第164話 大成、ゴッドマザーの口から広内金先輩と青葉の信じられないような関係を聞かされる

 俺の鼓動がとてつもなく早くなっているのが自分でも分かる。

 でも、これはある意味チャンスだ。もし青葉あおばが本当に俺の妹なら諦める事が出来る。青葉が俺の妹でなかったとしても、俺は広内金ひろうちがね先輩との関係に縛られる事がないのがハッキリした。

 でも、本当に妹だったら、俺は青葉をスンナリ諦められるか?それに、俺は広内金先輩や石狩いしかりさんの、それに恐らく美留和びるわ先輩もだろうけど、三人の本音を知ってしまった。そちらとどう向き合えばいいんだ?

 だが、ここで迷っていては千載一遇のチャンスを逃す事になる。聞くなら今しかない・・・


「・・・1つ聞いてもいいかな?」

 俺は出来るだけ冷静を装って話したつもりだったけど、口から出た声はあきらかにガラガラ声だ。自分でも緊張していると言わざるを得ない。

「・・・どうした?浮気がバレて焦ってるのか?」

 ゴッドマザーが俺を揶揄うかのように笑いながら言ったけど、たしかにこの状況ではゴッドマザーに揶揄われても仕方ないなあ。

「俺が広内金先輩の隣にいる理由は分かったけど、こんな重要な話なのに、何故、この席に座ってるんだ?」

 そう言って俺は青葉の方を向いたけど、青葉も言われてみて「ハッ」となったようで思わずといった感じで俺の方を振り向いた。

「た、たしかに私がここにいるのは変だ・・・大成たいせいがいるのは全然不思議ではない、いや、むしろ大成はディナーに招待されるだけの理由があるけど、私は完全なる部外者だから、この場に居合わせている事自体が不自然だとしか思えない」

「た、たしかにボクも駒里こまさとクンに指摘されて初めて気付いた。青葉クンが駒里クンとはボク以上の古い付き合いだったとしても、この席にいる理由が見当たらない。むしろ、この席でお婆様が言ってた話が全て事実だとしたら、逆に青葉クンはこの席にいない方が都合がいいに決まってる」

 そう言って広内金先輩も俺の方を向いた。俺も青葉や広内金先輩が言ってる事の方が正しいと思ってる、いや、それが自然だと思う。

 ゴッドマザーは「コホン」と軽く咳払いしてから超がつくほどの真面目な顔になった。

「・・・さっきまで、青葉さんの家で長々と話し込んでいたのは、色々と事情が変わったから、青葉さんのお爺さんやお婆さん、それにお母さんに確認を取っていたからだ」

「「「確認を取っていた?」」」

「そう。本当なら青葉さんが高校を卒業したら話すつもりでいた事が、そうも言ってられない事態になった、とでも言おうか、とにかく今まで黙っていた事を青葉さんに言う事にしたのじゃよ」

 それだけ言うとゴッドマザーは「はーー」と短くため息をついた。

 ゴッドマザーは青葉をずっと凝視している。青葉もゴッドマザーの方を向いている。きっと全ての言葉を聞き逃さないようにしているとしか思えない。

「・・・まず先に行っておくけど、青葉さんはこの席に座るべき人だと言っておく」

「『この席に座るべき人』?どういう意味ですか?もしかして、私のお父さんの事を知ってるんですか?」

「もちろん、婆やは君のお父さんが誰なのかを知っている」

「「「!!!!! (・・! 」」」

 明らかにこのゴッドマザーの言葉を聞いて青葉は動揺している。その証拠に目をパチパチさせているし手はブルブル震えている。それに唇がカラカラに乾いている。

「そ、それで、私のお父さんは一体、どこの誰なの?教えて!」

 青葉は懇願するかのようにゴッドマザーに迫ったがゴッドマザーはあくまで冷静だった。

「その前に・・・君がこの席に座っている理由を話そう」

「早く教えて下さい!」

「分かった・・・簡単に言えば、君は我が夫、広内金山大樹さんたいきの妹の孫じゃ」

「「「へ?」」」

 おいおい、想定外の事を言い出したから俺も思わず固まってしまったぞ。でも、ゴッドマザーは嘘を言ってない。という事は・・・

「ちょ、ちょっと待って下さい!という事はボクと青葉クンは再従姉妹はとこ同士になるという事ですかあ?」

 広内金先輩が裏声のようなトンデモナイ声で叫んだけど、青葉は言葉が出てこないのか口をパクパクしているだけだ。

 ゴッドマザーは「その通りだ」と軽く言った後、ちょっと怖い顔になった。

華苗穂かなほ、広内金山遠矢さんとおやの子供の名前を全て上げなさい」

「へ?・・・の子供といえば、『北のホテル王』こと広内金山東雲さんとううん、その弟の大蝦夷銀行頭取の広内金山大樹の二人でしょ?」

「そう、表向きは、だけどね」

「「「表向き!?」」」

「北の炭鉱王、つまり我が義父の広内金山遠矢には隠し子が一人いる!それが青葉さんのお母さんのお母さん、串内くしない三笠みかささんじゃ」

「「「えーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」」」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る