの一撃を受け流し、接近を試みる。
当然、防がれる事は想定内であり、すぐに振り降ろしの二撃目が繰り出される。
接近する勢いを削がれながらも躱す事が出来た。
しかし、後半歩で懐というところまで来て、熊手を短く持ち替えた振り上げに行く手を阻まれる。
「……やっぱりこうでないとね」
大きく飛び退くで三撃目を回避すると、誰にでもなく小さく洩らした。
もっと疾く、鋭く、重く――――
先程のやりとりを三度繰り返す。
お互いに力量をある程度把握してきた五度目の接近で、初めて大きな変化を起こした。
初撃の横薙ぎに対し、二本の短剣で両側から一点を刺す様に突き出し、熊手を破壊した――
「私の勝ちみたいだね」
「あぁ……。
ここまで見事にやられたら仕方ないな。
それにしても、よくこんな曲芸じみた真似をしたもんだ」
そう言うヒグマの表情からは闘う前とは変わって、多少の興奮と笑みが読み取れる。
まだ疑惑の色もあるが、ぶつかり合って相互理解を深める方針は間違っていなかったのだろう。
*
「良かったんですか?
野生開放してれば、あんな結果にはならなかったと思いますよ?」
いたずらっぽく笑いながら問いかけるキンシコウ。
「そう見えたか?
まぁ、確かにそこら辺の木の枝の方がよっぽどマシな武器を使うようなヤツには負けなかったかもな」
ヒグマが言い放った衝撃的な事実に、キンシコウは二の句を継げなかった。
リカオンに至っては、博士達に命じられた食材探しのオーダーが長引き、その場に居合わせる事すらできなかった――
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