第93話 大成、逆転の大技を決めた!・・・はずだったのだが
「待て」
「ちょっとー、お互いに警戒するのは分かるけどー、いくら何でも積極性に欠けるって事で二人とも『指導』にするからねー」
それだけ言うと南先生は俺と石狩さんの両方に『指導』を与えてから「始め」と声を掛けたけど、俺だって正直言って『指導』を受けそうだって事は分かってたぞ。でも攻め手が無いのも事実なんだからさあ。
だがここで教育的指導を受けたのは正直マイナスだ。やはり前へ出るしかなさそうだ。
俺は少々強引だが無理矢理石狩さんの右袖と左襟を掴みに行って、そのまま強引に『
この後も延々と技の掛け合いが続いたけど、お互いに技を決めきれない、いや、どちらかと言えば俺の方が押されている!体重も身長もほぼ同じだけど力比べなら男である俺の方が遥かに上だが、いざ技を仕掛けても石狩さんの驚異的な体の柔らかさで技が完璧に決まらない。逆に俺の方がカウンターの形で次々と技を返されるから完全に石狩さんペースとしか言いようがない状況だ。本来なら既に5分以上経過しているから判定勝負になるはずだけど、この試合は時間無制限だからそうならない。いや、逆に石狩さんは『有効』を2つ取っているのに俺は未だに何も取ってない。明らかに押されてるから逆に判定が無くて助かっているくらいだ。
とうとう南先生から何回目かの「待て」の後に俺にだけ「指導」が与えられた。これで俺は2回目の「指導」だ。
仕方ない、少々危険だが懐に飛び込んで石狩さんの攻めを逆に利用して・・・
俺は左手で強引に石狩さんの右袖を引き寄せると、そのまま懐に飛び込み『
俺は上体を沈めて石狩さんの後ろに回り込む形を逆手に取って、石狩さんの膝のひかがみ(膝の後ろのくぼんでいるところ)に俺の膝を当て、そのまま引き手を袖から腰に回し抱くような体勢を取って、上体を落としてロックした膝の後方に石狩さんを倒す形になった。石狩さんが体勢を立て直そうとした瞬間に、相手の後腰にお腹をあてるように突き出し、相手を高く抱き上げ、そう、回転させるように放り投げ、弓なりに反った体の弾みを使って、真下へ投げ下ろした!
返し技の一つ『
「技あり!」
南先生の声がしたけど、あれで『1本』にならないのかあ?たしかに最後の最後で石狩さんが強引に体を捻って振り解こうとしてたけど、あの位置から技を無効化したとでもいうのか?何たる身体能力!何という体の柔らかさだ!
だが、石狩さんは『1本』を免れるのに精一杯だったから、そのまま俺は固め技に持って行った。俺の方が一瞬だけ早く体を起こしたから、石狩さんが体を起こした瞬間に俺は右手を石狩さんの首の後ろに持って行ってから右襟を深く掴み、左腕を使って石狩さんの右手を抱え込んで、全体重を石狩さんに掛けて押し倒した。そう、これは『
「抑え込み!」
南先生の声がして俺の抑え込みが始まった。『技あり』からの継続だから25秒で俺の『1本』勝ちが決まる!今度こそ俺の勝ちだ!石狩さんは俺の『
「ちょ、ちょーっと待ったあ!今の『抑え込み』は無効よ!!」
「「へ?」」
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