第111話 青葉、会長になる⑪~私がルールブックです~
そう言ってその女の子は俺の覚えてる限りでは10回以上も
「
と広内金先輩を宥めたから、広内金先輩も少し落ち着いたのか「コホン」と言ってから
「まあ、たしかにちょっと言い過ぎた、そこは謝る」
「でしょ?それなら無罪放免ですよね」
「うーん、さすがに無罪放免という訳にはいかない」
「えー、そこを何とか」
「駄目!」
「えー!」
そんな押し問答が続いたけど、突然、広内金先輩がニヤニヤしながら青葉に耳打ちした。
青葉もその話を聞いたら手を「ポン」と合わせてニコニコしながら頷いた。
その女の子はキョトンとしていたけど、広内金先輩の代わりに青葉がニコニコしながら口を開いた。
「では、次期生徒会長として、あなたに伝える事があります」
「へ?・・・次の会長の
「今のアップルパイを食べた罰として、次の生徒会メンバーの一員として書記をやってもらいます。よろしいですか?」
「はあ?」
「もしあなたが生徒会書記をやってくれるなら今後もあなたがスイーツ研究同好会に在籍する事を認めますが、そうでなければ幽霊部員であると告発してあなたを強制退部させます。よろしいですか?」
「えー!それだけは勘弁してくださいよお。幽霊部員に認定されると出入り禁止になって風紀委員会の監視対象なるのはわたしでも分かりますから、お願いだから許して下さいよお」
「それじゃあ、生徒会書記を引き受けてくれますね」
「はああああ・・・まあ、史上最高の信任率で信任された次期会長からの直々のお願いですから、断ったら串内さんのファンクラブから何をされるか分からないから引き受けますよ。その代わり、今後もスイーツ研究同好会の試食専門の幽霊部員である事を黙認してください。お願いしますよ」
「いいわよー」
「ホントですかあ」
「大丈夫よ。なんてったって私がルールブックですからー」
「なんですか、それは?」
「言葉通りよ。今後、困った問題が起きたら全部私に任せなさーい。この私が全て解決してあげるわよ。文句があるなら、全部私に言ってきて結構よ。私の裁定は全て正しい、私はルールブックなんだからね」
「あまりよく分かりませんけど、串内さんの完璧超人ぶりは我が1年6組でも知らない人はいませんから、串内さんの言う事に従っていれば大丈夫って事で受け止めておきますよ」
「そういう事よ。それよりあなた、私はあなたの名前を知らないから教えてくれないかなあ」
「あー、わたしの名前は
「あかいがわ・ぴりか?変わった名前ね。苗字の方は想像できるけど、名前の方はどういう字を書くの?」
「あー、それはですねえ、『ぴ』は美しい、『り』は利益とか利潤、鋭利とかに使われる『利』の字です。『か』はさんずいの方の『かわ』です」
「なるほど、それで美利河って読むのねー」
「そうですよー。美利河っていうのは『可愛い』とか『綺麗』って意味があります」
「そうかあ、たしかに可愛いもんね。それじゃあ、これからもよろしくね、キラキラちゃん」
「はあ?串内さん、なんでわたしがキラキラちゃんになるんですかあ?」
「だってー、どう見てもキラキラネームでしょ?」
「だーかーら、『綺麗』とか『可愛い』って意味だってさっきも言いましたよねえ」
「可愛いんだからキラキラちゃんで十分よねー。意味通りよ。」
「か、可愛い・・・まあ、たしかにわたしも串内さんほどじゃあないですけど可愛いってよく言われますけど、だからといってキラキラちゃんは勘弁してくださいよお」
「私が『キラキラちゃん』と言ったからには『キラキラちゃん』よ。なんてったって私がルールブックですから」
「だーー!全然意味が分かってなーい!」
俺が覚えている限り、青葉が『私がルールブックです』の決め台詞を最初に使ったのはこの一件だ。美利河さんは青葉と広内金先輩の策略(?)で生徒会書記になったような物だけど、元々は広内金先輩が見越した人物だけの事はあって生徒会での仕事ぶりは青葉から言わせれば期待以上のものだった。
冬休み明けに青葉を会長とした新生徒会は正式に活動を始めたが、冬休みが始まる前から新会長の青葉の元には諸問題が次々と持ち上がってきたけど、それを青葉は全て解決に導いた。
まあ、殆どの問題事は青葉の「
ただ、全て恵比島先輩が蘭先生と折衝して解決した訳ではない。一部は生徒会室に持ち込まれた苦情や問題を青葉が勝手に、というより例の「私がルールブックです」の一言で裁定してしまい、その尻ぬぐいを恵比島先輩が、まあ、正しくは虎杖浜先輩が作った理論武装で恵比島先輩が周囲を説得して強行突破したのだが、これによって青葉の人気は不動の物となったのも事実だ。これは冬休み明け後と卒業式直前に新聞部が行ったアンケートでも顕著に表れていて、青葉の対応に「不満がある」「やや不満がある」どころか「どちらでもない」と答えた人は一人もおらず全員が「満足」「ほぼ満足」と答えたのだから、これも新聞部によると史上初の快挙であった。
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