第146話 大成、一人だけ意思表明しない人がいる事に気付いて逆に悩む
俺たち7人はコメダ珈琲を後にした。
石狩さんは最後まで俺以外の人からイジラレ続け、「穴があったら入りたい」と漏らしていたけど、広内金先輩と美留和先輩から「一緒に2番目を目指して頑張りましょうね」と言われ「はーーーー・・・・」と長ーいため息をついていたのが印象的だった。
広内金先輩とは改札口のところで分かれたけど、美留和先輩は1番線の電車、俺たちは6番線の電車だったから改札口を入ってすぐのところで分かれた。
俺たちは新千歳空港行きの快速電車に乗ったけど、札幌の次の停車駅が新札幌だから満員の車内で5人とも立っていた。
俺たちは次の停車駅である新札幌で降りた後、改札口を一緒に出たが、その直後に青葉が思い出したかのように声を掛けた。
「太美さーん」
「ん?どうした」
「これ、あげるよ」
そう言って青葉は自分の上着の内ポケットから差し出したのは、石狩さんが欲しくて映画館の受付の人にゴリ押ししていた、『プリティ・キュアオールスターズ』映画館限定カードだ。
「えー!ホントにいいの!!」
「いいわよー。私は別に限定カードが欲しくて見た訳じゃあないからねー」
「そ、それじゃあ遠慮なく受け取ります!」
「これが欲しくて映画館に行ったんでしょ?」
「た、たしかにこれがあれば元気百倍だあ!」
石狩さんは満面の笑みを浮かべながら青葉から映画館限定カードを受け取ったけど、受け取った時に青葉から小声で何かを言われ、顔を真っ赤にしてたけど何を言われたのかまでは俺には分からなかった。
そのまま石狩さんは俺の方を見てニコッとしながら「月曜日に会おう」と言って右手を突き出したから、俺も右手をグーにして軽く突き合わせてから別れた。その時の石狩さんは清々しい顔をしていた。
残ったのは俺と
「・・・そう言えばさあ、
何の前触れもなく青葉が後ろを振り向いたかと思ったら、いきなりこんな話をしてきたから俺の方が一瞬だけど面食らった形になった。
でも、青葉が言っていた意味は理解できる。明らかに石狩さんは俺に好意を持ってるけど、石狩さんは謙虚というか一歩控えたというか「わたしはいつまでも待ってるわよ」と言ったにも等しいのだから、青葉は俺に石狩さんの気持ちに応えてやる気があるかどうかを聞いてるのだ。
「・・・あたしも気になるなー」
「ウチもだよー」
「たいせー、教えて欲しいなー」
おいおい、結局、3人揃って俺の答えを聞きたがってるのかよ!?まあ、たしかに俺はコメヤで石狩さんの問い掛けに対して何も返答しなかったどころか、青葉たちがあの席にいる事をバラしたことで、ある意味、『罰ゲームという名のデート』を『本当の罰ゲーム』に変えてしまったのだから石狩さんにとっては気の毒な結果に終わったけどね。でも、青葉たちが「もし、あの時に」俺がどういう返事をしたのかが気になるのは無理もない。
「はーーーーー・・・答えたら明日のケーキバイキングは無しになるのか?」
俺は長ーいため息の後にそう言ったけど、内心憂鬱だった。心底そう思ったけど、楓も緑も「いいよー」と妙に軽ーい返事をしたし、青葉も「言っちゃえー」とか揶揄ってるから、「あー、こりゃあ正直に言おうが言うまいが楓も緑も無理矢理連れ出す気だな」というのが分かった。俺は一瞬、不真面目に答えようかと思ったけど、考え直して正直に答える事にした。
「・・・たしかに石狩さんの言う通り、俺が1番目の子を選ばなかった時、もしくは1番目の子が俺を選ばないと分かった時には石狩さんを選んでもいいかなー、と思ってるのは事実だ」
「「「えーーーー ( ゚Д゚) 」」」
「おいおい、こんな事で驚くなよ。『考えてもいいかなー』のレベルだぞ!?」
「だってさあ、大成と太美さんだったら蚤の夫婦だよー。それでもいいのー?」
「そうだよー。それに太美先輩はブラコンだって噂を聞いたよー」
「兄貴の分際で太美先輩と付き合うのは生意気だあ!」
おーい、正直に答えておいてそれはないだろー。だいたい、楓と緑はぜーったいに俺の1番になれないのが分かってるのに何を騒いでるのか、俺には全然理解できないぞ。それに・・・青葉は今のままなら俺の妹・・・まだ確定した訳ではないけど・・・俺は青葉を選ぶことは出来ない。青葉が本当に俺の妹ではないと分かった時には俺は青葉を選ぶ気でいるけど、そうでなかったら・・・
そういえば・・・美留和先輩は広内金先輩から突っ込まれた時に相当焦ったような顔をしていたから、もしかしたら俺に気があるのかもしれない。広内金先輩も2週間前の罰ゲームの時の最後に起きた事件はもしかしたら・・・。石狩さんは意思表示をしたけど、楓と緑はこの際無視して考えるとして、今日いたメンバーの中でただ一人、青葉だけは何も言ってない!!
青葉は俺を単なる幼馴染としか見てくれてないのか、それとも俺が選んでくれるのを疑ってないのか・・・青葉は俺の事をどう思ってるのだろう・・・
俺は無言で青葉の背中に問いかけたが、当たり前だが青葉が答えてくれることはなかった・・・
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