第143話 大成、再び罰ゲーム(?)でデートする⑲~マジかよー!?~

 石狩いしかりさんは店内中に響くかのような大声を上げて立ち上がったから、思わず周囲の人や店員さんが一斉に石狩さんに注目したほどだ。石狩さんが「す、すみません」と言って軽く頭を下げて再び座ったけど、明らかに頭の上に『?』が2つも3つもつくような表情をしているから、俺は思わず吹き出してしまったほどだ。

駒里こまさとくーん、わざと答えをはぐらかしたよねえ」

「いんや、俺は嘘を言った覚えがないぞ」

「答えたくない気持ちは分かるけどさあ」

「俺だって言ってもいいかなあとは思うけど、この状況は『壁に耳あり、障子しょうじに目あり』の典型だぞー」

「へ?・・・それってことわざ?」

「そうだよー」

「何それ?」

「石狩さーん、この諺は『どこでだれが聞いているかわからず、秘密はとかく漏れやすい』という意味ですよ」

「そ、それじゃあ、どこに、誰がいるんだ?駒里君は気付いてるのか?もしそうなら教えてくれないかあ!?」

 石狩さんは半信半疑といった顔で俺を真っ直ぐ見たけど、俺はニコッとしながら

「俺たちのテーブルのパーテーションを挟んだ隣のテーブルに誰がいると思う?」

「隣?」

 そう言ってから俺は立ち上がり同時に石狩さんも立ち上がってパーテーションを挟んだ隣のテーブルを覗き込んだけど、そこにはが座っていた。でも、俺たちと視線が合った途端、苦笑いをした。

「そういう事ですよね、広内金ひろうちがね先輩、それに美留和びるわ先輩」

「はあ!! ( ゚Д゚) 」

「嘘じゃあないですよー。誰がどう見たって広内金先輩と美留和先輩ですよねえ」

「マジかよー!! ( ゚Д゚) 」

 そう、そこにいたのはロン毛でキザな眼鏡を掛けたチャラ男くんみたいな男子高校生に広内金先輩、茶髪でちょっとチャラチャラした巨乳の女子高生に美留和先輩がいたのだ。二人とも舌をベロッと出して「バレたか」と言わんばかりの表情で右手を軽く振っている。

「い、いつから駒里君は気付いてたんだ?」

「ん?新札幌駅の改札口で」

「えーーー!どうしてあたしに教えてくれなかったんだよお」

「だってさあ、それを言ったら本当の意味での罰ゲームになるかと思って言えなかったんだぞ」

「という事はさっきのセリフは筒抜けじゃあないかよー」

「さっきのセリフどころか、時計台で腕を組んで写真を撮ったのもバッチリ見られてますよー」

「マジかよー」

 そう言って石狩さんは顔を真っ赤にして頭を抱えてしまったけど、全ては後の祭りだ。

「石狩さーん、あと3人いるぞー」

「勘弁してくれよなあ、どこにいるんだあ?」

「俺から見たら、俺たちの後ろのテーブルだ。そこに3人、の奴がいるぞ」

「はあ! ( ゚Д゚) 」

 俺に指摘されて石狩さんは慌てて振り向いたけど、そこには小学生みたいな服を着て眼鏡を掛けて背中までありそうなロングへアーを三つ編みやツインテールにした青葉あおばかえでみどりが苦笑いしながら手を振っていた。

「まさかと思うけど・・・会長たちも朝からずっと・・・」

「そうだぞ。俺は駅につく前に気付いたけど無視してた」

「はーーー・・・これって、兄様や羽帯はおびさんが仕組んだ罠じゃあないよなあ・・・」

「いんや、これは俺の想像だけど、一昨日の夕方に俺と石狩さんがWcDで話した内容をこの中の誰かが聞き留めて、それで俺たちを監視する気になったんだろうな」

「羽帯さんの質の悪いイタズラかと思ったぞ」

「ま、そのあたりは本人たちに正直に白状してもらいましょうか」

 そう俺が言うと青葉たち全員は苦笑いをしたけど、石狩さんは顔を真っ赤にしたままヘナヘナと座り込んでしまった。気持ちが分からない訳じゃあないけど、石狩さん、ごめんなさいね。

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