第6話 大成、風紀委員長に長ーいため息をつく

 恵比島えびしま先輩が真っ青になって叫び、俺はその女子の左腕を掴み、虎杖浜こじょうはま先輩はその女子の前に両手を広げて仁王立ちになり、さらには青葉あおばもその女子の右腕を掴んで必死になって抑え込んだ。その女子はかなり興奮していたけど、ようやく落ち着いたのか「コホン」と言って大人しくなったので俺たち三人もその女子から離れ、それぞれが座っていた椅子に戻った形になった。その女子も空いている椅子に座り、ちょっとだけため息をついた。

 青葉が少しだけ不安そうな顔をしながら

華苗穂かなほ先輩、風紀委員長の権限でいったい何を取り締まるつもりだったんですか?」

「そんなのは決まっている!だいたい、ボクの目の前で『生徒会役員になってからブラジャーのサイズを1つ上げた』などと話すのは校内の風紀を乱しているのと同じだからな。赤井川あかいがわクンは145センチしかないのにFカップとはどういう事だ?同じ高校生、いや、ボクの後輩なのにFとは許せぬ暴挙だぞ!これだけで本当ならイエローカードどころかレッドカードを提示したいくらいなんだが同じ生徒会役員のよしみで注意程度で済ませているという事は以前にも言った筈だぞ!それに赤井川クンはどう見たって典型的なロリ巨乳じゃあないかあ!!し、しかも1つ上げたって事は・・・じ、じいかっぷ・・・だあああああーーーーー!」

「せんぱーい、落ち着いてくださいよー」

「あー、スマン・・・ちょーと頭に血が上った・・・」

 この人は副会長兼風紀委員長の広内金ひろうちがね華苗穂先輩だ。風紀委員長として辣腕を振るっていて校内ではと恐れられている。えっ?『史上最強』の間違いではないか?漢字の変換ミスじゃあないのか?いえいえ、『史上最怖』で正しいのです。

 まあ、少し脱線したけど、とにかく生徒からは尊敬と敬意(?)を持って「史上さいきょう」と言われて辣腕を振るっているのだが、の話を出されると烈火のごとく怒りだし、風紀委員長ではなく女番長スケバン、女王様へ変貌する、ちょーと問題がある風紀委員長なのだ。(だから『史上最怖』と言われてるのだが・・・)

「そういう広内金だって、どうしてツンなんだ?折角の美貌が台無しだぞ」

「フン!恵比島、ボクに媚びを売っても無駄だぞ。逆にボクは恵比島クンに聞きたいのだが、か弱き乙女のボクが『ボク』と言ってどこか不都合があるのかな?それにボクはスカートがどうのこうのとか、メイクがどうのこうのとか、どうして世の女どもは無駄な事に金を使うのか理解できん!アホらしい。それにレディーズの服が左前になっている理由だって『向かい合った時に右手だけでボタンを外せるから』などという男の不謹慎な欲望を満たす為だというのが気に食わんからボクは着たくない!個人的意見ではあるが、校則で女子はブラウスにスカートとなっているのが男女差別以外の何物でもないと考えている。創立50周年の時に詰襟・セーラー服からブレザーに変わったが、それでも女子は創立以来スカートなのは変わらない。ボクは女子もスクールシャツとスラックスを着用しても良いという選択制にして欲しいと何度も学校側に訴えたのだが一度も聞き入れてくれないのだから、ボクは今年の生徒総会に副会長権限で提案するつもりでいるからな」

「ぺったんこだから男の制服の方が似合うのかもなあ!?」

「えびしまー!風紀委員長権限で取り締まるぞー!!」

「まあまあ、恵比島君も広内金さんも落ち着いて下さいよー」

「そうですよ、女は胸の大きさじゃあないわよ」

「お前に言われたくないぞ、赤井川!」

「本当ですよー、それに大きいって事は肩が凝って困るのよ。わたしは華苗穂先輩が羨ましいです」

「そ、そうか、肩が凝るのか・・・ウン、ウン、やっぱり大きいと損するんだなあ、わーはっはっはー」

「「「「「はーーーーー・・・・・」」」」」

 そう、もう既に分かったかもしれないが広内金先輩は極度の貧乳なのだ。俺の見立てで・・・ほぼ間違いなくAA・・・いや、AAAかも・・・。

 清風山せいふうざん高校の新2年生、新3年生では自他共に認めるナンバー1(?)の貧乳なのだから、今年入学する新1年生にも広内金先輩のナンバー1の座を危うくする存在(?)はいないのかもしれない。いや、もしいたとしても、そんな事でナンバー1だナンバー2だと張り合う方がおかしい。それに広内金先輩は男子と変わらないくらいに髪はショートだ。身長だって167センチと女子にしては高くて、声も女子にしては相当低くテノールの領域のボーイッシュな声でありながら感嘆する程の美貌(しかも、「メイクなんかアホらしい」と平然と言っていて実際にメイクしている広内金先輩を見た事がある人は校内には誰もいない)だから、恵比島先輩の言葉を借りる訳ではないが見方によってはイケメンが女装しているようにしか思えないくらいだ。

 仮定の話ではあるが・・・「彼女にしたくない女子コンテスト」をやったら、圧倒的大差で優勝するとまで言われている・・・同じ生徒会メンバーの女子なのに、青葉と広内金先輩に対する男子からの評価は「月とスッポン」ほどの差だ。

 何故そんな広内金先輩が風紀委員長などという大役をやる事になったのか、その理由は・・・まあ、今は省略するけど、とにかくこの6人が生徒会メンバーだ。

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