第79話 大成、キラキラ姉弟(?)と話をする

 そう言って青葉あおばがキラキラ姉弟の前に立ち塞がる格好になって両手を広げたからキラキラ姉弟は足を止めた。当然だが二人ともゼーゼーと肩で息をしている。

「かいちょうー、お願いだから『キラキラ姉弟』は勘弁してくださいよお」

串内くしない先輩、お願いだから姉ちゃんと同類に扱われるのは我慢できないから『キラキラ姉弟』だけは勘弁してください!」

「またまたー、照れなくてもいいわよ」

「「照れてなんかいません!」」

「あれ?何か変な事を言った?」

「かいちょー、ホントに勘弁してくださいよお」

「それはそうと、いっつもいっつも競争してるわねえ。よく飽きないなあって感心してるわよ」

「冗談じゃあありません!串内先輩!!」

「青葉でいいわよ」

「じゃあ青葉先輩と言わせてもらいますけど、青葉先輩!同じ生徒会メンバーとして姉ちゃんを何とかしてください!!」

「キラキラ君、どういう事なのかなあ?」

「僕は高校では姉ちゃんと同じ部・同好会にしたくなかったから、男しかいないクイズ研究会に入部届を出したんだ。でもさあ、こともあろうか昨日の放課後、姉ちゃんが途中入部の形でクイズ研究会に入部届を出してきたんだぞ!」

「みるとー、別におかしくないでしょ?」

「姉ちゃんはスイーツ研究同好会に所属してるんだろ?何でわざわざクイズ研究会に移籍してくるんだあ!」

「だってさあ、普通科の生徒は2つまで加入できるんだよ。わたしは元々スイーツ研究同好会しか加入してないから、クイズ研究会に入っても違反にならないわよ」

「クイズ研究会とスイーツ研究同好会は活動日が一緒なんだぞ!」

「大丈夫大丈夫!わたしは元々名ばかり部員、というか味見担当だから全然迷惑かけないし、クイズ研究会のみんなもクッキーやケーキを食べ放題になれるわよ」

「勘弁して下さいよお、僕は特進科だから1個しか加入できないんだから、頼むから姉ちゃんはクイズ研究会に入らないでくれ!」

「あー、その事なんだけど、既にクイズ研究会の部長の滝ノ下たきのした先輩がわたしの事を『クイズ研究会の女神様』って言ってて、他の人たちも本当に女神様として崇拝してるくらいだから完全に正規部員扱いよ。それにさあ、わたしが加入したからクイズ研究会は同好会から部に昇格できる「10人以上」の要件を満たしたんだから、逆にお姉ちゃんに感謝して欲しいわ」

「冗談じゃあないです!青葉先輩、この分からず屋の姉ちゃんにガツンと言ってやってください!」

 おいおい、競争の次は朝から口論かよ!?だいたいこの姉弟、仲がいいのか悪いのか、全然分からないや・・・

「あのー、キラキラちゃん」

「かいちょー、お願いだからキラキラちゃんは勘弁してくださいよお」

「申し訳ないけど、ここはキラキラ君が正論だよ」

「ちょ、ちょっと会長!どういう意味なの?」

「2年生、3年生が途中入部できるのは、いわゆる帰宅部の人が1つ目の部活に加入するする時だよ。1年生は規則上3月までなら2つ目を途中入部してもOKだけど、2年生のキラキラちゃんは名ばかり部員、つまり幽霊部員とはいえスイーツ研究同好会に加入届を出して名簿に名前が載っている以上、クイズ研究会への途中入部は認められないよ」

