第7話 大成、明日の役割を確認する

「えー、それではメンバー全員が揃いましたので、執行委員会を始めたいと思います」

 会長である青葉あおばが生徒会メンバー全員に今年度第一回目の執行委員会の開催を宣言し、俺は先ほどらん先生から受け取った明日の入学式の予定表を机の上に置いた。

「今日のこの後の予定は3月に蘭先生から聞いた通り、入学式の飾りつけの準備作業を先生方と一緒に行います。その後は明後日行われる新入生歓迎オリエンテーションの内容の再確認、それと春休み中に何か問題点が発生しているようなら、その問題について話し合いたいと思います」

 そう青葉は言い、机の上に置いてあった明日の入学式の予定表を手に取った。

「明日の入学式は午前8時半から受付が始まりますので、全員8時までには生徒会室に集合して下さい。靴は新しいクラスの場所のところへ入れる事になります。私と大成たいせいは蘭先生が教えてくれたので分かりますし虎杖浜こじょうはま先輩は去年と同じで2組になりますけど、華苗穂かなほ先輩とキラキラちゃんは聞いてるんですか?」

「かいちょうー、わたしは7組の1番ですけど、キラキラちゃんは勘弁してくださいよお」

「あのなあ、会長は親しみを込めて言ってるんだからキラキラちゃんでもいいんじゃあないのかあ?ボクなら喜んで受け入れるけどなあ。因みにボクは8組25番だ」

「おー、ようやく3年目にして広内金ひろうちがねと別のクラスになれたのかあ」

「ちぇっ、とうとう別のクラスになりやがったのかあ。つまんねえ」

「あれ?華苗穂先輩と恵比島えびしま先輩は1年生の時も同じだったんですかー?」

「そうだぞー。因みにおれは3組4番だ」

「じゃあ、みんな大丈夫ですね。それでは話を明日の事に戻しますけど、私と副会長の恵比島先輩は理事やPTAの方々に挨拶するので・・・」

「ちょーっと待ってくれ」

 この時、広内金ひろうちがね先輩が右手を上げながら青葉の話に割り込んできた。

「あー、華苗穂先輩、何かありましたか?」

「予定表には『会長と副会長』と書かれているが、毎年、この慣例は無視されていて会長と執行部の女子が理事やPTA、その他の来賓の方々への挨拶をしている。その前例を踏襲するなら、会長とボクか、あるいは会長と赤井川あかいがわクンの方がいいかと思うんだけど、会長と恵比島クン、赤井川クンはどう思う?」

「えー、わたしは出来ればパス。華苗穂先輩、お願いします」

「うーん、私は華苗穂先輩でも構わないですけど、恵比島先輩はどうなんですか?」

「ようするに、おれが受付をやって広内金が会長と一緒にお偉いさん方と理事長室でお茶を飲むってことだろ?おれとしては理事長や校長と一緒の部屋で堅苦しい話をさせられるのは勘弁して欲しいと思ってたから『渡りに船』ってやつだな。助かるぞ」

「じゃあ、決まりね」

「おれは広内金がやる筈だった1年1組と2組の受付担当をして、その後は講堂の自分の席に座っていればいいんだろ?」

「そうなるな。ボクと会長は理事長や校長、PTA会長などと一緒に講堂へ行くから、他の先生たちと一緒に先に行っててくれ」

「分かった」

「じゃあ再確認ですけど、私と華苗穂先輩は時間になったら理事長室へ行きますが、他の4人は生徒昇降口の前の廊下で受付をお願いします。担当は恵比島先輩が1組と2組、虎杖浜先輩が3組と4組、大成が5組と6組、キラキラちゃんが7組と8組です」

「かいちょー、『キラキラちゃん』は勘弁してくださいよー」

「あー、ゴメンゴメン」

「それにしても、今年は2組の男子が新入生代表の挨拶をやるって事は、この子が主席入学者って事だよね。僕はてっきり今年から新設されたスーパー特進科の1組の子だと思っていたよ」

「あー、それはボクも思った。まあ、新設されたばかりの科で、まだ手探りのところがあるから元々定員ギリギリの受験者しかいなかったという事情もあるのかもしれない。今までの実績がある特進科が1クラスに減った事で倍率が3倍近くなってしまって普通科で入った子も例年より多かったみたいだからなあ。今年はそう考えると普通科もレベルが例年より高いかもしれないぞ」

「でもさあ、この子、結構変わった名前だよね。えーと赤井川・・・苗字は読めるけど名前の方は読めないなあ。『しいれをる』の漢字3つをくっつけた名前なんだけど、赤井川さん、同じ苗字のよしみで名前の方の読み方が分かる?」

「あー、それなんだけどー、読めるも何も、わたしの弟だから」

「「「「「はあ?おとうとー」」」」」

「そうよー。これで『美流渡みると』って読むのよねー」

「へえ、じゃあ二人合わせて『キラキラ姉弟きょうだい』ね」

「かいちょー、『キラキラ姉弟』は勘弁してくださいよー」

「そんな事ないでしょ?『キラキラ姉弟』のお姉ちゃん」

「だー!勘弁してー」

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