第17話 てんか

「ノブくんが教えてくれた『てんか』やってみたい。」

 いきなりの指名で驚いたみたいだが、直に、

「おう。任せろ。」

と、赤いカラーボールを取り出した。


「こっちな。」

 小屋の方へ皆を誘う。

「やり方はさっき説明した通り。」

 カラーボールを片手で軽く投げ上げながら、

「力入れ過ぎて反対側まで投げたら一点付くからな。後、屋根に乗らなくても一点な。」

 新たなルールが追加された。


「よし! やるぞ。」

 カラーボールを投げる構え。

「良いよ〜。」

 全員が身構えた。


 ノブくんがカラーボールを投げる。そして、

「ミサキちゃん!」

「いきなり!?」

 慌てて屋根の下に走り、上を見ながら構えた。

 実は、ボールを取るの自身があった。皆を驚かせようと黙ってた。


 意外とカラーボールって跳ねる音がするんだと気が付く。

「あっ!」

 ノブくんが投げた辺りから離れた屋根の端っこからカラーボールが現れた。


 手を伸ばしギリギリでキャッチ出来た。

「ミサキちゃん。よく取ったね。」

 ノブくんが褒めてくれた。

「今のは危なかった…。」

「屋根のデコボコに当てて落ちる場所を分かんなくする技さ。」

 得意気なノブくん。

「そんな技があるなんて…。」

 遊びでも気は抜けないみたいだ。


「次はミサキちゃん、投げて。」

と、ノブくん。

「解った。」

 チラリとケンちゃんを見る。


 その視線に気付いたケンちゃんは、

「うっ。」

と、身構えた。


 ポイッと投げ、

「ウサちゃん。」

と、指名。

「あーっ!?」

 慌てるウサちゃん。テレビで見たサッカーの視線トラップ作戦をやってみた。


 私の作戦が上手くいき、ウサちゃんはカラーボールを取れなかった。

「逃げろ!」

 誰かの声に反応して、皆が

「わーっ。」

と、走る。

 一回、二回、三回とバウンドし、ようやくウサちゃんはカラーボールを手にし、

「取った!」

の掛け声。

 皆がその場で急停止。


 ウサちゃんは一番近い…、私に狙いを付ける!


 作戦が上手くいったので喜んでたら逃げるのが遅れていた。

「ミサキちゃん。ぶつけられるボール取ったら、ウサちゃんが一点付くよ。」

 ノブくんのアドバイスがきた。

「そうなんだ。」

 構える私。


「ミサキちゃん。覚悟!」

「さあ、来い!」

 見えない火花が二人の間で散る。


「えい!」

 ウサさんがカラーボールを投げ…、ない! 投げるフリだ。

 咄嗟に反応した私に、改めて投げられたカラーボールは見事、左の腰辺りに命中した。


「ミサキちゃん。一点〜。」

「ウサちゃん。本気過ぎぃ。」

 私の台詞に皆が笑い出した。

「それを言うなら、ミサキちゃんだって〜。」

 笑いながら、ウサちゃんも返した。



 一頻り笑い、その後、

「今度は、ミサキちゃん。」

とノブくんが、カラーボールを渡してくれた。


 今度は、チラリとカゴメちゃんを見る。その仕草に皆が反応して構える。

 カラーボールを投げ、

「カゴメちゃん!」

 そのままでいった。


 カゴメちゃんは気が付くとカラーボールの落ちてくるところにいた。そして、何事も無かったかの様にキャッチ。

「タツマくん!」

と、投げる。



 一通り名前を言われるのが回った頃に、カラーボールはノブくんへ。


「いくぜ!」

 凄い気合が入っていた。


 ノブくんは軽く助走を付けかと思うとジャンプ!

「?」

 今まで見た事ない動きに一瞬戸惑う私。

 そして頂点辺りで、ポイッと投げた。

「ミサキちゃん。」


「よし。」

と、身構え…、

「あっ!?」

 もう、落ちて来た! ダッシュするが間に合わない!


「取った!」

 振り向くと皆が遠くにいる。

 一番近いフミオくんに投げたが、簡単にキャッチされた。


「今のは、屋根ギリギリにカラーボールを乗せるワシの必殺技じゃ。」

 超得意気に続ける。

「名前を言うのが少しでも遅れると自分が一点貰うと言う諸刃の必殺技なんじゃ。」

 また新しい技が披露された。



 ここでも、繰り広げられる攻防戦。



「やられた…。」

 ついに、タツマくんが三点付いた。序盤の二点で駄目かと思ったけど、頑張った私!


 大きな木に背中を向けて立つタツマくん。これが張り付けらしい。

「当てても、当てなくてもいいよ。」

 ノブくんからのアドバイス。


 当てると痛そう…。ちょっと手加減して当てた。


 全員終わると、

「次はワイな。」

 タツマくんが、こちらを向きながら。

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