第160話 大成、ゴッドマザーから逆に質問される
テーブルの上には豪勢な料理が所狭しと並んでいる。恐らくどこかで調理された物を
「・・・すまぬが婆やが連絡するまで二人は席を外してくれ」
ゴッドマザーは平野川さん・島松さん母娘に部屋から出るように命じたので、二人は一礼をした後にリビングから出て行った。だからこの部屋にいるのは本当に4人だけになった。
二人が完全に部屋から出たのを見届けた後、ゴッドマザーは改めて俺の方を向いた。何を考えているのか、俺には正直全然分からない・・・
「安心したまえ。あの二人は絶対に君の事を口外せぬ。それは婆やが保証する」
「・・・どうして言い切れる?」
「この婆やは政界や財界の裏事情もよーく知っておる。それに、我が
「「「!!!!! (・・! 」」」
た、たしかにそうだ、言われてみて初めて気付いた・・・恐らく理事長は校長先生経由で
「・・・まあ、政界や財界の裏事情は婆やがあの二人に調べ上げさせて報告を受けた物がほとんどじゃが、今の総理大臣だけでなく自由民政党の大物や財界の大物の首が吹っ飛ぶようなスキャンダルを婆やは両手では数えきれないほど知っておる。それも婆やが本人にボソッと言ったら顔を青くした物ばかりじゃからのお。でも、週刊誌やワイドショーで取り上げられた物は一つもないぞ。何なら、今の総理大臣の首が吹っ飛ぶような話を2、3個教えてあげようか?」
「俺はそんな話は興味ないから聞く気はない。でも、あんたが嘘を言ってないというのは分かった」
「やれやれ、顔の表情や言葉遣い、音程の変化とかで嘘をついているかどうかを見極められるのは厄介じゃのお」
「そういう事だ。俺もその気になったら一瞬であんたの目を射抜く事も出来るけど、母さんから警察沙汰になるような事をするなと止められてるから、さすがにやめておくよ」
「それは助かる。でも、君に対しては嘘をつけぬという事は理解した」
「頼みますよ」
「・・・どうした?遠慮せずに食べていいのじゃぞ」
ゴッドマザーはこの時、初めてニコッとして俺たちに食事するよう促した。広内金先輩は「いただきます」と小声で言ってから食べ始めたけど、明らかに恐々しているのが丸わかりだ。それもゴッドマザーを怖がっているというより俺を恐れているのだから、俺が苦笑せざるを得なかった。対照的に
「・・・
ゴッドマザーは右手の箸で寿司を取りながら言ったけど、俺はまだ料理に何も手を付けてない。でも、たしかにディナーに招待してくれたのに何も食べないのでは失礼だ。俺はテーブルの上にあった布巾で手を拭くと料理に手を付けた。でも、この料理が美味しいのか、それとも
「・・・ところで大成君、君に渡したケータイ、無くしてないじゃろ?」
10分くらいの無言の時間が流れた後、突然ゴッドマザーは俺に話し掛けた。俺は黙って頷くと足元に置いてあったコートのポケットからキッズケータイを取り出し、それをテーブルの上に静かに置いた。
ゴッドマザーは「ウンウン」と頷くと俺の方を向いてニコッとした。
「・・・大成君、なぜ君にこのケータイを渡したのか、その理由が分かるかね?」
おいおい、ゴッドマザーが嘘をついてるかどうかは分かるけど、心の中まで見通す事は出来ないぞ。ようするにゴッドマザーの真意を当ててみろって事なんだろうけど、さすがに俺の考えがゴッドマザーと一緒だという保証はないぞ。
「・・・正直に言うけど分かりません。あくまで俺の考えですけど、あのキッズケータイの連絡先はあんたと広内金先輩の二人しか入ってなかった。だから、この二人のどちらかに連絡すればこの家に入る事が出来るというメッセージだと踏んだ。あんたに連絡するというのは降参を意味する。最初は、広内金先輩に連絡すれば何らかの形でドアを開けられるように話がついていたのではないかと推測したけど、あんたが最後に「建物を壊したら修理費用を伯父さんに請求する」と言った時に、おそらく俺が窓やドアを破壊して中に入れるというのを知ってると踏んだから、広内金先輩の部屋のベランダに行って、広内金先輩に連絡して窓を開けてもらえという意味だと解釈した。だから俺は広内金先輩の部屋のベランダまで登って行ったのさ」
「ま、たしかに君の手に掛かれば戦艦
「勘弁してくださいよお。たしかにやろうと思えばやれるけど、それをやったら丸1日は動けなくなりますよ」
「おい!婆やは冗談で言ったつもりだったけど、本当にやれるとは思わなかったというのが本音じゃぞ!」
「多分やれるとは思うけど試した事が無いだけだ。防波堤のテトラポッドならこの手でぶっ壊した事は何度でもあるぞ」
「それだけでも恐れ多いわい。冗談抜きに人智を超えた、まさに異能の持ち主としか言えないぞ」
「誉め言葉として受け取っておきますけど、俺は正真正銘の人間ですよ。超能力者でもないし、異世界の生まれでもないです。チート能力のように思うかもしれないけど、
俺はあくまで淡々と事実だけを述べているけど、ゴッドマザーは『冗談だろ?』と言わんばかりの表情というか呆れたような表情で俺を見ている。でも、その様子は俺を恐れているというよりは、まるで子供が
「・・・最初の話に戻すけど、君ならこのマンションの窓なら数秒あれば壊すのに十分だろ?」
「まあな。強化ガラスなら『気』を練るのに5秒あればお釣りがくるさ」
俺はそう言ってから肩をすくめるようにして両手を少し開いてお
そう、親父が「一人で
戦国時代、鉄砲が使われるようになった事と西洋の
気の強さは個人差があるから一概に言えないけど、俺は厚さ0.5ミリ程度の鉄板なら一瞬のうちに打ち抜ける。警察などが使っているポリカーボネイト製の盾だって3秒もあれば十分だから、接近している間に気を練れば触れた瞬間に相手の腕ごと吹き飛ばすのは容易い。さすがに史上最強とまで言われる旧日本海軍の戦艦
『気』を防ぐには『気』で相殺するしかないのだから、その『気』を扱えない人にとっては死を招く技でしかない。だから親父は格闘戦に限定すれば世界最強と言われるアメリカ陸軍特殊部隊、通称グリーンベレー相手でも1対2、いや、1対3だろうが負けない。ただし、『相手に直接触れないといけない』という欠点があるから、いくら親父といえども格闘以外ではグリーンベレーに勝てない。親父やジイは頭突きでも肘打ちでも膝蹴りでも、全身の全てで『気』を打ち込む事が出来るけど、俺はまだ手首より先、足首より先からしか出せない。
しかも『気』を周囲に放つ事でレーダーの役割をする事も出来る。さらに『気』を防御に使えば弓矢や鉄砲を気にしなくても相手に近づく事が出来るのだから、確実に相手に仕留める事が出来る。もっとも、これらは戦国時代の鉄砲、つまり「初速が遅い」「連射できない」「有効射程距離が短い」
あ、そうそう、俺が野球部とサッカー部相手に勝負した時には気功術を使ってインチキしたけどね。野球部の時は恐らく170キロ以上のストレート、サッカー部の時は250キロ以上の弾丸シュートになってた筈だぞ。陸上部と水泳部、スキー部の時は純粋に俺の圧勝だけど。
俺がもし伊賀流忍術に加えて気功術を柔道と組み合わせて使えば、
「・・・大成君、君は本当にこのケータイに見覚えが無いのか?」
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