第126話 大成、再び罰ゲーム(?)でデートする②~男どもは失望の眼差しに、女性は嫉妬したような顔に~

 俺が向かっているのは、2週間前の広内金ひろうちがね先輩との罰ゲームの時と同じく新札幌駅だ。でも、前回の罰ゲームと大きく違うところがある。それは、新札幌駅の改札口で待ち合わせになっている事だ。

 広内金先輩の時も目立つ場所を指定されたけど、ここも目立つ事この上ないぞ。

 何しろ新札幌駅といえば、道内では札幌駅・新千歳空港駅・手稲ていね駅に続く4番目に乗降客が多い駅だ。そこの改札口前で待ち合わせるという事は『誰かに見付かって下さい』と言わんばかりのシチュエーションだと思うのは俺だけではないと筈だけど。

 まあ、逆の見方をすると「木は森に隠せ、人は人混みに隠せ」で、わざと大勢の人がいる場所で待ち合わせた方が目立たないのかもしれないけど・・・。

 俺は新札幌駅の改札口前まで来たけど、どうやら石狩いしかりさんはまだ来てないみたいだ。新札幌駅の改札口は一つだけだから、場所を間違えたとか、気付かずにやり過ごしたなどというのは考えられない。となれば、あとは石狩さんが来るのを待つだけだ。

 約束の時間まであと10分。青葉あおばが以前に言ってたけど、石狩さんはあれでいて時間にルーズだから時間ギリギリかな。もしかしたら遅刻するのかもね。

 でも、俺の予想に反して1分も経たないうちに石狩さんがこちらに歩いて来るのに気付いた。というより、あんなに背の高い女性は他にいないから、目立つ事この上ないんですけど。

 ただ・・・俺は石狩さんを見て思わず目を奪われた!

 革製のジャケットを颯爽さっそうと着こなし、デニムシャツにフレアデニムのジーンズ、カジュアルなスニーカーを履いた石狩さんは、一見すると広内金先輩みたいにメンズのファッションかと思ったけど、あれは明らかにレディースだ。しかも全然違和感がない!というより、ただでさえフレアデニムは美脚が強調されるのに、腰の位置が明らかに他の女の子と違うし、多分〇イキのスニーカーだと思うけど相性もバッチリだ。

 それに、普段は後ろ髪をポニーテールにして束ねている筈なのに、今日は背中まであるストレートヘアーにしてるから女性らしさが強調されてるし、何と言っても俺の見立てで推定Eカップの胸は石狩さんが歩く度に揺れているから、まさに『非の打ち所がない美少女』『完璧な美少女』としか言いようがない!!これじゃあ仮に青葉が横を歩いていたとしても、100人いたら100人が石狩さんに軍配を上げるぞ。

 しかも、(失礼)の石狩さんのイメージを全然損なってなく、それでいてスーパーモデルがこっちに向かって歩いてくるような様は周りにいる男ども、いや、女性も思わず足を止めて石狩さんに注目しているくらいだ。

 そんな石狩さんは俺が先に来ていた事に気付いたようで、少しハニカミながら右手を軽く上げたから俺も右手を軽く上げて応えた。そう、まるで気心の知れた者同士の挨拶のように・・・その瞬間、男どもは一斉に失望の眼差しに変わり、女性は嫉妬したような顔に変わった。まあ、気持ちが分からない事もないけど、そこには俺は関与する気はありませーん。

「や、やあ、おはよう、駒里こまさと・・・くん」

「おはよう」

「いつ来た・・・のですか?」

「ん?1分くらい前」

「そうかあ、ほとんど同じくらいの時間に来て・・・いたのですね」

「俺は正直石狩さんが遅刻すると思ってた」

「勘弁してく・・・ださいよお。たしかに普段のあたしは時間にルーズだけど、いくら何でも今日は遅刻すると失礼かと思って余裕を持って家を出た・・・んですよ」

「はいはい、わかりましたよ。それじゃあ、そろそろ行きますかねえ」

「そう・・・ですね、行きましょう」

「石狩さーん、何か言葉遣いがおかしいですよ。無理して丁寧な言葉遣いをしなくてもいいですから、もっと肩の力を抜きましょう」

「た、たしかに今日は女らしく見せようと気負い過ぎてるかも・・・」

「でしょ?もっとリラックスしましょうよ」

「そうだな」

 そう俺と石狩さんは言い合うとお互いにニコッとして、歩き出した。俺と石狩さんの距離は『友達以上恋人未満』といった感じだ。

 お互いに向かってるのは改札口だけど・・・あれ?無意識に歩き出したけど大丈夫なのかあ?

「石狩さん、切符は?」

「ん?あたしはSuica(作者注釈:JR東日本の交通系ICカードのこと)だから」

「えっ!?Kitaca(作者注釈:JR北海道の交通系ICカードのこと)じゃあないんですか?」

「お父さんが5年くらい前に出張で東京都内に行った時に買った物だけど、今はKitaca定期を使ってるから、あたしに譲ってくれたんだよ」

「なるほどねえ」

「という事は駒里君はKitacaなのか?」

「そうですよ」

「それじゃあ、切符はいらないね」

「それなら、行きましょう」

「りょーかい」

 そう言うと俺たちは再び歩き出した。

 さすがに混雑とまではいかないけど、それなりに混んでるから、俺たちは小学校の高学年と思われる女の子3人組に続いて改札口の中に入った。


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「おいおい、太美ふとみクンも駒里クンも遠慮し過ぎだぞ」

「そうよね。わたくしがアドバイスしてもいいなら、もうちょっと近づいてもいいと思いますよ」

「だろ?ったくー、駒里クン!デートには違いないんだから、もっと大胆にやれって教えてやったのに・・・」

「あら?まるで駒里君にアドバイスした事があるような口ぶりだけど・・・」

「い、いや、単に言い間違えただけだ」

「ふーん」


「ちょ、ちょっと大成たいせい!いくら何でもくっ付きすぎよ!」

「そうかなあ。ウチは逆にもっと近づいた方がいいと思うけどー」

「兄貴の分際で生意気だあ!」

「「シー!声が大きい!!」」

「うっ・・・スマン」


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