ボクと料理




……奇跡。

ボクは心の中でそう呟く。

そんなボクの目の前には、よくわからない『なにか』があった。


おかしい……こんなはずじゃなかった。

ただ、具合が悪い神様の代わりに夕飯を作ってあげるはずだったのに……

キッチンがぐしゃぐしゃになっちゃったし……


「どうしよ……」


家庭科の時間にハンバーグを作ったから、ハンバーグならできると思ったのになぁ……

大真面目に、料理の練習しよ……


「んー?みぃ?キッチンにいるの?」


っ!?神様!?

もう起きちゃったのか……って、やば!このハンバーグ(?)を 隠さなきゃ!


「か、神様!もう起きて大丈夫なの?」


ボクはリビングに現れた神様がキッチンに行かないように、体で神様の進路を塞ぐ。


「うん、もう大丈夫だよ。じゃあ、夕飯作るね」


そう言ってボクの横を通りキッチンに行こうとする神様。

ボクは慌てて体を動かし、神様が進めないようにする。


「みぃ?」

「きょ、今日は夕飯いらない!ゆっくり休んで?」

「いや、いい……って、みぃ?キッチンがなんか酷いことになってるのが見えるんだけど……」


え?なんで見えるの!?

どうして……あ、身長差か!

しまった、身長差を考えていなかった……


「……もしかして、料理しようとした?」


神様の問いかけに、ボクは思わず目を背ける。だけど、そうしてしまった後で、それはほぼ肯定の意味だと気がついて、自分の選択を後悔した。


「別に怒ったりはしないから、隠さなくていいのに……」


神様はそういうと、ボクの頭をポンポンっと撫でてくれる。


「ちなみに、現状はどんな感じなの?」

「うぐ……」


そう聞いてくる神様に、ボクはそう声を漏らすけど、もう逃げられないと悟る。

というか、そもそも隠せるわけがなかった……


ボクは諦めて、神様が通れるように横にずれる。

神様は「ありがと」と言って、ボクの横を通ってキッチンに入った。


「これは……」


ボクは神様の後にキッチンに入ると、ハンバーグ(?)を驚いた様子で見る。

もう、色からして緑っぽいし、絶対美味しくないよ……


「野菜多めのハンバーグ?」


神様は疑問形でボクに問いかけてくる。


「野菜、多く入れすぎた……」

「ん?でも、こういう料理あったはずだよ?というか、十分美味しそうだよ?」


神様はそういうと、焼いた後の少し焦げたハンバーグを箸で少し切り、パクリと食べる。

ああ!神様!そんなの食べたら吐くよ!?

絶対美味しくないよ!


「……美味しい」

「え?」

「みぃ、これ美味しいよ?」


神様はそう言うと、ハンバーグをまた少し切ってボクの方に差し出してくる。

ボクはそれを恐る恐る食べてみた。


「……奇跡」


え?なんか美味しい?どうして?え?え?

なんで美味しいの?


「じゃあ、今日の夕飯はこれでいいね」


神様の言葉に、ボクはこくこくと頷く。


「じゃあ、キッチンの片付けしようか」

「あ……」


神様にそう言われて、ボクは今のキッチンの惨状を思い出す。

自分でも何が起こったのかわからないくらい、グッシャグシャになっている。

それは、まさに悲惨としか言いようがない状況。


「みぃも手伝ってくれる?」

「もちろん」


そもそも、ボクがやらかした事なんだから、ボクがするのは当たり前。

でも、これは大変そうだなぁ……

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