とある一日

白夢 狐

第1話


 つまらない毎日が続く、刺激も無く、大した感動も無い、ただただ惰性で続いているような毎日が続く。「そんな毎日で良いのか?」と問われようと僕には答えられない、何故なら、僕はつまらなかろうが、刺激が無かろうが、この平穏な毎日に満足しているダメ人間なのだから。


 今日も1日が始まる、顔を洗い、朝食を食べ、身だしなみを整えて学校への道を歩く。それはルーティーンのように、ただぼおっとして意識の有る無しも分からないような状態で歩いていく。


 なんともない、毎日通る通学路の一光景朝そこまで車通りの多い訳でもない普通の交差点。

 たまたま目に止まったのは赤信号に飛び出す子供、そして向かってくる赤い自動車、自動車はやはりと言うかなんと言うか、止まれる状態では無いようで、二車線しか無い車道ではハンドルを切るにはどちらにも人が居て不可能だ。

 流石の僕でも信号を無視した子供とは言え、見殺しにするのは心に来るものがある。


 車道に向かって走り出す、この様子ならギリギリ間に合うだろうと思い、全力で手を伸ばす。


「危ない!! 」


 そう言って車道に飛び出し、子供を突き飛ばす。間一髪、子供は車の車線から外れる。しかし、僕の体はこれ以上動かすことが出来ない。


 自動車の甲高いブレーキ音


 突き飛ばされた子供が地面に倒れる音


 見ていた観衆の悲鳴


 自動車にぶつかる痛み


 色々なものが交錯する。


 嗚呼、体が段々と冷えていくのが分かる。おそらくこのまま死に行くのだろう、自分が助からない事くらい分かる。


「ああ、痛いなぁ」


 そう声に出ない声で愚痴を吐く、意識が遠のいて行くのが分かる。

 本当にしくじった、次は事故が目に入らないようにもう少しゆっくり家を出よう、それが良い。そんな事を考えながら目を閉じる。視界が暗転し、頭の中が混ぜられるような感覚を覚える。





        





__________


 また今日も、何の変哲も無い毎日が始まる、ただただ惰性で過ごし続けるつまらない毎日だ。

 でも、今日はいつもより少しゆっくり出て行こうと思う。



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