第23話 大成、道場へ行くはずが・・・
「遅いぞ、バカ兄貴!」
俺はリビングに入った途端、待ち構えていたかのように立っていた
「みどりちゃーん、ゴメンゴメン」
「あー、スマンスマン。ちょっと
「寄り道する方が悪い!行くぞ!!」
「あー、ちょっと待ってくれ。着替えて荷物を持ってくるから」
「5分以内だぞ!それ以上は駄目だ」
「はいはい」
「ったくー。昼間から学生の本分を忘れてデレデレしてるとは、うちの学校の将来は暗いぞ」
「みどりーん、お兄ちゃんはデレデレなんかしてないよー」
「姉貴は黙ってて!」
「はーい。みどりんもー、怒るとお肌に良くないわよー」
「うっ・・・お、怒ってなんかない!兄貴に注意しただけだあ!!」
「はいはい、テレ屋さんですねえ」
「誰がテレ屋だ!このマイペース女!!」
はーーー・・・楓も緑も相変わらずだなあ。いや、こんな事を考えている場合ではない。俺は自分の部屋に行って制服を脱いで私服に着替えると、今朝のうちに鞄に入れておいた道着を持ってリビングに急いだ。そう、今日は道場は道場でも同じ場所にありながら昨日とは別の道場だから今日は柔道ではないのだ。当然、道着は道着でも違う物だ。それに、昨日は使わなかった別の物も持っている。
「遅いぞ!一体どれだけ待たせたのか分かってるのか!!」
「みどりーん、お兄ちゃんはねー、4分と30秒で戻ってきたよー」
「うっ、そ、それしか経ってなかったのか・・・と、とにかく学校から帰ってきたのが遅いから4分30秒でも遅い!分かったか、このバカ兄貴!」
「はいはい。じゃあ行こうぜ」
♪♪♪~
「あれ?誰のスマホだ?」
「あー、私だ。しかも電話だ・・・お母さん?」
青葉はポケットからスマホを取り出し話し始めた。
「もしもし、私だけど・・・え?・・・うん・・・うん・・・ちょっと待ってよ」
青葉は一度スマホを耳から外すと
「たいせー、ちょっといいかなあ?」
「はあ?何かあったのか?」
「うん。お母さんからなんだけど、
「ちょーと待った!バカ兄貴はこれから道場へ行くの!ぜーったいに駄目!!青葉ちゃんが行けば済む事でしょ!!」
「みどりちゃーん、それはそうだけど、今日は初心者向けの教室があるでしょ?女の子ばかりだから大成じゃあなくて私や緑ちゃんたちが先生役をやる事になってるから、大成しか頼める人がいないのー」
「そ、そう言えばそうだった。さすがに青葉ちゃんに行かせたらジイに文句を言われる・・・仕方ないから兄貴が行け!」
「おいおい、俺の返事も待たずに決めるなよー」
「大成なら私と違って失敗なんかしないから安心して頼めるわ。そういう事だからヨロシク!」
「おーい、まさかと思うけどタダ働きじゃあないだろうな」
「大丈夫大丈夫、ちゃーんとお小遣いを出すからさあ」
「お小遣いねえ。バイトじゃあないんだ」
「そ、それは・・・大成はバイト禁止ですから、生徒会長がそれを見逃す訳にはいきません!」
「いいなあー、小遣い貰えるならー、ウチが代わりにやりたいよー」
「そうだそうだあ!小遣い貰えるだけ有難いと思って安心して勤労してこい!!このバカ兄貴!」
「はいはい、分かりましたよ。じゃあ、悪いけどジイにはよろしく言っておいてくれ」
やれやれ、結局俺だけバイトで道場へは女子三人組かよ。まあ、ジイもこのくらいで文句を言う事もないし、それに青葉の頼みなら断わる訳にはいかないからな。
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