ある会社員の日常_その2
翌日、早朝から精密検査が行われました。
その日の朝も、妻と子供たちの姿は見えませんでした。
MRI検査などの検査を受けて、全てが終了したのは午後1時を回っていました。
午後からは警察の方々が来られて、私が遭遇した事件内容の説明と、ちょっとした事情聴取を受けることになりました。
「S宮 Kさんですね。初めまして、今回の事件の担当のT野です。こっちは」
「N村です。いきなりで申し訳ないですが、26日当時のことについてよいですか」
「はい、でもその前に教えてほしいのですが、私はどのような事件に巻き込まれたのでしょうか?
申し訳ないのですが、何があったのかあまり覚えていないんです。」
「そのことは担当医のM崎医師から伺っています。お気持ちを落ち着かせて聞いてください。」
「わかりました。お願いします。」
私は深く深呼吸をし、T野刑事さんに事件の内容を教えていただきました。
「S宮さん、落ち着いて聞いてください。結論から言います。あなたは、一家惨殺事件の唯一の生存者です」
一家...惨殺?
刑事さんの言葉を聞いたときは、何を言っているのかわかりませんでした。
「す、すいません。一家惨殺事件っていったい何のことですか!?
も、も、もしかして、私はどこかの家族の殺人事件を目撃してしまって、その犯人に襲われたんですか!?」
「S宮さん落ち着いて下さい。そうじゃないんです。」
「そうじゃないって、一体どう言う…」
私はその後の言葉を言いかけて、理解しました。
〈違う、そうじゃない。私は家族と自宅にいる時に気を失って、起きた時はすでにこの病室にいたんだ。
しかも妻や子供たちにもまだあえていない。そして私は一家惨殺事件に巻き込まれた。
という事は、、、〉
「S宮さん大丈夫ですか!一旦深呼吸して落ち着いてください!」
スーハー
もう一度深く深呼吸をし、無理矢理気持ちを落ち着かせ、刑事さんに今私が考えている事が真実か、確認しました。
「すみませんでした。もう大丈夫です。
刑事さん、も、しかして、その事件の被害者っていうのは、もしかして」
吐き気がし、気持ちが悪くなってきました。
どうにか気持ちを落ち着かせ、
「わ、私の家族のことですか...?」
「はい、そして唯一の生存者はS宮さん!あなただけなんです!
お願いします!何か思い出せることがあれば、おしえていただきたいんです!」
「実は言いますと、今回の事件の犯人は未だに目撃情報もなく、S宮さんあなたの記憶だけだ頼りなんです」
この話を聞いた途端、私の頭の中に、
〈お前には何も出来ない。〉
という言葉が聞こえてきました。
気持ちが悪い、吐きそうだ。
もう我慢できない。
私はついに我慢できず近くの袋を手に取り、吐いてしまいました。
「すみ、ません。お見苦しい所をお見せしてしまいました。
申し訳ないですが、少し、トイレに行ってきてもいいでしょうか」
「こちらこそ、すみませんでした。どうぞ」
口を漱ぎ、顔を洗い、刑事さんの待つ自分の病室に戻りました。
「すみませんでした。ですが、一つだけ思い出しました。」
「そ、それはどんなことですか。少しでも情報がほしいのです」
「はい、犯人はおそらく男性だと思います」
「なぜ男性だとわかったのですか!?」
「それは、先ほど思い出したのですが、気を失う直前に、『お前には何もできない』と言われました。
その声は、とても低く女性の声だとは思えません」
「その記憶が確かなら、信憑性は確かにありますね。ほかに思い出したことはありませんか。」
「すみません。今はこのくらいしか思い出せないようです」
「いや、ありがとうございます。」
「今日はこれで帰らせていただきますが、また後日伺わせていただきます。
申し訳ありませんが、またよろしくお願いします。」
「私も、また何か思いせたら、お知らせします。」
「ありがとうございます。申し訳ありませんでした。では、そろそろ失礼します。」
そういうと、2人の刑事さんは帰られました。
そしてその後は、特に何も無く、一日は終わりました。
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