第92話 大成、柔道の試合を始める
俺と
南先生が場内をぐるりと見まわした後、気合を込めた顔をして
「えーとー、本日の試合の主審を務める事になった、2年3組担任にして女子柔道部顧問の
俺も石狩さんも首を縦にふった。お互い、この勝負方法で異論はないという事だ。
「この試合は女子柔道部と生徒会執行部が責任を持って行う取り決めになっていますので、女子柔道部の部長の
俺も石狩さんも首を再び縦にふった。
「それでは試合を始めます。礼!」
俺と石狩さんは互いに礼をして試合が始まったけど、正直、石狩さんとは初手合いだからどのようにしたらいいのか分からない。最初は互いに出方を見ている感じで積極的に技を仕掛けるまでにはいってない。
石狩太美さん・・・黒帯が示すとおり
青葉からは今日の午後に少しだけ石狩さんの戦い方を聞いたけど、青葉が石狩さんよりも体重が重い(失礼)浜中先輩とは互角の勝負ができるのに、石狩さんに苦戦する理由は体重差ではない。
それは・・・身長差と身体能力の差だ。
身長は女子としては破格の181センチ!176センチの俺よりも5センチ高い。それでいて手足はスラリとして、その長さはスーパーモデルかと見間違うくらいにある。日本人離れした外見と美貌の石狩さんを「現役高校生」と答えられる人はいるかもしれないけど、「柔道部所属」と答えられる人は1万人に聞いても絶対にいないと断言できる自信がある。百歩譲って「どこかの劇団に所属」「どこかの芸能事務所に所属」と答えるのが関の山だ。
もっとも、昼休みの事を見れば分かるけど口は相当悪いので、『脳筋女の集団』女子柔道部所属と相まって、その2点で青葉より低い評価につながっているけど、スタイルと美貌だけを考えれば青葉も
クラスは63kg以下級だ。しかも昨年のインターハイ準優勝者でもある。男子はインターハイ予選で宿泊したホテルの食中毒騒ぎで個人戦は全員棄権したけど、女子は男子の後だったから急遽ホテルを変更して問題なく出場し、団体と個人4人が全国大会へ行って、団体はベスト8、石狩さんが個人準優勝、浜中先輩が70kg以下級で三位になっている。高校選手権は兄妹揃ってインフルエンザで予選そのものの出場を取り止めたけど。
このクラスの女子はパワーで押す選手が多いけど、石狩さんはその長い手足を使って相手をいなす。最大の特徴は信じられないくらいに体が柔らかく、相手の投げ技、抑え込み技をしなやかな体と驚異的な背筋力で交わす。
下半身がしっかりしているから青葉からの足技を受けながらも腰技、手技で投げ返すし、青葉が『
青葉が勝つ時は
今だってそうだ。俺は石狩さんの懐に入ろうとしているけど、石狩さんは上手くいなして決して入らせない。だが、俺も石狩さんに隙を与えてない。既に3回『待て』が入ったけど、未だにどちらも技らしき物をかけていないに等しいから、お互いに「積極性に欠ける」として南先生から『注意』を受けているほどだ。
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