第32話 大成、聞き出そうとする
結局、俺と
俺は普段は
昨日は食堂が営業してなかったので母さんに頼んで弁当持参だった訳だ。
さて、今日は何にしようかな・・・はあ?今日はA定食もB定食も既に売り切れだとお!?まあ、仕方ないな。元々今日は1年生と2、3年生の一部しか午後はいない日だから用意してあった数そのものが少なかったはずだ。それにカレーライスは簡単に調整できるから、A定食とB定食が俺たちが来た時には売り切れだったのも仕方ない。
美利河さんは毎日お弁当持参だから教室へ戻ったけど、俺と虎杖浜先輩は食券を買ってからカレーライスを受け取った。
虎杖浜先輩は毎日大盛りと相場が決まってるから、食堂のおばちゃんたちも分かっていて本人が言わなくても大盛りにしてくれる。うちの学校の食堂は大盛り無料なのだ。
「
虎杖浜先輩は3人組の3年生から声を掛けられたので、そのテーブルに向かった。あれはたしか通称『爆食同盟』とまで言われる食堂のカレーライス又は定食の『ご飯大盛りの大盛り』を食べる、校内有数の大食い3人組だ。虎杖浜先輩は普通の大盛りだけど、三人はメガ盛りレベルだ。もっとも、虎杖浜先輩曰く「僕はこの4人の中では一番の少食。ただ今ダイエット中だから」らしい。これじゃあリバウンドするよなあ。
俺は普通のカレーライスを受け取ると
「えーと、いつもの場所に・・・」
そう、俺と青葉、当麻、双葉さんの四人は食堂の一番端っこの同じテーブルに座るのが日課になっている。去年までと同じ場所で食べてるはず・・・おっ、いたいた。
「おーい、お待たせー」
「遅いぞー」
「あれっ?青葉ちゃんは?」
「三役はまだあーだこーだ言ってるから先に出てきた」
「そっかあ、仕方ないね」
「そういう事だ」
俺は当麻の前に座るとカレーライスを食べ始めた。この二人は既に食べ終わって談笑の最中だ。
当麻は囲碁部の所属だが同時に将棋部の隠れ部員(特進科なので将棋部に所属出来ないから『遊んでる』という名目で参加しているし、大会にも『助っ人』として参加している)、双葉さんは手芸部所属だが二人共発表者ではない。でも今日は活動日なので二人とも午後まで残っているのだ。
考えてみれば・・・今は青葉がいない。しかも当麻も双葉さんもいる。考えようによってはチャンスだ!
「・・・そういえばさあ、当麻も双葉さんも入学した当初は名前を知ってる程度だったんだろ?」
俺は当麻と双葉さんの会話に割り込む形で話しかけた。
「うーん、言われてみればそうだったわね」
「ああ。小学校も別で中学で同じクラスになった事もなかったし部活や委員会で同じだった事もなかった。双葉の事は名前程度しか知らなかった」
「わたしもよー。まあ、中学では校内一の秀才という程度しかなかったわよ」
「でもさあ、ゴールデンウィーク前には付き合ってたんだろ?」
「それは事実だ」
「そうだよー」
「きっかけは何だったんだ?」
「たいせいー、ここで説明しろって事かあ?」
「あー、いや、ちょっと気になって・・・」
まっずいマズイ、当麻の奴、俺の意図に気付いたのか?
仕方ない、この続きは別の機会にでもするしかないな。
「・・・最初のきっかけは部・同好会合同説明会だ」
「うん、部・同好会合同説明会だよ。ほら、こういう時って一人で説明会を聞くのも嫌でしょ?結構遅く行ったから誰も知ってる子がいなくて焦ってたんだけど、偶然当麻の隣の席が空いてたから『隣に座ってもいいですか?』って声を掛けて隣に座ったのが当麻と話した最初よ」
へ?・・・当麻も双葉さんも結局教えてくれるのか?これはラッキーだ。うまく話を誘導出来れば、青葉が来る前に聞き出せるはずだ!
「・・・それで付き合う事になったのか?」
「たいせいー、何で今日に限っておれたちの事を聞きたがるんだ?」
「あー、いや、そのー・・・」
いかんいかん、つい踏み込んでしまった。俺としては青葉との仲を進めるヒントになりそうな物が欲しかっただけなんだけど、変な事を言うと逆に突っ込まれるからな。ここは慎重に・・・
「・・・まあ、説明会の時に隣に座ったのが、こいつと初めて面と向かって会話をした時なのは間違いない」
「そうだよー。クラスの男子の中で一番最初に話したのが当麻だってのは事実よ。
「ああ、そうだな。どこかで見た子だなあと思って登校した後に話し掛けたらビンゴだったんだよなあ。まさかうちの店の常連さんが同じクラスになるとは夢にも思ってなかったからな」
「そんで、その次の週かな、おれが朝のJRに一本乗り遅れてホームで待ってたら、こいつが後ろから肩をトントンと叩きながら『やっほー』って言ってきたから一緒に学校へ行く事にした」
「それで、
「爆弾発言?」
「そうよ。でもさすがに発言内容までは言えないなー」
「えー、俺としてはその発言が気になるなー」
「大成、まさかとは思うが、お前、青葉ちゃんと何かあったのか?」
「!!!あー、いや、違う・・・」
俺は慌てて周囲を見たけど、幸いにしてこのテーブルに注目している奴は誰もいない。だから俺は・・・
「じ、実はだな・・・この話はぜーったいに口外しないって約束してくれるか?」
「ん?まあ、おれは構わんけど双葉は?」
「別にいいわよ。もしかして
「あ、ああ。・・・じ、実は昨日、み、緑から『男の子と話すきっかけはどうしたらいいと思う?』とか聞かれて、俺としては返事に困ってな」
「へえ、あのツンの緑ちゃんがねえ」
「シー!声がデカい!」
「あー、ゴメンゴメン。まあ、楓ちゃんも緑ちゃんもお年頃ですからねえ。ひょっとして入学早々、気になる子を見付けたのかなあ?」
「かもしれない。でも、俺だって返事に困ったし、だいたい緑の奴が『今の事は青葉ちゃんと姉貴には絶対に話すな!』って真っ赤になってたから俺も誰にも話さないって約束してるから、もしあいつの耳に入ると俺から漏れたというのがバレバレだから俺の立場が無いから絶対に口外しないでくれ」
スマン、緑。お前を勝手に使わせてもらった。もしバレたらお前の好物のパフェを腹一杯食べさせてやるから、ここは犠牲になってくれ!
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