「マジい!」

「そうだよー。だから滝ノ下先輩を始めとしたクイズ研究会のみんなには申し訳ないけど、キラキラちゃんの加入は無効です」

「そ、それじゃあ、スイーツ研究同好会を辞めるわ!今年は既に4人の加入者がいるから一人くらい減っても同好会として維持できるからそれならいいでしょ?」

「それなら合法になるけど、スイーツ研究同好会の部長は華苗穂かなほ先輩の幼稚園の頃からの付き合いの錦岡にしきおか先輩よ」

「あーーー!忘れてたあ!!」

「しかも華苗穂先輩のセカンドよ」

「うわっ!そっちもすっかり忘れてた・・・」

「もし退部届なんか出したら華苗穂先輩が『あかいがわー!風紀委員長の強権を発動するぞー!!』とか言い出すのは間違いないでしょうね。キラキラちゃんも分かるでしょ?」

「はーーー・・・分かりました、クイズ研究会は諦めます・・・」

「そう言う訳だからキラキラ君、安心してね・・・あ、あれ?キラキラ君は?」

「へ?・・・美流渡みるとがいない・・・」

 あれ?俺も気付かなかったけど弟の美流渡君がいつの間にかいなくなってるぞ。

 俺も青葉も美利河ぴりかさんもキョロキョロ辺りを見てたけど、ようやく美流渡君の姿を見付けた!

「「「あーーー!!!」」」

 そう、いつの間にか美流渡君が走り出していて、既に正門の近くまで行っていたのだ。しかも既に横断歩道の青信号が点滅しているから、今から走り出しても横断歩道につく前に赤になって道路を車が走り出すのが分かり切っている。つまり、美利河さんは青葉と話をしている間に美流渡君が走り出した事に気付いてなかったのだ。


「はーーーー・・・」


 美利河さんは愛しの(?)弟に置いてけぼりにされたから結構凹んでる。仕方ないから青葉が美利河さんの肩をポンポンと叩きながら「たまには一緒に行こう」と言ったから美利河さんも俺たちと一緒に学校へ向けて歩き出した。

「・・・それはそうと会長と大成たいせい君はさあ、どこかの部に途中入部するのー?」

「うーん、正直に言うけど、私は入る気ないわよ。でも浜中はまなか先輩が昨日も一昨日も『青葉ちゃん、女子柔道部はあなたを歓迎するわ』ってシツコイくらいに言ってくるのよねえ。他にも女子バスケ部とか女子卓球部、ラクロス部とかもね」

「へえ。ま、どの部にとっても会長は降ってわいたような超優良物件だもんねー」

「昨日だけで8つよ!正直勘弁して欲しいわ。でもねえ、私はまだ優しい方よ。大成なんかもっと悲惨な目にあったよー」

「へ?・・・大成君、何かあったの?」

「あったも何も、昨日の3時間目の体育の集団走のランニングでトラックを走ってる最中、ずうっと鬼峠おにとうげ先生が俺の横を走って『こまさとー、柔道部に入れー、柔道部に入れー』って、1500メートルずうっとワンフレーズリピートのように言ってたんだぜ」

「えー!何それー、笑っちゃうわよー」

「そう思うだろ?俺だってマジで勘弁して欲しいよ」

「大成の場合、昨日は他にも『君がうちの部に入ってくれるなら週4日にしてもいい』とか言って空手部、男子卓球部、男子バレー部、男子バスケ部、ラグビー部が入れ替わり立ち替わりで盛んに声を掛けてきて、昼休みも『落ち着いてご飯を食べられてない』ってボヤいてたよー」

「他人事のようだけど、どの運動部も降って湧いたような超優良物件を手に入れようと必死になってるとしか言いようが無いわねー。ま、たしかにうちのクラスでも昨日は『駒里こまさとはどの部に入るのか?』っていう話題で、男子だけでなくも女子も持ちきりだったよ」

「でもねえキラキラちゃん、空手部、男子卓球部、男子バレー部、男子バスケ部、ラグビー部。昨日大成に声を掛けて来たが何なのか答えられる?」

「ちょっと会長、キラキラちゃんは勘弁・・・あれ?それってもしかして・・・もしかしなくても例のを生んだ・・・」

「そう、例の『運動部』だよー」

「そうかあ、野球部やサッカー部、それに陸上部なんかは大成君は『災いをもたらす者』、いわばだから勧誘したくても出来ないんだよねー」

「美利河さーん、頼むからそれを言わないでくれよー。俺だって好きでやった訳じゃあないんだぞ」

「でもさあ、大成君がんでしょ?」

「ちょ、ちょっ美利河さあん、当然だけど美利河さんも知ってる筈だけど『』だぞ」

「あー、言われてみればそうよね。会長が全ての元凶かもね」

「えー!なんでえ!?キラキラちゃんまで酷くない?」

「かいちょー、お願いだからキラキラちゃんは勘弁してくださいよお」

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