第165話 大成、大人の世界の話を聞かされる
「・・・あれは25年、いや、30年くらい前かなあ。とにかく平成どころか昭和の時代、バブルが始まった頃の話じゃよ」
ゴッドマザーはまるで
「・・・世間はバブルだ好景気だ日本は世界一だとか言って浮かれてたけど、広内金家は国のエネルギー政策の転換で炭鉱が全て閉山したから経営再建の真っただ中だった時の話じゃ・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・我が義父、北の炭鉱王こと広内金
「「「・・・・・」」」
「・・・簡単に言えば義母から『夫はかつて浮気をした女性が一人いて、もし生きてるようなら会いたいと言ってるから探して欲しい』と頼まれたよ。でも、同時に『かつて夫の秘書をしていた女性だけど、結婚を理由に退職したけど、どうやら結婚してなくて私生児の形で子供を産んだようだから、夫の子供である可能性が高いから子供も合わせて探して欲しい』とも言われたよ。義母も余命半年ほどの夫を責める気はないし、むしろ今まで何も支援してやれなかった事を詫びたいと言ってたくらいだから、婆やも
「「「・・・・・」」」
「ただ、三笠さんをこの場で認知するという事は広内金家の負債を引き受ける事にもなりかねないから、義父と義母、それと三笠さんの母親との間で交わされた約束が『広内金家の債務整理が終わったら三笠さんを義父の子供だと認知して、三笠さんに慰謝料の名目で資産の一部を譲る』として、それを書面で残したのじゃ。三笠さんも三笠さんの母親も最初は慰謝料はいらないと言っていたのじゃが、義父が受け取るように何度も言ったから最終的に折れた格好になったけど、義父は資産の1割とまで言ったけど三笠さんは金額には全然拘ってなかったのは事実じゃよ」
「「「・・・・・」」」
「義父はその後まもなく亡くなって、三笠さん母娘も一般の参列者として葬儀には来たし、三笠さんの母親が亡くなった時には広内金家を代表して婆やが行ったよ。もちろん、三笠さんは驚いたけど、義理とはいえ姉妹だとは大っぴらに言えないから形式的な挨拶しかしなかったよ」
「「「・・・・・」」」
「だけど、広内金家の負債の整理がバブルのお陰でアッサリ終わって、広内金商事の経営が右肩上がりで回復した頃に、義母が二人の息子、山東雲と
それだけ言うとゴッドマザーは広内金先輩に向かって『ニヤリ』としたけど、広内金先輩は「アハハハ」と笑って誤魔化した。もちろん、青葉はそんな事は全然知らないから口をぽかーんと開けたまま唖然としていたけどね。
「・・・慰謝料の代わりと言っては何だが、5年くらい前に『めでたい焼き』の店舗を新しく建て替えるという話が出た時に、三笠さんが『大蝦夷銀行から融資を受ける際の保証人になって欲しい』と婆やに言ってきたのじゃが、それを婆や個人の金であの土地を買って店を建てて、それを三笠さんの夫の
ここまでゴッドマザーはどちらかといえば淡々と語ってたけど、俺もゴッドマザーの様子をつぶさに観察していたから、ゴッドマザーが嘘を言っていたとは思ってない。つまり、広内金先輩と青葉は
「・・・さて、前置きが長くなってしまったが、青葉さんの父親について話す事にするよ」
そう言うとゴッドマザーはテーブルの上に置いてあった黒縁の眼鏡、まあ老眼鏡なのは間違いないだろうけど、それを掛けたら懐からスマホを取り出した。
あ、あれっ?
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