番外編

聞き間違いではないみたい




「ねえ、神様。お風呂、入ろ?」


ソファーに座っていた僕は、その言葉を聞いた瞬間固まってしまう。

え?今聞き間違いじゃなければ『お風呂、入ろ?』って言ってた気がする……

いやいやいや、流石にみぃでもそんな提案はしてこないでしょ。

やっぱり、聞き間違いかな。


「みぃ、もう一回言ってくれる?」

「だから、お風呂、入ろ?」


あれ?おかしいな?

やっぱり『お風呂、入ろ?』と言っているようにしか聞こえないんだけど……

あ、もしかして、僕が先に入れって意味?


「えっと、お風呂なら、先にみぃが入ってきなよ」

「……ボクと一緒に入るの、いや?」

「ちょ!い、嫌なわけないじゃん!」


俯いてしまったみぃに僕は慌てる。

っていうか、やっぱり『一緒に入ろ?』ってお誘いだったんだね!?


「ほんと!?じゃあ……」

「でもさ、みぃ、僕らはもう高校生なんだから、一緒に入るとかはちょっと……」

「ん?神様は、ボクのもの。ボクは、神様のもの。だから、何の問題もないよ?」

「いやいやいやいや、常識的に問題しかないよ?」


そもそも、みぃが僕のものだって言うのは初めて聞いたんだけど。

いや、確かに僕はみぃだけのものだって話はしたよ?でも、みぃが僕のものだっていうのは誰も言ってなかった気がする……

そもそも、みぃが僕のものであってもお風呂に一緒はおかしい。


「あのね、みぃ。普通は付き合ってても一緒にお風呂とか入らないよ?(たぶん)」

「そもそも、同棲してるこの状況が普通じゃないでしょ?」

「そ、そうかもしれないけど、僕だって男だよ?一緒にお風呂なんか入ったら何するか……」

「神様なら、いいよ?」


何がいいの!?いや、全部言わなくてもわかってる。わかってるけど!

そもそも、どうしてそんな僕の理性を試すようなことを提案してくるの!?


「そ、そもそも、どうして一緒にお風呂入るとか言い出したの?」

「せっかく付き合い始めたんだし、いいかなぁって。裸の付き合い?」

「…………」


ああ、胃が痛くなってきた。

そもそも、みぃに常識があると思った僕が馬鹿だったんだ。

まあ、だからと言って一緒にお風呂に入ることを承諾する気はないけど。

何となく、ここは負けてはいけない気がする。

よし!耐えるぞ!


「神様」

「な、何?」


僕のことを呼びながら抱き着いてくるみぃ。

下からじいっと僕のことを見上げるみぃは、とてもかわいい……じゃなくて!

そ、そんなことしてもダメなものはダメ!

この意思を曲げるわけにはいかな……


「神様、ボクとお風呂、入ろ?」

「がふっ!!」


上目遣い+いつもより甘い声+抱き着き=勝てるわけない

僕は口から変な声を漏らすと、完全に陥落した。


……そんな技どこで覚えたの?みぃ。



お風呂で、何とか僕の理性が耐えきったとだけ言っておこうと思う。



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