第61話 大成、ゲッソリした気分で喫茶店を出る
結局、俺たちは最後の1本までお互いに『あーん』しながら食べさせた。
そのまま俺たちはスペシャルブレンドのコーヒーとチーズケーキをニコニコしながら、でも静かに食べたけど、食べ終わった時に「もうタイムリミットに近い」と華苗穂先輩が言い出したので帰る事にした。
俺たちは立ち上がってカウンター横のレジに向かったけど、さすがに立ち上がる時に急に疲労感に襲われてゲッソリした気分になった。それは華苗穂先輩も同じようで、立ち上がった瞬間にゲッソリしたような顔に変わった。今回も華苗穂先輩がカードを差し出したけどが
「
「へ?どうして?」
「クレジットカードの明細でこの店に来た事が分かってお婆ちゃんの耳に入ったらどうします?」
「・・・分かった。現金にする」
「じゃあ、約束通りコーヒー代はサービスしておきまーす」
「「はいはい・・・」」
「あー、防犯カメラの映像は提供しないから大丈夫よー」
「「はいはい・・・」」
「元気出しなさいよー。まだ罰ゲームが終わったんじゃあないでしょ?」
「「はいはい・・・」」
「あー、二人とも投げやりー」
「そりゃあそうでしょ?」
「最後の最後で目一杯疲れましたから」
「ゲームはちゃんとコンプリートするのが基本よ」
「分かってますよ」
「じゃあ、残りも頑張ってね」
「「はいはい」」
華苗穂先輩は紅葉山さんからお釣りを受け取るとそれを財布に入れた。
「ありがとうございましたー」
紅葉山さんはニコニコしながら手を振ってたけど、俺も華苗穂先輩も軽く右手を上げただけで静かに店を出た。そのまま俺たちは札幌駅方面へ歩き出した。
「はーー・・・まったく世話の焼けるお嬢様ね」
「たしかに
「でしょ?ホントに不器用なお嬢様なんだからあ」
「・・・ところで、あの少年の事をさっき『こまさとたいせい』って桔梗が言ってたけど、それは本当か?」
「そうだよー」
「もしかして
「駒里先生?誰それ?」
「あー、言い方が悪かった。もしかして駒里
「あー、たしかそんな話を高校時代に何度か聞いた事があるわ」
「だとすると・・・ひょっとして」
「え?お爺ちゃん、どういう意味?」
「実は・・・(ゴニョゴニョ)・・・」
「えーーーーーー!!!!!!」
「シー!声がデカイ」
「マジですかあ!?」
「あの話が本当なら、の事だが」
「だとしたら・・・
「多分、知らないだろう」
「『知らぬが仏』かもしれないよ」
「当たり前だが今の件は口外厳禁だぞ」
「分かってるわよ。わたしだって恐ろしくて口が裂けても言えないわ。ある意味、聞かなければ良かったと思ってるくらいよ」
「念押しするようだけど、あの子たちが一緒にこの店に来た事そのものも口外するなよ」
「分かってるわよ。わたしだって自分の命の方が大事だから」
「そうしてくれ」
店を出てからは華苗穂先輩は俺と手をつなぐ事はしなかった。でも肩と肩が触れ合うくらいの距離で歩いていたのには違いない。
もうすぐ罰ゲームも終わりだ・・・あれ?でも・・・全然嬉しくない・・・この感情は一体なんだ?
そう言えば・・・華苗穂先輩のあの行動・・・さっきのあのセリフ・・・一体、何だったんだ?
「あのー・・・」
「ん?」
「先輩に聞きたい事があるんだけど・・・」
「・・・ボクが答えられる範囲でなら答えてやるぞ」
「・・・テレビ塔からWcDに向かう時の事ですけど、先輩は俺と手をつないだ直後、一瞬だけ暗い表情をしましたよね」
「!!!!!」
「それに、さっき『お婆様にバレると非常にマズい』と言ってましたけど、そこが凄く引っ掛かります」
「・・・・・」
「もしかして、本当は俺と罰ゲームとはいえデートすると非常にマズい事になるって分かってたんじゃあないですか?」
「はーーーー・・・」
華苗穂先輩はどういう理由かは分からないが大きなため息をついた。
「・・・
「・・・あまり言いたくないですけど、胸の事を言われるとヒステリックになるからじゃあないですか?」
「・・・それは表向きの理由だ?」
「表向きの理由?」
「そうだ」
「・・・じゃあ、真の理由があるんですか?」
俺はそう言うと華苗穂先輩の方を見た。けど、華苗穂先輩はすぐに答えようとせず「はー」と短くため息をついた。そのまま華苗穂先輩は俺の方を見て、いや、少し悲しい目をしながら
「・・・ボクには未来が無い」
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