第15話 宝物
「そうだ!」
いきなりの大声で皆が一斉にタマオくんの方を見る。
「アレ出そうよぉ。」
「アレって?」
ウサちゃんが言うと、皆が合わせるように首を傾げた。
「ミサちゃんのアレ。」
「アレか…。」
誰が言ったのやら判らないが、皆はそれで納得しているようだった。
「折角だから、出そうよ。」
タマオくんが、もう一押。
「そうだね。出そうか。」
ウサちゃんが賛成し、
「出すの反対の人いる?」
「良いよ。」
「良いんじゃない。」
反対はいなかった。
「じゃあ、出そうか。」
「わーっ」
盛り上がった。
「ミサキちゃん。こっち来て。」
ウサちゃんが手を引く。
連れて行かれたのは小屋。
その小屋は床が高くなっていて、子供なら下で十分遊べる広さがある。
そこの床へ上がる階段の裏手。
「ここ掘ってみて。」
「ここ?」
言われたところに手を当て土を退ける。
二回目で指に当たる土とは違う感触。
「何かある?」
と、口に出し続けて土を退ける。
出てきたの金属の箱。上の部分に[おせんべい]ってシールが貼ってある。
「開けてみて。」
ウサちゃんの言い方は、私に何かを期待させた。
作りがしっかりしているのか、錆びているのか箱はなかなか開かなかった。
が、込めた力が一気に喪失するような感覚と共に『パッカ~ン』と開く。
中を見ると、『らんちん』『面子』『ゴム紐』等が入っていた。
それは、子供の宝箱。
その時、私には光るはずもないただの遊び道具がキラキラして見えた。
「凄ーい。」
感動の声が出た。
「ミサちゃんのなんだけど、借りましょ。」
「いいのかな?」
どう見ても、ミサちゃんって子の宝物。
「大丈夫。ミサちゃんなら貸してくれるよ。」
「そうそう。ミサちゃんなら貸してくれる。」
口々に言われ、安心した私は、
「うん。そうする。」
借りる事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます