ある会社員の日常_その4
善は急げということで、その日の夜に行動に移しました。
二階の窓から隣の状況を確認すると、電気は消えており既に寝ているようでした。
目標の犬はケンと言い、とてもおとなしい性格で基本的に鳴いたりする様なことはなく、
また、名前を呼べばすぐに出てくる位には私にも懐いていると言うこともあり、連れ出す事は難しくはありませんでした。
ケンを連れ出し、車で家から少し離れた山奥にある今は使われていない小屋に向かいました。
小屋に向かっている最中、ケンはとても嬉しそうに尻尾を振っていました。
彼は私が何処か楽しい場所に連れて行ってくれると思っているのかもしれません。
今から行おうとしている事を知らないのだから仕方ありません。
ですが、私はケンの期待を裏切ることをしようとしています。
やはり心は痛みますが、これも私から家族を奪った犯人に復讐するため仕方ない犠牲です。
20分ほどで小屋に着き、車から降ろそうとするとケンもいつもの私とは何かが違うとわかったようで抵抗していましたが、
やっとのことで小屋に入り奥の柱に括り付けると、いつも殆ど鳴く事の無いケンがとても大きな声で鳴きとても五月蠅いので口もロープで縛りました。
ふう、やっと静かになった。
ケンはとても怯えた目で私を見てきます。
〈これも殺された家族の復讐の為に必要な事なんだ、諦めてくれ。〉
そう心の中で呟き首に手をかけました。
精一杯の謝罪と感謝の気持ちを込め、徐々に力を込めていきました。
ケンは一生懸命逃げようと暴れていますが、逃げられる筈がありません。
段々と大人しくなり、もう抵抗する力も無いようです。
私の手の中で命の火が消えていく感覚は今でも忘れることは出来ません。
ケンは完全に動かなくなり、私は手を放し縛っていたロープを解きました。
そして埋葬するため、小屋の裏手に穴を掘ることにしました。
ですがその場所はごろごろとした石がとても多く掘り終るのに30分ほどかかってしまいました。
ケンを埋葬し、自宅に戻りました。
戻る途中に、
〈今回のようにいきなり行動するのではなく、次からはいろいろと準備をしてから行動しないといけないな。
次の練習台は誰になってもらおうか。復讐の仕方はどうしようか〉
そんなことをを考えているうちに家に到着しました。
その日は風呂に入った後すぐに寝てしまいました。
翌日、外が少々騒がしいことに気づき、目を覚ましました。
何かと思い外に出てみると、
「M崎さんおはようございます。どうかなさったんですか?」
「S宮さんおはようございます。家のケンが居なくなってしまったんです。首輪につないでいた鎖も外されているようで、誰かに連れて行かれたかもしれないんです。
S宮さんは何かご存じありませんか?」
「いや、私は特に見ていないですね。心配でしょうけど大丈夫じゃないですか?きっとすぐにひょっこり帰ってきますよ。」
「でも、鎖が外されているんですよ。心配で仕方ありません。あの子は私たち夫婦にとっては息子みたいなものなんです。」
「そうだったんですね。でも大丈夫ですよ。きっと鎖も動いている途中で外れただけですよ。」
「そう..,でしょうか。そうならいいんですけど。」
「きっとそうですよ。2、3日待ってみてそれでも帰ってこなかったら警察に相談してみればいいんじゃないですか?」
「そうですね。そうしてみます。お騒がせしてすみませんでした。」
「そんな事気にしないでください。私もケンが戻ってくるように願っています。」
失礼します。と家に戻りました。
自室に戻り一息つき、
〈そうか、ケンは私にとってはただの隣の家のペットでもあの人たちにとっては家族だったのか。
もしや私は取り返しのつかない事をしてしまったんじゃないだろうか。
...いや、違う。そうじゃない!
今ここで引き返してしまってはケンの命は無駄になってしまうじゃないか!そんなことになればケンがうかばれない!
私は止まってはいけないんだ!
犯人に復讐するまでは!!〉
そう新たに強く決心を固め次はだれに練習台になってもらうかを決めるため出かけることにしました。
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