優等生の仮面
第99話 大成、目覚まし時計の声に飛び起きる
“おい起きろコラ、おい起きろコラ、おい起きろコラ・・・”
この趣味の悪い目覚まし時計の声で俺は飛び起きた。
「はーーーーーー・・・・・」
朝から思わずため息をついてしまったが、そうしたくなる理由があるのだ。今朝は
つまり、普段より早く学校へ行く必要があるのだが・・・普段でも起きられない奴がぜーったいに自分で起きられる訳がない!
でも今朝は何となくだが・・・いや、何となくではなくても体が重い。やはり昨日は反則負けとはいえ負けたのが悔しくてちょっと頑張り過ぎたのか、体のあちこちがまだ痛い。青葉の横槍(?)が無ければ1本勝ちしていた筈なのは間違いないが、
でも、その後にやった方の反動が相当大きいのも事実だ・・・。
俺がリビングに行くと母さんは起きてたが春立の爺ちゃんと婆ちゃんはいなかった。
「あらー、おはよう。思ったより早かったわね」
「ああ。どうせ日直なのを忘れてるのがオチだからなー」
「またまたー。そう言っていつもより早く押しかけて何をするつもりなのかなあ」
「あのなあ、俺は真面目な話をしてるんだぞ!」
「はいはい、わかりました。ご飯は大盛りにすればいいの?」
「ああ、そうしてくれ」
そう言うと俺は椅子にドカッと腰を下ろしたけど、背中の痣がヒリヒリして正直背もたれに体重をかけるのは辛い。だから少し前かがみだ。
「いただきまーす」
俺は朝ご飯を食べ始めたけど母さんはニコニコしたまま俺を見ている。黙って俺のコップに烏龍茶を入れてくれたけど、そのまま俺の正面に座って
「・・・たいせいー、よっぽど負けたのが悔しかったみたいねー」
「!!!!! (・・! )」
「楓が結構心配してたわよー。いくら何でもあそこまでムキになる理由が分からないってね。緑も『口ではサバサバした事を言ってるけど内心では悔しかったんだろうね』ってあんたに同情してたわよ」
「・・・・・」
「おまけに、昨夜は結構遅くまで『アレ』をやってたんでしょ?」
「気付いてたんだ・・・」
「当たり前よ。元々は父さんが使ってたんだから母さんが知らない訳がないでしょ?」
「・・・・・」
「まあ、記録なんて儚い物よ。いずれ誰かに破られる。無敗の王者といえども、いずれは後進に道を譲る事になる。過去の栄光にしがみ付いてるだけの人間のどこがいいのかなあ、って母さんは思うわ。だから逆に母さんとしては大成がさっさと負けてくれて良かったと思ってる。新たな目標が生まれて、そこに向けて努力するようになるからね」
「・・・なーんか、母さんらしくないセリフだな」
「そうかしら?」
「いつもなら『あらー、また負けちゃったのー?』の一言で終わりなのに、今日は何か悟りを開いたかのように説法してるからさあ」
「たまにはいいでしょ?」
「そうだな」
それっきり母さんは黙ってしまった。いや、正しくは爺ちゃんと婆ちゃんが起きてきたから会話がそちらに移ってしまって俺は一人黙々とご飯を食べる側になったからだ。
「行ってきまーす」
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