第78話 大成、仲の良い(?)三組の「きょうだい」を見て思う事がある

「「行ってきまーす」」


 今朝はの登校だ。

 俺の横にいるのは青葉あおばだ。今日はかえでが日直だけど、なぜかみどりも一緒に行くと言い出したから既に学校へ着いてるはずだ。

 それに、今日は珍しく青葉がニコニコしながら歩いてる。あれー?何かいい事でもあったのかなあ・・・それとも今日は楓と緑がいないから定位置に戻れた事に安心しているのかも・・・い、いや、それはあくまで俺の希望的観測だ。青葉が本当に俺の妹だったら・・・

「・・・たいせー、そう言えばさあ」

「ん?」

「今日は美留和びるわ先輩、登校するのかなあ」

「さあな、昨日は休んだんだろ?楓が言ってたけど、あの後あまりにも腫れが酷いから学校の車で札幌糸魚沢いといざわ病院へ行ってレントゲンを撮ったら、右手首の骨にヒビが入ってたらしいな。左手の方は骨折してなかったけど、それでも相当腫れてるから少なくとも週明けまでは両方の腕を吊るした状態だって聞いたからなあ」

「利き腕の左手の方が軽傷で済んだのは、大成たいせいが右の大刀で美留和先輩の竹刀を捌いた直後に左の小刀で右手首を何度も集中的に攻撃してたからだよね。でも、もし大刀と小刀が逆だったら右手はヒビではなく本当に手首の骨が折れたかもしれないよ。しかも間違いなくピンポイントで同じ場所を叩いていたから、いくら小手をしていても骨まで衝撃が行っちゃったって事だよね」

「ちょっと本気を出しすぎたかなあ」

滝川たきかわ先輩もあの後に病院へ行ったみたいだけど、幸いにして骨には異常なかったって本人からじかに聞いたわ。本人は『たいした事ないよー』って笑ってたけど、昨日になっても腫れが完全に引いてなかったのは事実だよ」

「どっちにせよ、剣道部はエースが二人とも療養中で昨日は自主練習だったらしいし、鬼鹿おにしか先生も朝から渋い顔だったな」

「たいせー、次に会った時にはマジで美留和先輩に謝った方がいいと思うよ」

「そうだな。『やり過ぎました。ごめんなさない』って言うようにするよ」

「そうしなさい。ま、美留和先輩もこれで大人しくなってくれるといいけどね」

「それもそうだね」

「それにしてもさあ、大成は一躍スターだよね、あー、スターというよりは『』をまた実証したわね」

「勘弁してくれよお。俺はこれ以上『壊し屋』になりたくないぞ」

「またまたあ」

「マジで勘弁してくれ!」

「まあ、対戦中に本人が怪我をしたのは今回が初めてだけど、それまでは、まさに『』だからね」

「その呪いをもたらした張本人が何を言ってやがる!」

「あれ?どういう事なの?」

「お前がだあ!」

「へ?・・・まあ、そう捉えられても仕方ないのかなあ」

「あったりまえだあ!」

「まあまあ、そのお陰で私は平穏な高校生活を満喫してるわよ」

「はいはい、そりゃーどーも」

「あー、何か投げやりー」



「青葉ちゃーん、おはよう」

「会長、おはようございます」

串内くしないさん、おはよう」

 今日も青葉は登校中のみんなから声を掛けられてるけど、楓と緑がいないから「楓ちゃんと緑ちゃんはどうしたの?」とか「今日は妹さんは?」と盛んに言われて俺も青葉も正直困惑していた。まあ、既に楓と緑が一緒にいる事が当たり前になってしまったので、逆にいないと不自然に思われるのかもしれない。俺も青葉も「今日は二人で日直だよ」とオウム返しのように言い続けてるから正直辟易しているのも事実だ。

 今日もJR組と重なったようで、仁仁宇ににう駅から清風山せいふうざん高校へ向かう列が道路の向こう側を歩いてる。もちろん、これら全てがJR組ではなく、駅の向こう側から歩いて登校する人もそれなりにいる。

 俺と青葉は信号が変わるのを待っている状態なのだが、道路の向こう側を歩く集団の中に頭一つ、いや頭二つくらい抜けた長身の男子生徒がいる事に気付いた。その隣には、周りの男子とほぼ変わらない、いや、大半の男子より背が高い女子がいる。何か喋りながら歩いてるみたいだけど、さすがに何を話しているのかは俺のところにまで聞こえてこないので分からない。

 男子生徒は3年7組の石狩いしかり月形つきがた先輩、女子生徒は2年3組の石狩太美ふとみさん。苗字を聞けば二人の関係がピンと来ると思うけどね。

「たいせー、相変わらずあの二人は仲がいいよね」

「ま、そたしかにそうだな。見方によってはイケメンと美少女のお似合いのカップルだけど・・・」

「実の兄妹だと知ったら十中八九、腰を抜かすけどね」

「まさに最強の兄妹だよな」

「さすがの大成もあの兄妹には敵わないよねー」

「あのなあ、俺は石狩先輩とは何度も勝負した事あるけど、石狩さんとは勝負した事ないぞ」

「でもー、この私を物差しにして考えたら兄妹に敵わないって事になるよねー」

「たしかに・・・」

「でしょ?」

「・・・それは

 ここで信号が変わったので俺も青葉も歩き始めたが、その時には既に石狩兄妹はかなり前に行ってしまった。

 でも、そんな俺たちが信号を渡り終えた時に、駅の方からお馴染みになりつつある光景が目に入ってきた。

 遠目からもハッキリ分かる、ロリ顔の巨乳の女子生徒と男の割には背が低くてツンツン頭の男子生徒が速度を早くしたり遅くしたりして歩いて、いや、走っていると言うよりは何と言うか、とにかく競争しながらこちらへ向かってくるのが見えて来た。女子生徒は赤いリボンだから2年生、男子生徒は緑ネクタイだから1年生だというのが分かる。そう、先ほどの長身の石狩兄妹とは対照的な背の低い赤井川あかいがわ美利河ぴりか美流渡みるとの姉弟だ。

 青葉から言わせれば『キラキラ姉弟』なのだが、こちらもいつも通りなら弟の美流渡君の方が美利河さんが隣にならないように頑張っている。だが、美利河さんがムキになって並ぼうと必死になっている筈だ。これも先ほどの石狩兄妹とは別の意味での(?)姉弟である。


 だが・・・ここに「もう1組の仲の良い(?)兄妹」、いや、正しくは「仲の良い(?)」がいるとしたら・・・いや、まだ決まった訳ではない。その希望が残っている限り、俺は諦めない・・・つもりだけど・・・


「おーい、キラキラ姉弟、おはよう」

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