第8話 大成、自分の家が美容室だと語る
結局、俺たち生徒会メンバーが生徒会室を後にしたのは午後1時過ぎだった。
講堂の飾りつけや椅子並べ、さらには昇降口前廊下へ机や椅子を並べたり配布物の用意、新1年生の各クラスの机にプリントや冊子を乗せる作業などをして、それが終わった後に新入生歓迎オリエンテーション用の案内の手直しなどやって、色々手分けして頑張ったけどこの時間まで掛かってしまったという訳だ。
「はー、さすがに疲れましたね」
「体力が有り余っている
「ああ、
「僕も同じですよお」
「あのー、いくらなんでもここで寝てたら風邪をひきますよ」
「まあ、さっきのは冗談だ。虎杖浜、帰るぞ」
「あー、ちょっと待ってよー。お腹が減って死にそうだよ」
「ったくー、お前は喰う事と寝る事しかやる事がないのか?」
「それは言い過ぎだよお」
「わーかった。とにかく行くぞ」
「はいはい。仕方ないから途中のサコマで何か買って・・・」
「「「「「だからリバウンドするんです!」」」」」
「うわっ!全員でハモらないでくださいよお」
「まあ、折角だからうちの店のたい焼きでも食べる?何かサービスしてあげるよ」
「「「「えー!会長が『めでたい焼き』のたい焼きをサービスしてくれるんですかあ!?」」」」
「いいわよー」
「ぜーったいにわたしは行きます!」
「じゃあ、おれも寄り道していく事にするよ」
「ボクも行く」
「じゃあ、僕も」
「虎杖浜先輩は控えめにして下さいね」
「分かってますよ。お店で食べるのは1個だけにしておきますから大丈夫ですよ。あー、でも折角だからテイクアウトして今夜にでも・・・」
「「「「「だからリバウンドするんです!」」」」」
「うわっ!また全員でハモらないでくださいよお」
めでたい焼き・・・元々この店は
この店のたい焼きの種類は基本的に4つだ。創業以来変わらない北海道十勝産
『カスタード』も『チーズ』も95%以上北海道産原材料使用なのだが、残念ながら餡の一部原材料が北海道産ではないので、100%北海道産と名乗れないが悔しい。だけど、『粒あん』だけは正真正銘100%北海道産、しかも十勝産100%なので、それが一番人気の理由ではないかと思っている。
ネット通販を始めたのは今から6年前。でも、たい焼きをそのまま発送できないから冷凍した物しかネットでは販売していないが、たい焼きの殆どの原材料で北海道産の物を使っていて、それでいて頭の先から尻尾の先まで餡がギッシリ詰まっているので、他の大手のたい焼きに混じって毎月のように人気ランキングのベスト5に名を連ねる程だ。だから製造が追いつかず、今から4年前に元々の『めでたい焼き』の店舗兼住宅の横の更地を買い取って、そこに1階が店舗兼工房、2階が住宅の新『めでたい焼き』をオープンさせた。でも、店でたい焼きを焼く道具は昔のものをそのまま使っているし、通販用の冷凍たい焼きのレシピも店で作っているたい焼きと同じ物を使っている。
昔と変わったのは、以前の店にはイートインできるスペースが全然なかったのだが、今は小さなカウンター席のような物が4席あり、また、商品待ちのスペースが以前よりも広くなって、ここで立ち食いする事が可能になった事だ。それ以外は基本的に創業時とほとんど変わっていない。
そんな話を青葉が恵比島先輩たちに話しながら歩いていたが、やがて店の前に近づいて行った。
「あれ?『めでたい焼き』の隣にある美容室は『ヘアーサロン
「あれ?
「ん?わたしじゃあないわよ。わたしのお母さん。わたしは小学生の頃からの馴染みの店から変えてないけど、お母さんは2年くらい前からBOUQUETに行くようになったのねー。ここにはお母さんのお気に入りの美容師さんがいるんだけど、ママ友の間でも結構知られていて、お母さんもママ友に勧められてBOUQUETに変えたって言ってたし、他にもこの店に変える人が増えているんだって言ってたよ」
「あー、それって
「うーん、名前を言われても困るんだけど、とにかくイケメンの男の人で、結構指名する人が多いみたいですよー」
「あー、じゃあ手宮さんですね。茅沼さんは女性ですけど、この二人は結構この業界では有名な人ですから」
「ふーん、手宮さんって言うんだ。その人の名前を知ってるって事は駒里君も常連なの?」
「知ってるも何も、二人共うちの店の主任さんだぞ」
「えーー!!駒里君、『うちの店』って事は、『BOUQUET』の社長の息子だったのー!?」
「違う違う、息子じゃあなくて孫だよ」
「マジい!?
「あれえ?
「僕も知ってたよー」
「おれも知ってた。というより、かなり有名な話だぞ」
「ちょっと待って下さい!という事は、会長は『めでたい焼き』の創業者の孫娘、
「「そうだよー」」
「うわっ、わたし、本当に知らなかった。幼馴染っていう話は何度か聞いた事があったけど、家が隣同士だとは全然知らなかった・・・」
「まあ、知ってる人は知ってるけど、知らない人は知らないからね」
「という事は、小学校も中学校も同じですよね」
「そうだぞ」
「じゃあ、小学校や中学校でも同じクラスになった事があるんですか?」
「うーん、大成と同じクラスになったのは・・・というより、一緒のクラスでなかったのが、小学校3年生と4年生だけかな。小学校に入ってからは殆ど同じクラスと言っても過言じゃあないわよ」
「あおばー、幼稚園の3年間も同じクラスだぞー」
「あー、言われてみればそうだったわ。忘れてたあ」
「ついでに言えば、俺の出席番号はいっつも青葉の後ろだからな」
「あー、それもそうだったわね」
「それじゃあ、会長と大成君は、幼馴染どころか、それ以上の関係ですかあ!?」
「キラキラちゃーん、それ以上の関係って何?大成とは昔も今も全然変わらないよー」
「かいちょー、こんな時までキラキラちゃんは勘弁してくださいよお・・・」
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