第135話 大成、再び罰ゲーム(?)でデートする⑪~お勧めメニューは?~

『いらっしゃいませー、宮島屋にようこそー』


 俺と石狩いしかりさんが店内に入った時は昼時だけあって空席はなかったが、丁度うまい具合に何組かの先客がほぼ同時に立ち上がったのですぐに案内された。俺たちは二人組なので窓際の二人掛けのテーブル席、それも奥の方の席に案内され、入り口から遠い方に石狩さんが、入口に近い側の席に俺が座る形になった。

「・・・へえ、あの先輩も結構いい店を知ってるんだねえ」

恵比島えびしま先輩が言うには、ここと本店に行った事があるそうです。恵比島先輩が小学生の時に従姉が本店でアルバイトをしていたので、それ以来何度も行ってると言っていたし、ここには中学生の時にハリー・ショッカーを観た後に1度だけ来たと言ってたよ」

「なーるほど。その恵比島先輩のお勧めメニューは何なのか駒里こまさと君は知ってるのか?」

「恵比島先輩がコーヒーには結構こだわってるという話を聞いた事がありますか?」

「いんや、あたしは初耳」

「家では絶対にインスタントコーヒーを飲まないと言ってましたからねー。結構コーヒーにうるさい恵比島先輩が褒めてたのが、宮島屋のスペシャルブレンドなんですよ」

「ナルホド・・・」

「休日のモーニングタイムの時に行く事が多かったそうですけど、その時は結構お得な値段でトーストセットを注文してたみたいですよ。ランチタイムの時はドリアとコーヒーだったみたいですけど、恵比島先輩の好みが石狩さんの好みに合うかどうかは分かりませんから、石狩さんの好みで選んでいいと思います」

「駒里くーん、メニューを見てもいいかなあ」

「あー、はい、いいですよー」

 俺は自分の右手側にあったメニューを手に取って石狩さんに渡したけど、石狩さんはメニューを開きながらブツブツと独り言を言ってるようにも感じたけど、偉そうな事を思ってる割に俺はまだ何にするか決めてない。俺は石狩さんが開いているメニューを逆向きに見る形で一緒に見てたけど、自分なりに食べる物はアッサリ決まった。

 俺が決めてからも石狩さんは考え込んでたけど、もしかして何にするのか迷ってるのかなあ。それとも母さんみたいに「あちこち目移りして逆に決められない」とかだったりして。でも、俺がそんな事を考えている時に石狩さんはちょっとだけ顔を上げて俺の方を見たけど、何となくだが苦笑いしているようにも見えない事もなかった。

「・・・あ、あたしは何にするか決めたけど、駒里君は?」

「俺も決めましたよ」

「・・・因みに、駒里君は何を注文する?」

「俺は『照り焼きチキントーストセット』。コーヒーは恵比島先輩お勧めのスペシャルブレンドですけど石狩さんは?」

「あたしは『季節のサンドイッチセット』。コーヒーは・・・アメリカン」

「あれ?スペシャルブレンドにしないの?」

「・・・うん、あたしはアメリカンが好みだから」

「まあ、俺もスペシャルブレンドを無理強いする気はありませんからアメリカンでも構わないですよ。それじゃあ注文しますよ」

「ああ」

「すみませーん」

『あー、はい、伺いまーす』

「・・・(うー、本当はあたしもスペシャルブレンドにしたいけど、半券を使ったサービスでも昼飯予算をオーバーしちゃうからなあ。でも、50円なら予算オーバーでも・・・いや、ここは初志貫徹あるのみ!)・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ねえ、喫茶店で何を頼めばいいのー?」

「そんな事を言われたってー」

「こっちは喫茶店に入った事そのものが無いんだぞー」

「お勧めメニューは何か分かる?」

「ちょっと待ってよー。今、検索してるからー」

「一人500円以上はぜーったいに駄目だからな!」


「喫茶店とはベタな店にしたわね」

「ま、ファーストフードよりマシかな」

「ところであそこの席、何をごちゃごちゃ言ってるの?」

「そんな事を気にしてる暇があったらあの二人の会話を聞き逃すぞ」

「それもそうね」


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