第31話 大成、生徒会メンバーと一緒にため息をつく・・・

「・・・あのさあ、来年から発表順の抽選をやめてアイウエオ順とか固定制に変更できないかなあ」

「会長、そのあたりは生徒会の権限だけど、おれが思うに無理じゃあないか?」

「どうして?」

「最後の方はどうしても集中力を欠くから、どの部だって少しでも早い順番が欲しいって思ってるのは疑いようのない事実だ。それに、運動部の連中はさっさと発表して練習したいって思ってる奴が大半だ。最後の最後にアイドルグループのコンサートでもあれば別なんだろうけど、うちのジャズ同好会や軽音楽同好会は毎年メンバー集めにも苦労している状況だし、落語研究会の実力じゃあ人も呼べない、合唱部にBKA48とか欅山の真似をやれとも言えん、吹奏楽部は頭の固い顧問がそんな事を許すとは思えん。唯一可能性がありそうなのが演劇部だけど、10分も20分も演劇してたら他の部や同好会から総攻撃されるのがオチだ」

「それは僕も同じ意見だよ。しかも人数の少ない部や同好会ほど独自色をだそうとして必死になってアピールするから、今朝だってオカルト研究会とかがコスプレして勧誘活動をしてたよね。僕が1年生の時の文芸部は説明会の時に演劇部顔負けの寸劇をやってたくらいだよ」

「あれが寸劇かあ?虎杖浜こじょうはまクン、ボクに言わせればコントだぞ」

「おれもそう思うぞ。あれが寸劇なら演劇部の公演はオペラ級だ」

「まあ、たしかに抱腹絶倒でしたねえ。僕も笑い死にするかと思ったよ」

「へえ、そんな事があったんですかあ!?」

「ああ。だからボクも恵比島えびしまクンや虎杖浜クンの意見に賛成だ。そう考えるとクジ引きで順番を決めるのが無難だなあ。あとは制限時間を延ばすという考えもあるけど、一人2つまで加入できるという校則のせいで50近い部・同好会があるから、1分増えるだけで1時間近く伸びるからなあ。これも無理だろうな」

「そうですよねー。3月の各部・各同好会の部長への説明会の時も、毎年黙っていても人気がある野球部やサッカー部、体育館で活動するバスケ部とかは時間の短縮を主張したし、逆に準備と片付けに時間がかかる吹奏楽部やジャズ同好会、絶好のPRの機会でもあるオカルト研究会やクイズ研究会は時間の延長を主張して大モメでしたよね。わたしなんか本当は逃げ出したくなっちゃいましたからねえ」

「まあ、あの時は恵比島先輩が『それじゃあ、時間が短くてもいいという部と時間が欲しいという部の2つを合わせて10分として、両方の部長同士で配分を決めろ。組み合わせは今からアミダクジでやる。時間がいらない部から名乗り出ろ』って言ってくれたから妥協が成立したけど、それでなかったら日が暮れても終わらなかったんじゃあないかなあ」

駒里こまさと、あれは咄嗟に思いついただけだ。どの部も文句を言わなかったから良かったけど結構冷や汗をかいたんだぞ」

「あれは恵比島クンの名演技だったぞ。まさに『褒めてつかわす』と言ったところだな」

広内金ひろうちがねが言うと有難味が薄れるなあ」

「フン!どうせボクは会長のように可愛くないですよーだ」

「まあまあ、恵比島君も広内金さんもそのくらいにしておきましょう。それより、美留和びるわさんが爆弾発言した時の対処方法をどうしますか?」

「それが問題よねー」

「「「「「「はあーーーー・・・・・」」」」」」

 そう、今日の最大の懸案事項である美留和先輩が爆弾発言をしたとしても、俺たちには美留和先輩を止める事が出来ないのだ。

 最初は校則に反する内容、もしくは学生の領分を逸脱する発言や行動に対しては実力で制止するつもりでいたのだが、らん先生から「どこまでが違反か、どこまでが逸脱かを生徒会が決める権限はありません。発言内容を制限する事が出来るとも校則には書いてありません。この学校の伝統である生徒個人の自主性を尊重するという意味からも認めません」と厳しく言い渡されたので、俺たちは静観するしかなくなったのだ。

 俺も青葉も美留和先輩の発言は予想できる。自身の窮状を訴え、同時に校則の変更もしくは撤廃を声高々に主張するはずだ。穏やかに提案する程度ならいいけど、あの先輩の性格なら、生徒会どころか職員会議、理事会への批判までやりかねない。そうなった時に俺たち生徒会は黙って見ているだけでいいのか、その場で青葉が生徒会を代表して返答した方がいいのか、それとも・・・

 そう考えると頭が痛い。でも、その解決策を提案してくれそうな人はいない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る