第128話 大成、再び罰ゲーム(?)でデートする④~その点については正直、同情するよ~

 さすがに苗穂なえぼ駅を出た時には車内には相当な人数が乗っていた。石狩いしかりさんは電車が札幌駅に到着して停車する直前に、俺が吊り革を掴んでる右腕の服の裾を吊り革を持ってない方の腕、つまり右手で「グイグイッ」と引っ張ったから、石狩さんに引っ張られるままドアのところへ行き、停車してドアが開くと周りの乗客が一斉に降りていったから、俺と石狩さんもその流れに乗ってホームに降り、そのまま階段を降りた。

 電車を降りた時は石狩さんが先だったけど、降りた後は石狩さんが俺の左に並ぶ形で歩いている。石狩さんはそのまま西改札口の方へ向かったので、俺は石狩さんの隣の改札機にKitacaが入った財布をタッチして改札口を出た。

 改札口を出た石狩さんは再び俺の左に並び、石狩さんが「こっち」と言ったからそのままエントランスホールを南口方面へ向かって歩き始めた。

 石狩さんの表情には別段緊張した様子は伺えない。でも、ニコニコしている訳でもないけど、言うなれば少しだけ笑ったような表情をしている。

「・・・駒里こまさとくーん、さすがに人が多いね」

「ああ。ちょっと油断していると人の流れに巻き込まれて目的地まで大回りをする事になるかもね」

「さすがにそれは嫌だなあ」

「ところで、この後はどうするんですか?ですけど」

「駒里君はどこだと思ってるのかなあ?」

「ここの上かサッポロファクトリーだと思ってますよ。たぬき小路こうじは無いと見てます」

「ま、妥当な線だね」

「石狩さーん、どちらが正解なのか教えて下さいよお」

「そうだなあ・・・どうせ間もなくバレるから言っちゃいましょう!」

「勿体ぶらずに教えて下さいよお」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ようやくデートらしい距離になったわね」

「駒里クンは肩に力が入ってないけど、太美ふとみクンは明らかに意識しすぎじゃあないかなあ」

「仕方ないでしょうね。あの身長だと普通は男の方が遠慮しちゃうから、お兄さん以外の男の子と一緒に歩くなんて事は未経験だと思いますよ」

「たしかに。身長が190センチくらいの男でないと太美クンはハイヒールを履けないからなあ。その点については正直、同情するよ」

「同感ですね。石狩さんは少し気の毒です」


「そう言えばさあ、大成たいせいの方が5センチ低い筈なのに、今は同じくらい、いや、大成の方が少しだけ大きいよ。どういうトリックなの?」

「あれあれー?気付いてなかったのー?」

「あたしも直ぐに分かったぞ。兄貴の靴が普段と違う事に気付けよ、ったくー」

「もしかして大成は厚底の靴を履いてるのお!?  ( ゚Д゚) 」

「太美先輩もスニーカーにして身長を抑えてるわよー。まあ、あのスタイルなら、どんな服をコーディネートしても似合うでしょうけどねー」

「兄貴があの靴を自分から履くとは思えないから、明らかに指示されて履いてるとしか思えないぞ」

「仕方なく履いてるのか、それとも無理矢理履かされてるのか、どっちだろう?」

「兄貴が自分から言い出したとは思えないぞ。多分、メールに『履いて欲しい』とか書かれてたから『いいよー』と返事したんだろうね」

「お兄ちゃんはー、そういうところは優しいからねー」

「『のみの夫婦』を太美さんが嫌がったという事ね」

「でもさあ、本当に『蚤の夫婦』になるつもりなのかなあ」

「蚤だろうとしらみだろうと、兄貴の分際で生意気だあ!」

「「シー!声が大きい!!」」

「うっ・・・スマン」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「うーん・・・じゃあ、教えるけど、サッポロファクトリーだよ」

「あらあらー、俺の予想もファクトリーでしたよ」

「わおー、意見が一致して嬉しいな」

「有難うございます」

「まあ、確率2分の一だから、どちらかにヤマを張ったというのが正解でしょ?」

「い、いや、俺はファクトリーかなあ、って思っただけですよ」

「・・・うーん、本当の理由は・・・(ゴニョゴニョ)・・・」

「えっ?どうして急に口ごもっちゃったんですかあ?」

「・・・(い、言いたくない・・・ファクトリーだと高校生以下は同じ値段だけど、ステラプレイスの方に行くと高校生から値段が上がるからなあ。月末で小遣いピンチだから節約しないとマズいぞ!)・・・」


 俺たちはそのまま並んで札幌駅の南口を出た。

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