第6話 地の利と気持ちの雑学
恐る恐る声の主を一瞥する。
どう考えても面白そうな事をしてたから声をかけた訳ではなさそうだ。
「セルリアンが居たから闘ってただけだよ」
普通に答えれば大丈夫なはず……
外見の特徴からしてセルリアンハンターのヒグマだし話は通じると思う。
「だったら何で石を砕かないんだ?
だいたい地面がこんなになるような大型のセルリアンが出たなんて報告は受けてないぞ」
……訂正、通じると思ってた!
明らかに力づくで聞き出そうとしてるのが分かる。
報告は受けてないって言いますけどね。
だったらね、事情ぐらい最後まで聞いてよ!!って話ですよ。
私はそう思いますけどね!
「私は石を集めてる。
例え危険な性質があったとしても役立つ方法を見つけるために、私は石を研究する」
きっとこの発言は悪手なのだろう。
どんなに聞く耳を持って無いように見えても誤魔化せないとまでは言えない。
正直に生きる為に、楽しさを優先する為に、私は答えたのだ。
「ヒグマ。君から、最強の称号を剥奪する」
挑発した。
ヒグマの目は、静かに覚め、獲物を捉える前のように冷静になっていく。
直後。
私はヒグマに背を向け、全力で下り坂を駆け出した。
我ながら完璧な作戦!!
丁度ここはヒグマが苦手な下り坂で、視界も良くない。
それでも対面した状況から逃げるのは難しい。
そこでさっきの挑発。
私は完全に逃げるつもりだったのに対し、ヒグマは私の出方を窺った。
ここで決定的に差がついた。
後はこのまま としょかん に逃げ込むだけ
「いやー、一時はどうなるかと――――」
としょかん の中に居たのは博士と助手、そして、おそらく……キンシコウとリカオン。
私は結末を理解した。
それは、誰でもない自分が、誰よりも知っていた。
そう、誰よりも、自身の失敗を、自身の策略を、私が一番、知っていた。
誰よりも、
誰よりも、
多く……。
――知っていた。
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