第21話 らんちん

 葡萄で喉の渇きも癒えた。


「じゃあ、次は『らんちん』だ!」

 タマオくんは指差し、

「その中の奴を使うと良いぞ。」

 宝物の出番だ。


 私はキラキラ光る『らんちん』を取り出した。


「でも、全員でやると多い?」

 タマオくんの言った事に反応して、

「じゃあ、女子は『お手玉』しようよ。」

 メグちゃんの提案。

「後で、ミサキちゃんもこっち来ればいいんだし。」

「そうしようか。男子はコース作って。」

と、タマオくん。

 私は『やっぱり、ゴルフだよね。』と。

「任せとけ。」

 ノブくんが張り切る。


 あっ、後で『お手玉』やったけど…。こればっかりは練習しないと駄目って判った。二つが、やっとだったもん。


「ミサキちゃんは、ちょっと練習しようか。」

「うん。」


 私、完全になめてた。さっき、タマオくんが簡単に入れたから、私でも出来るって。

 いざやってみると、思う様な所へいかない…。

「難しいな…。」

 それが感想。

「最初はね。」


 タマオくんが熱心に教えてくれたお陰か。

「入った!」

 初めて入った。嬉しい。

「やったー!」

 タマオくんも自分の事の様に喜ぶ。


「出来たよ〜。」

 ケンちゃんが呼ぶ。

「よっしゃー! やるぞ〜。」


 作った『らんちん』のコースは、地面に描かれた大きい四角の中に穴があちこち開いていた。

「ここでのやり方は、皆で順番に転がして、番号順の穴に入れる。一番早く最後の穴に入れた奴が勝ち。」

 やっぱり、ゴルフだ。

「後、四角の線から出たら一つ前の穴からやり直しだからな。」

 新たなルールが発表された。

「出たら駄目なんだね。」

 気が付いた。

「あぁぁぁぁぁ! 線の直ぐ横に穴がある。しかも、前の穴から転がしたら線の方に投げないと駄目だ…。」

「ミサキちゃん。良く分かっね。」

と、男の子達が笑う。

「こんなの普通さ。」

と、タマオくん。同じコースだから皆と条件は同じ。


「始めようぜ。」

 タマオくんが仕切り、続け

「どうしようかな〜。」

 何か考えてる?

「ミサキちゃんが最後が良いかな? 初めてだから、俺達の見ればやり方分かるんじゃないかと思うんだけど…。」

「良いんじゃね。」

 皆が賛同する。

「じゃあ、男子で順番決めようぜ。」

 ジャンケンで決められた順番。


 いざ! スタート!


 やっぱり、慣れてている。皆、上手に転がしていく。



「あっ! しまったぁ!」

 ケンちゃんが声を上げた。転がった先は、そんなに悪い場所じゃないと思うんだけど…。

 チラリとこっちを見たタマオくんが

「ミサキちゃん。見てろよ。」

 左目を瞑(つむ)り、狙いを定める。

「ほれ!」

 勢いよく弾かれた、タマオくんの『らんちん』はケンちんの『らんちん』に当たった。

「あっ!」

 思わず声が出た私。

「やりぃ〜。」

と、タマオくん。

「やられた。」

と、ケンちゃん。


 そう、タマオくんの『らんちん』がケンちんの『らんちん』を弾き飛ばし、線の外へと押し出した。

「こうやって、上手く当てれば邪魔出来る。」

 得意気なタマオくん。


 やっぱり、ここにもあった攻防戦。



「やったー! 入った!」

 皆よりだいぶ遅れ、最後の穴に『らんちん』を入れた私。

 『パチパチ』と拍手。


 気が付いてなかった。男の子も女の子も私の周りに全員来て見てた。

「やるじゃん。」

 タマオくんが褒めてくれた。

「やったね。」

 皆も続く。

「『らんちん』楽しいね。」

「だろ。」

 タマオくん嬉しそう。

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