第136話 大成、再び罰ゲーム(?)でデートする⑫~あのさあ、こう見えても~
アルバイトと思われる若い女性店員が来たところで俺と
でも、何を話せばいいのだろう・・・俺だって正直言ってこういうシチュエーションで女の子と話すのは殆どない。
「・・・
俺がボーッと考え込んでいたら石狩さんが話し掛けてきたから、逆に俺が面食らった格好になったけど石狩さんが言ってる意味は分かる。
「うーん・・・正直言うけど、普段は喫茶店に行かないよ。母さんや爺ちゃんが連れて行ってくれた事はあるけど自分では行かない」
「今はほとんどと言っていいほど行かないけど、あたしは幼稚園の頃には何度も行ったよ」
「へ?」
「あのさあ、こう見えてもあたしは名古屋の生まれなんだ」
「えーー!!」
「おいおい、こんな事で驚かないでくれ」
「あー、すみません・・・で、それと喫茶店がどう結びつくんですかあ?」
「駒里君は名古屋、というか名古屋周辺の地域で『モーニング戦争』とまで言われている、喫茶店のモーニングサービスを知ってる?」
「ぜーんぜん知りませんよ」
「店によって違うけど、コーヒー1杯注文すれば、あとはパンやサンドイッチ、茹で卵やサラダとかが食べ放題という喫茶店があるんだよ」
「マジですかあ!」
「ホントだよー。何なら後でスマホでもパソコンでもいいから検索してみれば?」
「え、ええ・・・いやー、俺の感覚からすれば信じられないサービスですね」
「まあ、とにかく名古屋周辺は喫茶店が多いから、競争も相当激しいというのもあると思うけど、あたしもお母さんやお父さんに土曜日や日曜日、夏休みとかには何度も連れていってもらった事があるんだよね」
「へえ」
「お父さんは元々大手百貨店の名古屋店に勤めていたんだけど、お父さんの従兄にあたる人が札幌で道産食品を扱う会社を経営していて、会社の経営規模を拡大する事になった時にお父さんを誘ったから、あたしが幼稚園の年中の時に一家で札幌に移住したのさ」
「ふーん」
「お父さんの伝手を使って東海地方や北陸にも販売ルートを広げたんだけど、その話をしていると本題からズレてしまうから今はしないけど、とにかく、名古屋にいる時は毎月のように喫茶店のモーニングサービスに行ってたのは事実だよ」
「羨ましいの一言です」
「お父さんが言ってたけど、名古屋を中心とした地域で行われているモーニングサービスはホントに変わっていて、モーニングサービスを提供する時間帯も、開店から1時間程度のところもあれば、朝から夕方まで提供する『フルタイムモーニング』を行う喫茶店もあるくらいで、本来のモーニングサービスの概念では捉らえきれないモーニングサービスを行う店もあるんだ」
「それってホントなのかあ?」
「あたしも最初は嘘だと思ったけど、〇ィキペディアにも書かれてるよ」
「マジかよ!?」
「あたしの親戚が名古屋周辺に住んでるから小学生や中学生の時に何度か行ってるけど、ほとんど毎回のように朝は喫茶店のモーニングサービスだから、結構楽しいよ」
「俺も名古屋に行きたくなりましたよ」
「もし名古屋へ行く事があったら、ホテルは素泊まりにして朝食は近くの喫茶店に行ってモーニングサービスにする事をお勧めします、とだけ言っておくよ」
「覚えておきます」
「それとさあ、やっぱり名古屋と言えば味噌カツが・・・」
石狩さんの話はサンドイッチが運ばれてからも続き、俺は石狩さんとずっと話し続けた。なーんとなくだが石狩さんが話す事に夢中になっているように思えたから俺も石狩さんが話したいようにさせたし、俺は聞き役に徹した。青葉もこうやって話し出すと止まらなくなる時があるけど、石狩さんの話す内容が俺にとって新鮮だったし、楽しそうにしている石狩さんを好きに喋らせるのが今の俺がやるべき事だと思って好きにさせた。互いが楽しいならそれでいいじゃあないか、決して悪い事ではないぞ、と思ったからだ。
石狩さんの名古屋自慢というか名古屋名物の料理解説は食べ終わってからも続いたけど、その間、ホントに俺はほとんどしゃべらなかった。「へえ」とか「ホントかよ!?」とツッコミを入れたり相槌を打ったりする事はあったけど、俺の方から話題をふるというのはなかった。それくらいに今日の石狩さんは上機嫌だった。
でも、さすがに互いにお昼ご飯を食べ終えたのにしゃべり続けているのも失礼な時間になってきた。
「・・・さすがにそろそろ行こうかなあ」
「そうですね、お昼ご飯を食べた後も結構話してたし・・・」
「話してるだけで席を占拠するのは失礼だからね」
「じゃあ、行きましょう」
石狩さんが立ち上がったので俺も一緒に立ちあがった。最初から『お昼ご飯は自分の食べた分は自分で払う』という約束になっていたから、取りあえずの支払いは俺がしたけど、石狩さんが本来支払うべき分は支払いが終わった後に石狩さんが「はい、これ」と言って渡してきたので受け取った・・・のだが、俺は500円玉と100円玉は受け取って自分の財布に入れたけど、10円玉と1円玉は財布に入れなかった。
「・・・これ、端数はいいですよ」
「へ?・・・い、いや、これは最初の約束だろ?」
「10円玉2枚と1円玉3枚くらいで俺もあーだこーだ言う気はありませんよ」
「・・・すまん」
「何も謝るような事ではないです」
「そ、それもそうだな・・・それじゃあ、これはあたしが貰っておく」
「そうしてください」
「それじゃあ、次の場所へ行きましょう!」
「そうだな、行こう」
そう言って俺と石狩さんは並ぶようにして宮島屋珈琲を出たのだが、店を出た後、石狩さんは俺の左側に並んだけど、申し合わせた訳でもないのに石狩さんは俺の左肩に自分の右肩が触れる距離で歩き始めた。最初は俺も「えっ?」と思ったけど、石狩さんの好きにさせればいいと思ってそのまま歩き始めた。
でも・・・周囲の視線が結構痛いんですけどお。
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「うへー、結構痛い出費だったなあ」
「コーヒー飲みたかったなー。やっぱりトーストだけだと寂しいよお」
「仕方ないだろ?今日は自腹なんだからさあ」
「結構お小遣い減っちゃったよー」
「右に同じー」
「それってさあ、普段から兄貴が払うのが当たり前だって思ってるからだろ?」
「「うっ・・・」」
「はーーー・・・こういう時に兄貴の有難味を思い知るとはなあ」
「どうして駒里君は石狩さんの分を払わなかったのかなあ・・・」
「こういう場面は『俺が払う』とか言って強引にでも払うべきだと思うが」
「まあ、事前に二人の間で決めてあったなら、とやかく言っても始まらないわね」
「でも、これでデートらしくなったな」
「そうね、この後、どういう展開になるのかなあ💛」
「おーい、遊びじゃあないんだぞー」
「あらー、そういうあなたも面白がってるわよー」
「フン!太美クンが暴走しないか監視してるだけだ」
「その割に相当にやけてるわヨ~」
「う、うるさい!」
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