第20話 果実

「ただいま〜。」

 皆の声で、目が覚めた。ちょっとの間だけど、寝てたみたい。

「おかえり〜。」

と、迎える。


「はい。ミサキちゃん。これ。」

と、渡されたのは、

「葡萄だ…。」

 種類は判らないけど、薄い緑が綺麗な葡萄。

「どうしたのこれ?」

「この先に山口のおじいちゃんの葡萄畑があってね…。」

「えっ! 良いの!?」

 ウサちゃんは一瞬暗い表情になり、

「少し前までは、おじいちゃんが世話してたんだけど、足が悪くなってね…。」

「あっ…。」

「おじいちゃん来てた時は、売れないのを貰ってたんだけど…。」

「…。」

 黙って聞いきた。

「『もう、ワシは来れん。来年から成ったら食べてくれ。その方が葡萄も喜ぶ。』って…。」

 ちょっぴり寂しい気持ちになった。

「だからね。私達で時々食べるの。おじいちゃんも喜ぶし。」

「そう言う事か。」

 納得した。


「食べようよ。」

 ケンちゃんが、早く自分も食べたいといった雰囲気を出し皆を促した。


「じゃあ、食べよう!」

 ウサちゃんの掛け声で、

「いただきました〜。」

 皆が、一粒口に入れる。


 口に広がる芳醇な葡萄の香り、その中に頬を刺す酸味が刺激的。

「す、酸っぱいぃ!!!」

 口をすぼめた私。

「あっ。お手入れしてないから、酸っぱいのもあるのよ。」

 すぼめた口のまま、

「早く言ってよぉ…。」


 そして、大爆笑。


 私は、今日1年分ぐらい笑ったのかも。

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