第162話 大成、ゴッドマザーから昔の話を切り出される

 俺は思わず広内金ひろうちがね先輩の方を向いてしまったけど、広内金先輩自身も『信じられない』と言った表情で俺の方を向いた。

「・・・お、お婆様、今言った事は本当なのですか?」

 広内金先輩が恐る恐ると言った表情でゴッドマザーに尋ねたけど、動揺しているか声が完全に枯れている。俺だって信じられないといった表情でゴッドマザーの方を向いたけど、当のゴッドマザー本人は澄ましたような顔をしている。

 俺は出来るだけ動揺しているのを悟られぬよう、無理して苦笑いしてたけど、とてもではないけど平常心を保てないからゴッドマザーが言う言葉の真実を見抜ける自信がない。でも、さっき『華苗穂かなほはお主の許嫁いいなずけだ』と言った時のゴッドマザーは嘘をついてなかった。

「・・・やれやれ、お前まで知らなかったとは婆やも想定外だったがのお」

 ゴッドマザーはサバサバしたような表情で広内金先輩の方を向いて言ったけど、怒ってるようには感じなかった。

「だいたい、婆やは嘘をついたら目を射抜かれるやもしれないのだぞ。こんな事で目を射抜かれたら正直たまったものではないぞ」

「で、ですけど、ボクにとっては『青天の霹靂』とでも言うべきか『寝耳に水』とでも言うべきか・・・」

 広内金先輩は動揺を隠しきれずにいるけど、ゴッドマザーは「はーー」と再びため息をついたかと思ったら物凄く真面目な顔になって広内金先輩の方を向いた。

「まあ、たしかに幼稚園くらいの年齢の女の子は気に入った男の子に『将来、この子と結婚する』などと真面目な顔をして話すのは珍しい事ではないけど、それを年頃になるまで持ち続けているのは殆ど稀じゃ。だが華苗穂、お前はではないのか?」

「!!!!! (・・;)」

「今日は青葉あおばさんが来ているから隠しているだろうが、普段は自分の机の上に1枚の写真を飾ってるのだろ?婆やが知らぬとでも思っていたのか?」

「そ、それは・・・」

 広内金先輩はそれっきり顔を真っ赤にしたまま俯いてしまったけど、時折俺の方をチラッチラッと見ている。ゴッドマザーは「やれやれ」と言わんばかりに肩をすくめて両手を軽く開いたけど、別に怒ってる訳ではなさそうだ。

「・・・大成君、君は覚えてないかもしれないが、華苗穂と君が最初に会ったのは清風山せいふうざん高校の今の本校舎の落成式典の時じゃよ」

「へ?・・・」

「14、5年前の話じゃ。本校舎の工事を請け負ったのが駒里こまさと建設だから、君は当時社長だった駒里幾寅いくとらさんの孫という立場で、華苗穂は初代理事長ホロカ・トマム氏の協力者・広内金山遠矢さんとおや、本校舎建設にあたって多額の寄付をした広内金山東雲さんとううんの弟の孫という立場で出席して、食堂で関係者一同が記念パーティーを催しておる。それが君と華苗穂が最初に会った時なのじゃが、その時に君と華苗穂が一騒動を起こしてなあ・・・」

 おいおい、14、5年前に俺と広内金先輩が会っている?しかも清風山高校の本校舎の落成式典だとお!?俺は全然覚えてないぞ。でも、ゴッドマザー自身が嘘は言えないと宣言している以上、事実だとしか思えない・・・それに広内金先輩自身も「ハッ」という表情をしているから、恐らく広内金先輩はゴッドマザーが言いたい事が何なのかを分かったとしか思えない・・・一体、何があったんだ?

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